表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
236/248

吸血姫と真の最終決戦

 モニアが飛んでくる。

 さて、どうするか。


「ひゃっはああ!!」


 どこぞのモヒカンみたいな叫びをあげて飛んできているが、その速度は凄まじい。

 けど、やはり弱体化の影響は受けているようで、避けられないほどではない。


「はっ!」

「うおっとぉ!?」


 ギリギリで躱し、カウンターの回し蹴りを食らわせる。

 脚で防がれて大したダメージは入らなかったけど、一瞬の隙は作った。


「食らえこの変態戦闘狂がっ!」

「はああっ!」


 すかさず魔王様とヨミが攻撃を仕掛ける。

 体制が崩れているモニアは、慌てたように体をひねり、足を地につけて攻撃が当たる前に高く飛ぶ。


「ちっ、動きの鈍さについていけねえ!ずっと加護に頼ってた弊害か、参ったな。《身体(フィジカル)》………」」

「《破壊光線(ブレイクレーザー)》!」

「どあっぶねええ!?」


 私が放った魔法も空中で器用に避け、そのまま着地する。


「やるじゃねえかリーン」

 「うっさい!」


 私が追撃しようとすると、突如として影が割って入った。


「!?」


 影の正体は魔王様だった。

 見ると、目に生気が無い。バアルによって操られている。

 そのヤバい魔王様が、私に襲い掛かってきていた。


「うわっ!?間に合えっ!」


 即座に魔王様に付与していた魔法陣を起動し、魔王様の気絶と覚醒を促す。

 ギリギリで間に合い、パンチが鼻先をかすめただけで済んだ。


「はっ!すまんリーン!」

「大丈夫で………」

「よそ見してる場合かあ!?」

「「うおわっ!?」」


 私たちの一瞬のスキを突くように、モニアが剣を振り下ろしてくる。

 殺されないと特性を奪えないウァレフォルはともかく、バアルは絶対に防がなければならない。


「あと何回バアルを食らっても大丈夫なんだ?わからねえが、使い捨ての魔法陣を体にストックしている以上、いつかは終わりが来るよなあ!?」


 モニアの猛攻を、アルスを使って躱し、攻撃を仕掛ける。


「はあっ!」

「甘え!」


 けど、私の攻撃は防がれ、距離を取った魔王様の魔法も剣で防がれる。


「はははっ、弱体化したといえど、かつて世界をたった一人で塗り替えた俺だぜ?そう簡単に………」

「調子に乗るな!」

「うおおああっ!?」


 モニアが下がった瞬間、死角からヨミがモニアの首を狙った。

 ギリギリでバアルで受けたけど、アリウスでのヨミの攻撃にモニアは押し負け、吹き飛んだ。


「クソッ、『剣神』になって膂力が上がってやがるのか!」


 ヨミは一瞬で間合いを詰め、超接近戦を仕掛ける。

 今までのヨミなら、モニアの圧倒的な速さと剣技に翻弄され、成すすべなく斬られていた距離だ。

 だけど。


「うおっ………マジかよ!」

「お前はもう、剣神じゃないんだっ!」


 ヨミの剣技は、既にモニアを上回っていた。


「お前、やっぱりあの短時間で俺の動きをコピーしやがったのか!それを自分の剣術に取り入れて独自の動きをっ………どんなバケモンだよ!?」

「バケモンとか、お前に言われたくない!」


 そして、ヨミのディアスが、モニアの右肩に突き刺さった。


「ぐおおお!?」


 ヨミは距離を取り、魔王様と入れ替わる。


「《邪神の憤怒(ブレイクオブゴッド)》!!」

「ぐあっ………!」


 モニアは咄嗟に身体強化魔法で体を強化して防いだ。

 けど完全ではなく、天高く打ち上げられる。

 そしてここからは、それを予知していた私の番だ。


 上空に転移して、モニアが来た瞬間に思いっきり踵落としする。

 落とされたモニアが地上に着く前に再び転移し、ヨミの方向へ蹴り飛ばす。


「消えろっ!」

「おわあっ!?」


 モニアは体がうまく動かない影響か、なされるがままになっている。

 ヨミが剣を構え、モニアに突進する。

 右手のディアスを突き出し、モニアに迫る。


「いっけええ!」

「やってしまえ、ヨミ!」

「はあああああ!!」



「かかったなああ」



 ゾッとした。

 モニアはニヤリと笑い、右腕のバアルを地面に突き立てた。


 直後、足元の地面が泥のようになり、私たちは足を取られた。


「なっ!?」

「なんじゃこれは!」


「バアルの特性は『絶対干渉』だっつったろ。地面にこの剣に触れたものすべてを俺は支配する。地面を溶かすなんて朝飯前だ!」


 そう叫び、モニアはバアルを引き抜き、勢いをつけてヨミに向かっていった。


