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エピローグ

「おい、リーン!早く来い、置いていくぞ!」

「ちょっ、景色眺めるくらいの時間くれたっていいじゃないですか!いくらリンカさんのお弁当あるからって急ぎすぎですよ!」

「うるさい、私の今日の座右の銘は『花より団子』なんだ。とっとと山頂へ行って愛妻弁当を食べるんだ」

「じゃあもう転移魔法で頂上に行けばいいじゃないですか………」

「仕方ないだろ、リンカに『楽しようとする子にはあげません』って言われたんだ」

「もう完全にリンカさんの思うつぼですねフィリス様」


 私とフィリス様は、山登りをしていた。

 本当はみんなと一緒に行く予定だったのに、私たちだけ仕事が残ってて片づけに手間取ったのだ。

 待ってくれればいいのに、うちのヨミとフィリス様のところのリンカさんが腕によりをかけて作ったお弁当を一刻も早く食べたいと、みんな先に行ってしまった。


「おっ?リーン、素晴らしくいい匂いを感じる。近いぞ!」

「あ、本当だ。でも匂いが漂ってくるってことは、もう弁当箱開けちゃってますね」

「!?い、急ぐぞ!リンカの手製弁当があああ!!」


 フィリス様は風のような速度で山頂へ走り去っていった。

 勿論、私たちのような高ステータスが本気で走ったりしたらソニックブームが発生して山が崩れるから、ちゃんとぎりぎりまで抑えた速度で走っているみたいだ。


「………べた惚れだなあ」


 まあ、私が言えた話じゃないけど。

 後追わなきゃ。





「あ、来た来た。遅いよリーン」

「ごめん、手間取った。………ってフィリス様もう食べてるんですか」

「早くしないと、ヨミが作った分も私が食べるぞ」

「やったらいくらフィリス様でもぶっ飛ばしますからね」


 今日は遠足だ。

 参加できた旧魔王軍幹部の皆さんや、元四魔神将たちがこぞって参加している。

 ちなみに大半は弁当目当て。


「しかし、ずいぶん減ってますね。ヨミが余るほど作ったって言ってたんですけど」

「そこの天災エルフが私たちを待たず、パクパク食っていた」

「なははは。まあまあいいじゃん、ほれ私が作ったやつあげるから!」

「その殺人兵器のような色をしている卵焼きならいらん」


 フラン様許すまじ。


「ティアナ、マヨネーズそっちにありませんかねえ?」

「ありますが、ヴィネルさんマヨネーズは苦手では?」

「いえ、ちょっとサクラきゅんの方面に手を滑らせようかと。し、白いドロッとした液体を、男の娘系美少年の体に………ぐふふふふふ」

「ひ、ひいいっ!?」

「ティアナ、そのマヨ手放すな。ちょっとこの変態悪魔を埋めてくる」

「じょ、冗談ですよ?落ち着いてくださいもーフランってば昔から冗談が通じないんですからあれなんですかその右手の魔法武器はちょっと待って死んじゃう死んじゃうタイムタイムああああーーーーーーー!!」


