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吸血姫と邪神2

1日明けて見てみたらブクマ数とポイントが倍近くなってたんですけど何事!?

「今回お呼び立てしたのは、貴方の今後の方針について。そして、勇者の現状についてお話する為です」


 私の今後の方針.......魔王軍でどういった行動をすべきか。

 そして勇者の現状.......徐々に心を壊され、生物兵器化していっている少女の現在の状態、か。


「はい。まずは今後の方針ですが、貴方には数年、修業や訓練に専念して頂きたいと思っています」


 まあ、そうなるよね。

 今の私は弱い。月の加護があるとはいえ、私の現在のステータスは大体300前後。この時点でこの世界の平均よりは遥かに高いけど、人間を滅ぼし尽くすにはまだまだ力不足だ。

 何せ、人間を20人そこら相手にしただけで致命傷ギリギリのダメージを負うくらいだし。

 暫くは魔王軍に匿ってもらって、力をつけるべきだ。


「.......貴方は予想以上に理性的ですね。普通、貴方ほどの憎しみを宿していれば、なりふり構わず敵陣に突っ込んで無駄死にするものですよ」


 あー、ありますよね、漫画で復讐心にかられて獅子奮迅の活躍するけど、最終的に復讐を果たせずに死んじゃうやつ。

 私は嫌ですよ、あんなの。もったいないじゃないですか。

 あくまで理性的に、合理的に、かつ残酷に、激情を持って、復讐対象を殺し尽くす。そのために必要なのは、圧倒的な戦闘力です。敵は滅ぼし、自分は生き残り、別の敵を滅ぼす、これに尽きます。


「.......その為には修業や訓練が必須だと。.......素晴らしい、流石私が見込んだ子です」


 いやあそれほどでも。


「貴方の思う通り、今の貴方では復讐を果たすなど夢のまた夢です。並の兵士ならば余裕で倒せるかと思いますが、これが高ランクの冒険者や国直属の騎士などになると、1対1でも貴方は負けます。ましてや《聖十二使徒》には足元にも及ばないでしょう」


 バッサリ言うなあ。まあ事実なんだろうけど。

 ちなみに、今言った連中の平均的な能力は?


「冒険者であれば、貴方はB級冒険者と互角か、若干劣る程度でしょうか。A級だと平均ステータスが1000近くなり、貴方の御父上に匹敵します。騎士は一人一人が今の貴方と同じ程度です」


 なるほど。中々に厄介だな。

 まあ勿論、『今の私にとっては』って話なんだけどね。

 私の努力次第だけど、近いうちにそいつらは私にとって取るに足らない存在になると思う。

 え、なんでそんなに自信満々なのかって?


 だって私、まだレベル10だし。


 レベル10で、既にB級と互角。しかも、ただでさえ高い私の才能は、『吸血姫』としてのポテンシャルブーストで更に倍化している。

 対して、多分そいつらの平均レベルはかなり高い。


「B級なら大体60〜70、A級だと80〜90ですね」


 調子に乗るのつもりはないけど、これだけのレベル差がありながら私と実力が大差ないってことは、同等までレベルを上げれば、連中は私のステータスには遠く及ばなくなっているはず。

 更にいえば、私には月の加護があるため、満月の夜に限れば今の私でもステータスだけで言えばA級を上回る。

 勿論、経験とかなんやかんやの見えない実力があるから、勝てるかは分からないけど。


「そうなんですよねぇ。ぶっちゃけ、貴方の才能値はこの世界において、全生物中第3位です。努力と経験を積めば、まず負けは無くなるでしょう」


 .......ちなみに、第1位と2位は?


「2位が魔王。1位が現在の勇者です」


 嘘だろ、ポテンシャルで魔王様上回ってんのか、勇者。


「だからこそ、人間も早々に心を壊してしまいたいのでしょうね。いくら才能チートとはいえ、未だレベル1のままですから、強いも何もないですし。自分の私利私欲の為に、それに準じて発生するデメリット.......つまり、勇者が我々に取り込まれることを考えない。実に愚かですね」


 まったくです。

 .......ああ、そういえば。《聖十二使徒》のステータスはどれくらいなんですか?


