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転生吸血姫と元勇者、人類を蹂躙する  作者: 早海ヒロ
第六章 転生勇者編
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元勇者とブラック企業

『と、いうわけでじゃ。アロンとナツメの部隊がピンチに陥っておる。そっちの手が空いたら急行しとくれ』

「………絶対行かなきゃダメですか」

『ダメじゃ。サクラは医務室、グレイとリーンも手が離せん。四魔神将が主しかおらんのじゃ。なんとかしとくれ』

「ボク、今日で十八連勤なんですけど」

『………………………すまん。じゃが頼む』


 ………………。

 噓でしょ?ようやく明日から二日間休みだと思ってたのに、また仕事?

 戦争が大詰めとはいえ、忙しすぎない?

『ただひたすら人間を殺す』っていう、ボクにとっての天職とはいっても、限度があると思う。


「ヨミ様、いかがなさいましたか?」

「………シェリーさん。まいっちゃうよ」


 魔王軍準幹部にして、サクラ君以外で唯一蘇生魔法を使える、ダークエルフのシェリーさんは、今回の戦いでボクの副官をやってくれていた。


「………ここの一件が片付いたら、アロンさんたちの応援に向かえって。ボクだけ」

「そ、それは………大変ですね。魔王軍最強とはいえ、ここまで休みなく戦えば、パフォーマンスも落ちてしまうのでは?」

「あ、それは大丈夫。ボク、どんなに疲れてても二時間寝ればフルパワー出せるように訓練してるから」

「おお………そ、そうですか」


 とはいっても、ボクだって生物。半月以上も毎日毎日敵を斬って斬って斬りまくって、ちょっと休んでまた斬るという毎日は、さすがに疲れる。


「はあ………」


「死ねえええ!裏切者があああ!!」


「………お前が死ね」


 血まみれで迫ってきた人間の兵士を、もはや自分の剣すら抜かず、その辺に落ちてた剣で斬った。

 どうやら、ボクが人間だって話は結構人間の間でも伝わっているらしい。


「ボクからしてみれば、裏切者はお前らだよ」

「ヨミ様、大変申し上げ難いのですが、その………南の方向から、人間たちの援軍が………」

「え、また………?」


 もう何回目だろう。なに、そんなにボクに殺されたいの?


「………いかがなさいますか?」

「………………ボクが斬りこむので、バラバラになったところを全員で撃破してください」


 そう言ってボクは、この二週間余りで何度抜いたかわからない、腰の二本の剣を再び抜いた。



 ※※※



「おう、ヨミ!助かるぜ、お前さえ来てくれりゃ………だ、大丈夫か?目が死んでんぞ」

「………十九連勤………ははっ………ここさえ終われば休み………さっさと皆殺しにして、ボクは家で一日寝るんだ………」

「なんかー、死んだ目でー、物騒なことー、言ってますねー」

「いやまあ………四魔神将の忙しさは、幹部の比じゃねえから、こうなるのもわかるが………」


 すっかりブラック企業となり果ててしまった魔王軍上層部。

 もはや、医務室で寝ているサクラ君の姿を想像して殺意が芽生えてくるほど、ボクの心はすさんでしまった。

 ボクなんかはまだマシな方で、ヴィネルさんに関しては、最近好みのロリショタが近づいてきても見向きもしないほど、メンタルがすり減っている。


「………大丈夫です。現況を教えてください………」

「お、おう。………マジで気を付けろよ?」


 若干引いてるアロンさんだけど、ボクに現在の状況を教えてくれた。

 なんでも、元聖十二使徒の連中が、総出で襲い掛かってきているらしい。


「知ってるはずだが、聖十二使徒は『三柱』を除いて、全員がその称号を剝奪された。だが死んだわけじゃねえ。弱体化したとはいえ、人間の中じゃ最強クラスの強さを持った、旧八位以下の五人が、こっちに向かってきてるんだよ」