「ほらルーズちゃん、あーんよあーん」

「い、いえ自分で食べられます故。フルーレティア様は自分のお好きなように食べてください」

「お好きなように食べてるわよ?ほら口開けなさいな」

「ちょっ、力つよっ………」


 向こうではフラン様がヴィネルさんを地下深くへ埋め込み、フルーレティア様がルーズさんの口をこじ開けてあーんをしようとしていた。


「あがががが!」

「ええい、往生際悪いわね………」

「お、なんだ?ルーズが食べねえなら俺がもらうぞ」

「ああああっ!?ちょっとアロンって言ったかしら、あんた何してくれてるのよ!!」

「えっ?お、俺なんかしたか………?」


 しかしデリカシーの無さの塊のような存在であるアロンさんにスプーンを取られて泣いていた。


「おいティアナ、今日こそどちらが優れた魔術師か決着をつけようではないか」

「そんな決着もうついているでしょう。勝ちが決まった勝負ほどつまらない勝負もないのでお断りいたします、あなたはそこらの石とでも戯れていなさいフェリア」

「………ふっ、逃げたか」

「あ゛あ゛?」


 右を向くと、手にマヨネーズを持ったティアナさんがフェリアさんと一触即発の雰囲気を漂わせている。

 ティアナさんのあんな声初めて聞いたわ。もう一周回ってこの二人仲がいいんじゃないだろうか。


「………飲み食いが出来ないというのは、こういう時辛いものですなあ。ディーシェ様、ネイル様」

「そうだね。だけどみんなが楽しそうだからいいじゃないか」

「え、私はいつも食事してるよ?ネイルを美味しくいただいてるけど」

「は、ははは………今朝も時間停止プレイとか言って、わたしの動きを止めて好き放題………」

「こ、このゼッド、聞かなかったことにしましょう」


 左を向けば、アンデッドのゼッドさんとディーシェ様、それにディーシェ様の恋人のネイルさんがいた。

 過激な話をしていたので、私も聞かなかったことにする。


「ささーどうぞー。飲んでくださいー」

「おお、すまぬなナツメ殿。うむ、ここの酒はやはり最高………」

「おっ、いいお酒じゃん。いただき」

「ああっ!?儂の秘蔵コレクションがまたっ!?」


 再び正面を向くと、幹部のナツメさんがガレオンさんに酒を注いでいた。

 秒でヴィネルさんを埋め終えたフラン様に取られていた。


「はむはむ………」

「もう、フィリスちゃん。そんなに一気に食べたら喉に詰まるよ?レインちゃんもそんな大きな口開けてはしたないよ」

「問題ないわよ、私は小さいんだからどんなに口を大きく開けたって小さな口には変わりないわ」

「そうだレインの言う通り、私だって………こんなに………小さいん、だから………」

「じ、自分で言って傷つくフィリスちゃん可愛い………!もう、仕方ないんだからっ。ハイお茶」

「おお、ありがとう。ほう、美味い茶だな」

「ちょっとリンカ、あたしにもちょうだい」


 奥の方では、フィリス様とリンカさん、レインさんの魔王軍発足前からの知り合いたちが和やかな食事をしていた。


「え?このお茶?いいけど………」

「なによ、言い淀んで。なにかやばいものでも入ってるんじゃないでしょうね」

「あはは、入ってるよ」

「わかってるわよ、入ってるわけ………入ってるの!?」

「うん、ていうかそもそもこのお茶の成分が媚薬効果があるやつなんだけど」

「ちょっ………」


 前言撤回、和やかどころか策略と色欲に塗れた食事だった。


「ぐおっ!?し、しまった………気をつけていたのに油断した………!」

「あはは、ちゃんと引っかかってくれる、フィリスちゃんのアホ可愛いところ、好きだよー。ほおら、あっちに岩場があったから行こうねー」

「岩場に行って何をするつもりだ!?」

「女の子の口からそんなこと言わせないでよ、フィリスちゃんってば変態さんなんだから」

「変態はお前だっ!」

「あ、レインちゃんこのお茶いる?状態異常への完全耐性持ちの妖精族ならただのお茶だと思うけど」

「え、遠慮しとくわ………」

「そう?じゃ、ちょっと行ってくるね。三十………ううん、一時間くらいで戻るから」

「ちょっ、待っ、たす、助けて、助けてー!嫁に犯されるー!」


 フィリス様の叫びもむなしく、誰も助けはしなかった。

 リンカさんが生き返ってから二年。その間に全員が痛感したのだ。


 この人を怒らせたら、ある意味四魔神将や魔王よりやべーと。




 そして、もう一組。


「………セナ………最近は………実家に………顔を………出さないが………」

「領地の統治が忙しくてね。そのうち安定したら帰るわ、グレイ叔父様。それより、この引っ付いてくる酔っぱらいを何とかしてくれないかしら」

「………無理だ………勝てん………」

「えへへえ、セナ、もっとボクの相手してよぉ~お酒飲もうよぉ~」

「ちょっとヨミ、抱き着かないで頂戴。酔っぱらった時のスキンシップ癖を何とかしなさい、ほら見なさい!あっちであなたの恋人が嫉妬に取りつかれた顔でこっちを見てるでしょうに!」


 ほほう、私のヨミを誘惑するとはいい度胸じゃないか。

 解体されたとはいえ元四魔神将、それもセナより序列は上だった私を差し置いていい度胸だ、それ以上少しでも触ってみろ?椅子に縛って私とヨミの甘い甘い話を二十四時間聞かせる刑に処するからな。


「あっ、リーンだ!えへへ、リーンだ、大好きぃ」

「はぐっ!?」


 いきなりコテンと首を傾かせて、酔った赤い顔でそんな言葉を吐くヨミ。

 私は前世で有名な、あの言葉を思い出していた。


「………こうかは ばつぐんだ!」

「セナ、心を読むな!」


 するとヨミは、私の方にふらふらしながら寄ってきた。

 おお、抱きしめてほしいということだろうか。

 ふふっ、愛いやつめ。いいだろう、家では私が甘えてばかりだからたまにはこういうのも、



 ―――チュドオオオオン!!!