「ひとくちに《聖十二使徒》と言っても、その強さはまちまちです。ただし、最低.......序列十二位でも、平均ステータス5000は超えてくると思って下さい」


 .......予想以上の化け物か、《聖十二使徒》。


「貴方のご両親を殺害したノインとイーディスは、序列六位と七位です。その平均ステータスは、10000前後と考えていいでしょう。今の貴方では、たとえ満月の夜でも勝てないと思われます。」


 基本的に、吸血鬼に対して平等に恩恵を与えてくれる月の加護だが、満月の夜だけは、その上昇効果は才能によって違ってくる。

 普通の吸血鬼なら十倍程度。『吸血鬼王』だったお父さんでも十五倍だったはず。


「その中で、()()()の貴方が、いかに才能溢れる存在かわかりますね」


 そう、私は満月の夜に限り、ステータスが二十倍になる。

 現在のステータスに照らし合わせれば、その際の平均ステータスは、なんと4000オーバー。加えて、特殊職業(クラス)『復讐者』の効果で、人間に対してはこの倍になる。

 つまり私は、一月に一度だけ、ステータスが8000まで跳ね上がるのだ。

 ステータス面だけで見れば、ノインとイーディスに迫っている。

 .......だが、


「いくらステータス上のみで強くなっても、それを制御する力が貴方にはありませんからね。超スピードで自爆するか、攻撃後に大きな隙を見せてそこを斬られるかして終わりでしょう。加えて、あちらは幾度となく戦争を経験した、戦闘のスペシャリスト。根は腐っていても、英雄級の実力を持つ傑物です」


 その通り。

 つまり、ステータスで近づいたと調子こいて挑んだら、すぐに返り討ちにされる。


 加えて言えば、月の加護にも弱点があり、月が雲とかで隠れると、その効果が激減するのだ。そのため、吸血鬼の里では、雲を散らす為に、常に風系の魔法が使える魔術師が空を見張っていたのだが、生憎私は未だに魔法が使えないため、今はこの手段も取れない。


 せめて、私が昼の状態でもその実力に迫れるくらいには強くならないと。道は遠いなあ。


「貴方の魔法指導はティアナがやってくれるようなので、大丈夫でしょう。すぐに使えるようになると思いますよ。さて、貴方が再び表舞台に出るのは、3年後になると思います。それだけの時間があれば、貴方も相当に強くなれるはず。そして.............勇者の保護も、その頃を予定しています」


 .............あれ?

 勇者の保護って、今すぐにする案件じゃないの?

 心が壊れる前に助けるんじゃ?


「そうしたいのはやまやまなのですが.......彼女が現在監禁されているのは、メルクリウス聖神国.......聖十二使徒を擁する、人間最大国家の都です。しかも、多数の腕利き冒険者や騎士、果てには聖十二使徒の第二位と第三位が常に彼女を監視しており、手が出せません。あの包囲を突破するなら、魔王軍幹部と準幹部、他精鋭を全員送り込み、その半分近くを犠牲にするくらいの気持ちで挑む必要がありますね」


 うん、無理だ。

 どんだけ強固なんだよ勇者包囲網。


「なので、勇者が出陣する頃.......様々な情報や状況から予測した所、恐らく三年後。その頃までに、こちらは貴方を鍛えに鍛え、幹部と共に勇者とぶつかって貰います」


 .......その頃になったら、勇者の心はもう壊れてるんじゃ?


「そうでしょうね。ですので、保護出来たとしても、彼女がこちらにつく可能性は、正直高くありません。貴方や魔王の働き次第ですね」


 そんな他人任せな.......。

 私とて、勇者には同情している。

 私と同じだからだ。人間の勝手な理由で人生をメチャクチャにされた被害者。

 だからこそ、仲間に出来なかった場合のことを考えると.......


「胸が痛むのは分かりますが、これは戦争です。計画に変更はありません、勇者を保護した後、心の修復が望めないようであれば、殺します」


 前にイスズ様と会った時は、かなりイライラしていて、『無理なら殺せばいい』みたいな思考になってたけど、今冷静になると、勇者への同情心が割と湧いてきて、殺すことに躊躇いを覚える。

 ああ、三年後の話なのに、今から気が滅入る.......。

次回は勇者ちゃんの予定です。

胸糞展開続いていますが、しばしお付き合い下さい。


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