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転生吸血姫と元勇者、人類を蹂躙する  作者: 早海ヒロ
第六章 転生勇者編
178/248

吸血姫と復帰

「………リーン。紹介したくはないが紹介するぞ。こやつが最古参の魔王軍幹部の一人、『暴魔将』フランじゃ」

「どもども~、フランだよ。サクラがいつもお世話してるね!」

「………お世話になってるねと言いたいのか?」

「そうそれ」

「ど、どうも初めまして。リーン・ブラッドロードです。よろしくお願いいたします」

「わお。礼儀正しい。フィリス、見習いなよ」

「こっちのセリフじゃ!貴様は自分の息子の爪の垢を煎じて飲むことから始めろ!」


 魔王様に対してもフランクに接する、飄々としてて明るい性格。

 サクラ君とは真逆の性格だけど………取り敢えず、この人は本当に、あのフラン・フォレスター様みたいだ。

 魔王軍の中で、正真正銘の最古参、魔王様の始まりの仲間。

 最古にして最強。エルフ族の中でも類を見ない天才。


「とはいっても、フィリスに似てないねー。ミネアちゃんには随分似てるけど。あっ、胸はちっとも似てないね、ここはフィリス譲り?」

「魔王様、大先輩にこういうこと言うのもあれなんですけど、この人一発ぶん殴ってもいいですかね?」

「一発と言わず瀕死になるまで拳を叩き込んでやれ。どうせこいつは自分で治せる」

「ご、ごめんなさい!うちの母が本当にごめんなさい!」


 知ってるよ、私の胸がまな板なことくらい!!

 最近、ヨミと並ぶとその成長の差に絶望するんだから!!


「………というかフラン。主、足はどうした。普通に歩いておるではないか」

「あーそれ?普段は車いす使ってんだけど、サクラが怪我したってんで飛んできて、忘れてきてさー」


 フラン様は、七十年以上前にルヴェルズの神器によって受けた呪いで、両足が使えない。

 そう聞いてたんだけど………確かに普通に歩いている。


「だからこれ、厳密には歩いてるわけじゃないんだよね。ほら、よく見て」


 言われるがままに下を見てみる。

 するとよく見ると、本当にわずかだが、違和感がある。まるで地面に足がついていないような………


「あたし、三ミリ宙に浮いてるんだよ、今」


 どこぞの青い狸型ロボットかよ、というこの世界で通じるはずもないツッコミを、私はぐっと飲みこんだ。



 ※※※



「ところで、さっきから入るタイミング失って扉の外にいるそこの子。あの子がヨミ?」


 振り向いてみると、確かに扉でちょっとだけ頭を出してこっちの様子をうかがっているヨミがいた。何あれ可愛い。


「そうですね。あの子がヨミです」

「うちのサクラ差し置いて第一席に座った人間の女の子がいるって話は聞いてたけど………なるほどね。あれじゃ納得だわ。あたしでも若干厳しいかもね」

「あやつの剣術の実力は、ステータス差をものともしないからのう。まあ、お前が引退した今、魔王軍の切り札であることは間違いない。ほれヨミ、こっちへ来い」

「あっ………は、はい」


 人見知りするヨミ。可愛い。ぎゅってしたい。


「え、えっと、初めまして。ヨミです」

「うんうん、可愛い顔してるね。あたしはフランだよ。よろしくね!」

「は、はい、よろしくお願いします。………えっと、サクラ君のお知り合いなんですか?」

「ヨミ、その人はサクラ君のお母さんでティアナさんのお姉さん。で、ヴィネルさんとかフルーレティア様と同じ最古参の魔王軍幹部で、魔王軍歴代最強の『暴魔将』フラン様だよ」