 悪くないと思った瞬間に爆発音が響いた。


「あはははは!!あはははは!!やっぱり夏は花火だねえ!今日も綺麗だ酒がうまい!あははははははははは!!あーっはっはっはっは!!」


「止めろお!!フラン様が酔っぱらっちまった!」

「誰だ、あの御方に酒飲ませたバカは!」

「姉様、それは花火ではなくて爆発魔法ですし、今は昼ですし、そもそも季節は春真っ盛りですが」

「冷静なツッコミをしている場合か!?まずいぞ、おい誰かそっちの岩場行ってフィリス様呼んで来い!」

「いいけど、しっぽりお楽しみ中だった場合はあんたに命令されてやったってリンカに言うわよ」

「馬鹿野郎、こんな些事でフィリス様の手を煩わせようとするな!」


 熱い掌返しを見せてくれたアロンさんたちを筆頭に、幹部たちが次々と慌てて起き上がる。

 フラン様以外の全員は、強力な魔力に充てられて完全に酔いは抜けていた。


「お、お母さん、ちょっとぉ!」

「あははははは!!あははははは!!あー、たのちくなってきちゃった!がんばるぞー!おー!」

「何を!?」


 フラン様の酒乱っぷりは、魔族全域にその逸話がいきわたるほど恐ろしいものだ。

 魔王城に隠してあったお酒をフラン様が勝手に飲んで、城が崩壊しかけたことも一度や二度じゃない。


「全員いくぞ!死ぬ気で抑えろお!」

「あはははは!!かかってこーーい!!」




 ※※※




「………ひどい目にあった」


 時刻は完全に夜。私たちはフラン様に酒が回って昏倒するのをひたすら待ち、交代して戦って時間稼ぎをした。

 一線から退いてしばらく経つからか、動きが鈍っていた。鍛錬しなければ。

 ちなみに他のみんなは、大半はフラン様によって軒並み伸びていて、残った僅かな精鋭も疲れて寝ている。

 フィリス様は体をピクンピクン痙攣させながら気絶していて、リンカさんも清々しくてつやつやした顔で眠りについていた。


 人間が完全に滅んでから、早二年。

 四魔神将や幹部たちには、これまでの功績として凄まじい恩賞がフィリス様より与えられ、それとは別にあるものは土地を、あるものは屋敷を、あるものは神器を手に入れた。


 神器は世界に点在していたいくつかを発見し、こちらで管理している。

 例えば『巨弓ダリオン』はティアナさんが、『金槍フール』はアロンさんが所有し、私たちの国の秩序と安寧に役立っている。


 そう、私たちは国を作った。勿論、国家主はフィリス様だ。

 魔王の任を解かれた今でも、国のみんなからは魔王様と呼ばれている。

 ヨミ以外の人間がいない、魔族だけの幸せな国。まあ四魔神将クラスは例外なく高い地位につけられたから仕事は大変だけど、充実している。少なくとも、プチプチ人間を殺してきた十五年に比べればはるかにやりがいを感じる。


