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吸血姫と依頼

「おお、ディーシェではないか!久しいのう。元気そうで何よりじゃ」

「お久しぶりです、魔王様。お変わりないようで何よりです」


 アンデッド少女の正体は、最古の魔王軍幹部、ディーシェ様だった。

 それが分かると、勿論私は、魔王の間まで走って、魔王様に報告した。

 すぐに連れてきてくれと言われたのでお連れして、今は楽しそうに話している。


 かつて魔王様と共に魔王軍を創りあげた、最古の魔王軍幹部。

 特殊な能力を持つ魔族の中でも、特に異質な力をかつて保有していたディーシェ様。

 しかし、数百年前に当時の『勇者』、現在の旧聖十二使徒序列第一位『神子』のルヴェルズに敗れて、力を失い、やむなく引退。

 相棒兼恋人兼部下だった、ネイルさんと一緒に、どこかの森の奥でひっそりと暮らしていると聞いていた。


「懐かしいのう。ネイルは元気か?」

「はい!それはもう、毎日毎日暴れてますよ」

「む?暴れておるじゃと?あやつがか?」

「え、あ、ほら。暴れていると言っても、外とかではなく、ベッドの上で………きゃっ♡」

「………ああ、そういうことか」


 ちなみに、当時の魔王軍ではヴィネルさんに次ぐ変態として名を馳せていて、しかもその性癖のすべてが、恋人のネイルに向いているという、なかなかにパンチの効いた人だそう。


「ところで、そのネイルは今日は来とらんのか」

「はい。ちょっとゼッドに用があって、こっちに来ただけだったので。自分の領地の闘技場をまた壊されたんだって嘆いていましたけど、何かあったんですか?」

「そこにおるリーンが、兵士への戦闘指導の時に勢い余って壊しおったのじゃ。ちなみに、これで今月に入って二回目じゃ」


 それに関しては本当にごめんなさい。

 でも、前回は私じゃなくて、レインさんが限界まで範囲を絞った高密度竜巻の威力実験をしたからです。

 まあ、私たちも歓声を上げながら鑑賞してたけど。

 ゼッドさんは「涙腺が死滅していなければ泣き崩れているところだ」って言っていた。


「あまり、わたしの後継をいじめないでね?」

「安心せい、そろそろあの闘技場破壊による保険は停止しようと思っておる」

「え」


 それは困るんだけど。

 要するに、破壊したら自腹で弁償しろと?





「しかし、なぜ急に来たんじゃ。ここ数十年、顔を出したことなどなかったじゃろうに」

「だって、魔王様ったら全然遊びに来てくださらないんですもの。ギリギリここから五キロ圏内にあるのに、誰も来てくれないなんて、さすがに寂しいです」


 結構近所なんだ。


「おお、それはすまんかった。仕事が山積みでのう。行こう行こうと思って、いつの間にか忘れておったわ」

「フランは定期的に遊びに来てましたよ?」

「あのバカは基本的に放蕩しとるだけの穀潰しじゃろ」


 酷い言われようだな、フラン様。

 いやまあ、今でこそ幹部に復帰してるけど、エルフ族の女王の座は妹のティアナ様に押しつけて、幹部もやめてて、息子のサクラ君は四魔神将として自立してるから養う必要はない。で、何してるかと聞かれれば、首をかしげざるをえない。


「それともう一つ。新しく入ったっていう、人間の女の子にも興味があったので」

「む?ヨミのことかの?」


 ヨミに興味?

 そういえば、ディーシェ様って、ゼッド様と同じで元人間だった。

 なにか通じるものがあるのかも。


「そういうことなら呼び出すか。リーン、迎えにいってくれるかの」

「そうしたいのはやまやまなんですけど………最近私、ヨミに避けられてて」

「なんじゃ、何をしたんじゃ。勢い余ってついに無理やり襲ったのか?いついかなる時にも、理性を持って行動せよとあれほど………」

「違いますよ、やってませんよそんなこと!私だって理由がわからずに若干落ち込んでるんですから!」



 ※※※




「というわけで、ヴィネルに連れてきてもらったぞ」

「お久しぶりですねえ、ディーシェ」

「ヴィネル、久しぶり。そっちの子がヨミちゃん?」

「あ、はい。えーっと………」

「おっと、紹介がまだじゃったな。こやつはディーシェ、最古の魔王軍幹部の一人じゃ」

「え!?す、すみません、そうとは知らず!」


 慌てふためくヨミ。可愛い。

 でも私に気が付くと、さっと目をそらされた。非常につらい。


「え、えっと。初めまして、ヨミです。よろしくお願いします、ディーシェ様」

「うん、よろしくね。それにしても………人間とは思えないくらい、すごいパワーを感じるね。練り上げられてるっていうか、完成してるっていうか」


 ディーシェ様はアンデッド。生者の気配には敏感な種族。

 その感覚で、ヨミの実力を測ることができるってことなんだと思う。


「質こそ違うけど、もう全盛期のフランに近いんじゃない?さすがに及んではいないけど、すごく強い。月の加護がない魔王様相手なら、勝てないにしろ善戦はできると思う」

「あ、ありがとうございます」

「おい待て、さすがにそれは………ない、よな?ディーシェが引退した時からレベルは上がっとるし、300を超えとるし………大丈夫、じゃろう………」


 今サラッとすごいこと言った。

 レベル300!?私なんてまだ200にも至ってないのに!?

 ショック受ける必要ないじゃん。多分世界最高レベルだって。


「ま、まあよい。それでディーシェ。わざわざヨミまで呼んだんじゃ。そろそろここに来た理由を話さぬか」

「え?だから、近くまで来たのと、このヨミちゃんに会うために………」

「うむ、それはもう聞いた。じゃから、()()()()()を言え」

「………あはは、さすがに魔王様には隠し切れないかー。あとでこっそり、ヨミちゃんとリーンちゃんにお願いする予定だったんだけど」


 え?何か別の理由あるの?


「さっさと話さんか。妾に隠したがったということは、碌でもない話ではあるのじゃろう」

「えーっと、まあ、はい。その、わたしも何とかしようと思ったんだけど、出来る限り頑張りはしたけど、今の吹けば飛ぶようなステータスじゃどうにもならなかったと申しますか。ぶっちゃけ、このままにしておくと魔王軍の被害が拡大しかねないと申しますか………」

「前置きはいい。もう貴様ら最古参幹部の問題行動には慣れたんじゃ。いいから言え」

「魔王様、その問題行動に私は含まれてませんよねえ?」

「寝言は永眠してから言え。順番的には問題を起こした順に、フラン、(ヴィネル)、超えられない壁、ディーシェ、フルーレティアの順じゃな」

「えっ」


 この人、まさか自分が問題なんて起こしてないって本気で思ってたのか。

 自覚のない変態ほど厄介なものもそうないって言うけど、まさにその通りだな。

 超えられない壁挟まれるほどだし。

 あと、永眠してたら寝言は言えないのでは?


「えっと、続けますね?」

「おう、早く話せ」


「実は、魔獣がアンデッド化しちゃって大変なんですよ。そこで、魔王軍の力をお借りしたく」


 なんて?

たいっへん申し訳ないのですが、今週、かなり予定が詰まってしまっていまして。

二回分、更新を停止させていただきます。


次の更新は日曜日、7/19です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 了解しました〜。 無理はなさらないでくださいね?
[一言] 了解です!楽しみに待ってまーす! 無理なさらないで下さいね!
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