「えええっ!?」


 そりゃ驚くよね。客観的に見て肩書きえぐいもの。


「いやいや、本当に美少女だね。サイドテール似合ってる。胸も………たかだか十七年しか生きてないのにあたしよりでかいじゃん。腹立つ」

「ええっ………」

「お、お母さん!」

「魔王様、うちのヨミがセクハラされたんですけど」

「そいつにセクハラという考えはないぞ。ただ妾に会う遥か前からデリカシーをどぶに捨てておっただけじゃ」


 こういっちゃあれだけど、魔王軍の最強クラスって、いつの時代もまともなのほとんどいないな。

 ヨミが美少女なのとサイドテール似合ってるのは激しく同意だけども。

 サラサラの髪をサイドで結ぶ姿は、私の性癖に実によく刺さってくれて………

 ………………………。


「やばい、なんか無性にヨミの髪に顔うずめたくなってきた」

「リーン!?」

「フィリス、この子は何言ってんの?」

「気にするな。ディーシェを多少マイルドにした感じの性癖を持ち合わせておるだけじゃ」

「あいつをマイルドにしても割と危険じゃない?」

「そうなんじゃ。まあ遺伝と言えばそれまでじゃが。リンカの血を引いておるからのう」


 失敬な。

 私はただ、ヨミとくんずほぐれつな関係になりたいと思ってるだけだっつの。




「さて………サクラ、もう大丈夫?お母さんいなくて平気?」

「だ、大丈夫だよ!もう子供じゃないんだから!恥ずかしいっ………!」


 顔と長い耳を真っ赤にして恥ずかしがるサクラ君。ヴィネルさんが見たら卒倒するな。


「……………いつ見ても信じられん光景じゃ、フランが母親をやっておるなど」

「あたしからすりゃ、フィリスに孫出来てんのが信じられないっての。あたしたちも年取ったってわけだね。なんだっけ、『こーへい禿のごとし』だっけ?」

「………えっと、『光陰矢の如し』ですかね」

「そうそれ」


 誰だよ耕平。誰だよそのハゲ。


「んじゃ、あたしはそろそろ行くわ。引退した身で魔王城にいるのも気まずいしね。ティアナに見つかって国家の仕事とかめんど…………もとい、難しい仕事おしつけられるれる前に退散するわ」


 そう言ってひらひらと手を振り、最後にサクラ君を撫でまわしてから医務室を後にするフラン様。


 ………………………の腕を、魔王様が掴んで止めた。


「まあ待て。せっかく来たんじゃ。ゆっくりしていけばいいではないか。ん?」

「………………………何企んでんの?あたしを引き留めるなんて。もう引退した身の上なんですが?」

「人聞きの悪いことを言うでない。ただちょっとばかり、困った状況に陥っておってのう。サクラが安静にしている必要がある以上、魔術師が不足しておってな。………………………あとはわかるな?」


 そして魔王様とフラン様はにっこりと笑い合い。

 逃げ出そうとするフラン様を、魔王様が羽交い絞めにして止めた。

 宙に浮いていて踏ん張りがきかないフラン様は、いとも簡単につかまった。


「いやだよ、引退したじゃんあたし!働きたくないよ!辞職した社員(幹部)使うとか、ブラックにもほどがあるでしょこの企業(魔王軍)!」

「わははは、何を言っておる。呪いさえ解ければ幹部に復帰すると言っておったではないか。ということはまだ戦う意思はあるのじゃろう?妾はちゃんと覚えておるぞ。なに、主なら簡単な仕事じゃ、ちょっと戦場に行ってちょちょいと仕事するだけじゃ。なんならフルーレティアも行かせるぞ」

「レティも引退したじゃん!」

「いいからやれ。息子の貞操がどうなってもいいのか」

「何その脅し!あんたショタコンだったの!?」

「まさか。ただ、今はサクラは安静が必要な状態と、ヴィネルに教えてやるだけじゃ」

「鬼!魔王!………あ、どっちも合ってるか。ってそうじゃなくて!え、なに?あの変態バカ悪魔、まさか………」

「今はサクラにご執心じゃ。隙あらばこやつの体を汚そうとたくらんでおるわ。というか、この話は前にもしたじゃろう。もう忘れたのか、この鳥頭が」

「ちょっとぶっ飛ばして脳に魔法ぶち込んでくるからどこいるか教えてくんない?」

「働いたら教えてやる」

「………何すりゃいいの」

「なに、ちょっと聖十二使徒の序列第三位を殺してくるだけの仕事じゃ」

「重労働!!」


 そのあともなんだかんだあって、結局フラン様は、サクラ君の安静期間が終わるまでという条件で、魔王軍幹部復帰を果たした。

読者の皆様にお知らせがございます。この作品ですが、楽しみにしている方には申し訳ないのですが………更新ペースを落とし、二日に一回の更新とさせていただきます。


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― 新着の感想 ―
[一言] 1話前まで、覚醒勇者を取り逃し、サクラ君が負傷して魔王軍ちょっとやばい感じがあったのに、フラン来てから「あ、これ大丈夫やな」と思えました。 フランすご!
[良い点] ついこの前まで、深刻な状況だったはずなのに フランの登場でそれもどっか行ってしまっている。 フランの存在感はすごい!流石!と言っている自分と それは誤解!一部だけでなくもっと全体を見てと…
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