「とはいえ、こうやってみんなで集まれたのも久しぶりなんだよなあ………」


 幹部たちは元々各種族の王族階級や最強クラスの武人などが多い。

 国の高い地位についてるとはいえ、それは種族の統治をおろそかにしていい理由にはならない。

 結果として、みんな非常に忙しい。

 暇こいてるのはエルフの姫の地位を捨て、フィリス様から言われたことも『きゅーくつだからヤダ』って言ってやらないフラン様くらいだ。

 そのフラン様にしたって、魔法研究の過程で数多くの新魔法を編み出し、国に貢献している。だからこそフィリス様はため息をつきながらもニート生活を黙認している。


「はあ、明日からまた仕事仕事。頑張んなきゃ」


 私の仕事は、軍の育成。

 魔王軍は解散したけど、後世で不穏分子が現れないという保証はどこにもない。

 だからこそ、かつての魔王軍より強く、固く、絆のある騎士団を作り上げなきゃならない。

 気が滅入る。


「………おっ、今日は満月か」


 ふと上を見上げると、ここは雲より高いからか、綺麗で大きな月が見えた。

 満月。ずっと私を支え続けてきてくれた。

 そんな吸血鬼としての力の源だからかな。なんだか月を見ていると、いろいろ思い出す。


 前世で死んで、こっちの世界に転生したこと。

 吸血鬼の里の楽しい生活。

 大切なものをすべて奪われた日。

 魔王軍に加入して、血反吐吐くほど努力した。

 そしてヨミに出会い、その姿を美しいと思った。

 前世で私をいじめていたやつらをぶっ殺して。

 魔王様から過去を聞かされて。

 当代の勇者をいじめたこともあったっけ。

 そして運命の、神都での決戦。

 ルヴェルズを倒し、さらに出てきた最悪の怪物、モニア。

 だけど私たちは、それを乗り越えた。


 そして今。私の夢は叶い、人間は滅び、魔族だけの平和な世界が訪れた。


「さいっこう」


 なんだろう、そう考えると。

 明日の仕事も、なんだか楽しみになってくるよ。


「さて、そろそろ戻るかね。みんなを起こさなきゃ」

「そう?まだ時間はあるし、もうちょっと二人でいようよ」

「でももう深夜近い………って、いつからいたのヨミ」

「ついさっきだよ。起きたらリーンがいないから、探してたんだ」


 心配したんだから、と言って頬を膨らませる私の最愛の恋人。

 ああ、本当に幸せだ。

 誰にも邪魔されることなく、もう何物にも命を脅かされることなく。

 ヨミと一緒に、この一瞬の時を生きられるんだから。


「ごめんね。みんな起きないからさ。吸血鬼は夜に強いから、先に目覚めちゃって」

「リンカさんとフィリス様は眠ったままだけど」

「あれはまた別の話」


 話しながら、私はヨミの隣に腰掛ける。

 すると自然に、ヨミの手が私の肩に回される。

 何年たっても、この子のこういった動作にはキュンとしてしまう。


「帰ったら何作ろうか。お腹すいたでしょ?」

「まあさっきまで運動してたし、少しはね」

「じゃあ軽めな夜食だね」

「うん、よろしく」


 相変わらず一緒に住んでいる私たちは、もうこんな会話にも慣れっこになってしまった。

 最近は自然な会話と思って話した内容がちょっと過激だったって理由で、部下たちにからかわれた。

 全員鉄拳制裁してやった。


「ねえ、リーン」

「なに?」

「可愛いね。大好き」

「ど、どうしたのいきなり」


 さすがにこの長い付き合いだ、いちいち変な声は出ないけど、驚くし顔は赤くなる。


「別に?見てたら思っただけ」

「まあ、それならいいんだけど………んむっ」


 ちょっと逸らした私の顔をヨミは引き寄せて、ゆっくりと唇を奪ってきた。


「もうっ、不意打ちは禁止って言ったじゃん」

「あはは、ごめんごめん。もうしないよ」

「………キスするなとは言ってない」

「もう、いちいち可愛いんだから、ボクのお嫁さんは」


 心臓の音が一段階早くなった気がした。


「お、お嫁さんって。まだ結婚してないじゃん」

「ボクはいつだっていいんだよ?『なんでもされっぱなしじゃ嫌だから、プロポーズは私がするっ!』って言ったのはリーンじゃん」

「うう………」


 それが何か月前だったか。

 一か月?三ヶ月?