 ヨミは足を取られて動きが半減していて、逃れられない。


「おらああっ!」

「ぐうっ!」


 けどそれでも、ヨミは応戦した。

 身体強化魔法で空を駆けるモニアに対して、一進一退の攻防を繰り広げてみせた。

 私と魔王様も即座に反応し、モニアに迫る。


 けど、その事態に私たちは間に合わなかった。


「らあああ!!」

「くっ!」


 ヨミの左手のアリウスがウァレフォルによって弾かれる。

 即座にモニアは、右手のバアルを渾身の一撃とばかりに振り下ろす。

 慌ててディアスを構え、直後にしまったというような顔をしたヨミ。

 けど時遅く、バアルは振り下ろされた。


 そして。

 ヨミを何年もの間支え続けた最強の剣、魔剣ディアスは。

 粉々に砕け散った。




 ※※※




「サヨウナラだ………ヨミ!」


 ディアスが砕けたヨミは、右手に何も持っていない。

 即座にバアルが振り下ろされる。アリウスは間に合わない。


 しかし間一髪で私が間に合い、モニアを横から蹴り飛ばした。


「おっと!?」

「この野郎おおお!!」


 動けないヨミを転移させて、泥地帯を脱出する。


「ヨミ、大丈夫!?」

「無事か、主ら!」

「ボクは大丈夫。………けど、ディアスが」


 あいつの持つ最強の神器『始剣バアル』は、絶対干渉能力によってディアスの不壊の属性すら貫通する。

 それが分かっていたからこそ、ヨミは今まであの剣を絶対にアリウスで受けていた。

 神器殺しの剣は最強の神器すら無効化する。

 だからこそ、ヨミは今まで何度も斬られたのに一度も操られなかった。


 けど、アリウスの神器殺しの特性は、使用者とアリウス本体のみ。

 他の武器には適用されない。


 ヨミは、手に残ったディアスの柄を握りしめる。


「………長い間、助けられちゃったね。ありがとう」


 ヨミはディアスの柄を懐にしまい、アリウスを両手で構える。


「ヨミ、大丈夫なの?」

「うん、落ち込んでる場合じゃないし。あとで供養はしてあげなきゃだけど。それより、このままじゃまずいよ。今まであいつに何度もダメージを与えられていたのは、防御貫通のディアスがあったからなのに、これじゃボクがあいつに大きなダメージを与えられない」


 そう、それが問題だ。


 モニアは身体強化魔法によって、体を鋼のように武装している。

 私は『復讐神』の優位性で、魔王様は魔王としての権限とステータスの暴力で強引にダメージを与えていたけど、ヨミの場合はディアスの力だった。


「身体強化魔法では、その始祖である奴には届かんしのう」

「そうなんですよね………」

「作戦タイムは終わったかあ?」


 モニアは泥を元に戻して、こっちに歩み寄ってきている。

 まずいな。


「ああ、そうじゃ。この手があった」

「え?なんですか!?」

「要するに、身体強化魔法に頼らぬステータス増加さえあれば問題ないのじゃろう」

「そうですね」


 何か手があるのだろうか。


「あるじゃろう。身体強化魔法に頼らず、それでいて極めて強力で、あやつの力さえ貫ける、絶対的なバフが」


 そんなもんあっただろうかと脳内を検索し。

 結果、一つしか思い浮かばなかった。


「『月の加護』ですか?」

「左様じゃ」


 ………いやいや。


「魔王様、あれは………」

「頭おかしくなられたのだろうかとでも言いたげな視線を向けるな、わかっておるわ」


 心読まれた。

 だけどその通り。モニアのような例外を除き、月の加護は吸血鬼にのみ与えられた究極の力だ。

 それをどうやって、ヨミに使わせると………。


「おい、リーン。主の左手にあるそれを、ヨミに貸してやれ」

「へ?………あ」


 忘れていた。

 もう身に着けるのが習慣になっていたせいで、腕時計感覚でずっと腕に着けていたけど、最近は使う機会が全くなかった。


『保守の腕輪』。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 今戦っている人間側の裏ボスが [1]本気を出していて、純粋に魔族との力勝負を楽しんでいる [2]本気を出していて、魔族を滅ぼそうとしている(そのためには手段を選ばない) [3]まだ遊ん…
[一言] >バアルが砕けたヨミは、右手に何も持っていない。 ディアスだと思います。 次回も楽しみにしています。
[一言] これ、今まで使わなかった月の加護分も含めたらとんでもない量のバフが眠ってるのでは…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