「弱くなってもー、うちの上級兵士よりー、強いので―、面倒なんですよねー」

「分かりました、そいつらがボクのお休みを邪魔したやつらなんですね。斬ってきます」

「待て待て待て、まだ早い!奴らの到着は明日だ!」



 ※※※



 翌日。体を心配してくれたアロンさんとナツメさんの配慮によって、久々にぐっすり寝たボクは、いくらか機嫌がマシになっていた。


「おはようございます。動き、ありましたか?」

「おう、おはよう。あったぜ、向こうの山を拠点に陣取ってやがる」


 身体強化魔法で視力を強化して見てみると、たしかに多くの人間が見える。

 その中心辺りに、それなりに強いオーラを放つ奴が五人。あれが旧聖十二使徒か。


「でもー、わかりませんねー。なんでー、五人をー、固めたのでしょうかー?分散させて―、広範囲に被害を及ぼした方がー、効率いいのではー?」

「ああ………それは多分、アイツら全員捨て駒だからですよ。聖十二使徒下位、しかも女神の加護を失った雑魚なんて、四魔神将の前では紙くずみたいなものですからね。だったらいっそ同じところ攻めさせて、幹部の一人も殺せれば………とか狙ったんだと思います。まあボクがいるので万に一つもそんな事態はあり得ないんですけど」


 聖十二使徒の上位、ノインより上の連中すら、『三柱』以外はボクら四魔神将の敵じゃなかったのに、力を失った下位が勝てる道理なんてない。


「そうか、なるほどなあ。………よし、話は終わりだ。軍を動かすぞ!」

「あ、ちょっと待ってください。こっちの被害は最小限に済ませたいので、ボクが一太刀だけ最初に」

「は?………おおそうか、あの五人を斬ってきてくれるのか。助かるぜ」

「いえ、行きませんよ?あんな遠くまで走るの、めんどくさいですし」

「はあ?じゃあなんだよ、一太刀って」


 地理が味方してくれた。

 相手が拠点としているのは、標高千メートル程度の山の麓あたり。

 だから、こういうことができる。


「《身体強化(フィジカルブースト)―――飛撃・斬撃拡大・飛距離拡張・飛距離超拡張・微細振動・正確無比》」


 身体強化魔法によって、一気に強化された力で、ボクは一太刀放った。

 そしてその一太刀は、寸分違わず。


 ()()()()()()()()()()()()()



「「「「「はあああああ!?!?」」」」」



 アロンさんもナツメさんも、魔王軍のそのほかの兵士の皆さんも声を上げる中。

 返しをつけて放った飛ぶ斬撃は、斬った上の部分、山の山頂から中腹あたりの方が上に吹っ飛び、数秒後に落ちていった。



 ―——うわあああ!!

 ―——な、なん、なんだ、なんだあああ!?!?

 ―——や、山が落ちてくる!!助けっ………!



 人間たちのそんな断末魔の悲鳴と共に、見事に山にサンドイッチされた人間たち。

 それに伴う山崩れや倒木なんかで、人間たちの命はどんどん減っていく。

 旧聖十二使徒も、五人中三人死亡、残る二人も重症だ。他の兵士も、運よく隙間に潜り込んで助かった兵士を除いて全員押しつぶされ、生き残ったのは総勢で百人もいない。


「昨日、ずっと考えてたんですよ。どうやったら早く帰れるのかって。一刻も早く、連勤記録をストップさせるにはどうしたらいいのかって」

「………………………お、おう」

「で、思ったんです。ちょこまかちょこまか人間は逃げるから、それを追おうとするから、時間がかかるんだって。だから、いっそのこと逃げられないくらいの攻撃でいっきに殺せば、戦争って数分で済むんじゃないかって」

「………………き、規格外ですねー」

「じゃ、ボクはもう仕事終わりですよね!あとは皆さんで大丈夫ですよね!」

「あ、ああ………任せとけ………」

「じゃ、ボクは帰りますね!さ、帰って寝よ!夜まで死ぬほど!」


「………やべえよ。ヨミ様マジやべえよ。なんだあれ?なんであんな遠くから山をぶった斬れるんだよ!?」

「他の四魔神将も規格外ではあるが………やっぱヨミ様は別格だわ。さすが魔王軍最強、ぶっ壊れ性能だぜ」

「ああ………ヨミ様、素敵い………わたしも斬ってえ………」

「おい、この女今やべえこと言ったぞ!?」


 後ろで何か声がしてたけど、今のボクには届かなかった。

 ボクの頭は今、睡眠以外を求めてなかったからだ。

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