「もう半年も待ってるんだけど」

「だ、だって………」

「もう、ヘタレなところは何年たっても変わらないね」

「ヨミの思い切りが良すぎるのっ!」


 ああ、もう。

 何で私の恋人は、こうやっていちいち私の心をいろいろな意味でかき乱さないと気が済まないのか。

 人間ていうのは嘘で、実は小悪魔なんじゃないかと何度思ったことか。


「そんなリーンも好きだよ」

「もうっ、うっさいうっさい!いいからそろそろ戻るよっ!」

「え、戻っちゃうの?」

「戻っちゃうの!」

「でもさ、リーン」


 まだ何か言いたそうだったので振り向くと、そこには頬を赤く染め、何かを期待するような。

 言い換えれば、余裕のなさそうな顔で、ヨミは声を発していた。


「満月。周囲に誰もいない大自然。二人っきり。………これ以上ない、絶好の機会だと思うんだけど?」


 なんの機会、と一瞬思って。

 そして気づいてしまった。


「え、あ、えーっと」

「どうしたの?もしかして、またヘタレる気かな?」

「へ、ヘタレじゃないしっ!」

「どうだかなー」

「わ、わかったよ、言うよ!言えばいいんでしょ!」


 呼吸が苦しい。

 きっと今、私は過去一番緊張している。

 でも勇気出せ。実は持ってきてるんだぞ、指輪。

 私だって、ここで言ってやろうと思ってた。


 嘘ですごめんなさい。

 どうせ言えないまま終わるんだろうとダメ元で持ってきただけです。

 ここで言ってやろうなんて思ってませんでした。


「ほら、どうしたのさ」

「ちょ、ちょっとくらい時間くれたっていいじゃん………!」

「もう半年もあげたんだけど」

「うううっ………!」


 ああ、私っていつもこんな感じだなあ。

 終始ヨミに振り回されて、愛をささやかれて緊張して。


 でもだからこそ、ここは言うって決めたんだ。

 勇気出せ。声をふり絞れ。


 ヨミがこんなに可愛らしい、余裕のない顔で待ってくれてるんだから。

 ああ………やっぱり、好きだなあ。

 何年経ったって、その愛おしさが萎むことがない。

 だからこそ言うんだ。

 好きな人と一緒に、ずっといられるようになる(まじな)いの言葉。

 同時に、好きな人の一生を縛る(のろ)いの言葉。


 大好きなあなたに向けて、言います。



「ヨミ」

「なーに?」


「私とっ――――」




 ※※※





 最初は、憎悪が結んだ絆だった。

 一緒に人類を蹂躙しようって誓い合った。


 まさか、あの時の幼馴染が、私の結婚相手になるなんて、当時は夢にも思ってなかったけれど。

 これから私たちは、ようやく自分たちだけの人生を歩めるんだ。

 縛られず、邪魔されず、平和な世界で、本物の幸せというものを手に入れることが出来た。



 転生吸血姫と元勇者が織りなした、一つの伝説。


 この物語は、私とその嫁が幸せになるまでを綴った………私たちの人生の、ほんの一片の話。

 残酷で、悲しくて、やりきれなくて。

 でも最後は、ヒロインと主人公のハッピーエンドへと続く、杜撰で下手で………でも最高の物語だ。





 完

皆様、ここまで拙作を読んでいただき、ありがとうございました。

これで『転生吸血姫と元勇者、人類を蹂躙する』は、メインストーリー完結を迎えます。

最後はリーンとヨミが幸せな日常を手に入れることが出来て、作者自身もよかったねえ二人共、という気持ちでいっぱいです。


さて、今年の一月からこの作品を書き続けてきましたが、まさかこんなに長く続くとは思っていませんでした。

完全な自己満足で始めた作品ですので、当初は小説を分かりやすく読んでもらおうなど思わない、思いついたネタをただひたすらに書いていただけの話になっていたと思います。

初めて感想をもらった時は嬉しかったなあ………。そこから少しずつ読んでもらえることが増えて、毎回のように感想をくれる人もいました。本当にその優しい言葉に励まされていて、それを読むのが更新日の楽しみでした。


しかも、レビューやファンアートまで!本当にびっくりしました。自分の作品がこんなにも受け入れてもらえるものなのだったんだと、そう思うと涙が出そうです。



さて、あまり長々と語っていてもあれなので、ここからは今後についてのご連絡を。まだ作者のことが知りたい変わり者の方々は、今日中に活動報告の方を更新する予定ですのでそちらをご参照ください(裏話もいくつか載せる予定です)。


まず今後の更新ですが、こちらでいくつかの後日譚や番外編をやっていこうと思っています。

とはいえ気まぐれ更新ですので、予定は未定です。ちょくちょく見てください(笑)

そして、ノクターンでの更新ですが、こちらもまだ未定です。書く気はあるのでご安心ください!


では、次回作でお会いできればと思います!転生吸血姫、最後まで読んでいただいて本当にありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 終わりました この作品を偶然見つけました、とても面白いです 一気に見てしまいます、まだ短いような気がしますT^T ありがとうございました
[良い点] 最高でした。ありがとうございます。
[一言] 死神から来て一気読みしましたが、無事砂糖にまみれて浄化されたことをお伝えしてコメントに代えさせていただきます
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