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転生吸血姫と元勇者、人類を蹂躙する  作者: 早海ヒロ
第六章 転生勇者編
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吸血姫vs魔哭2

 現在戦場は、三つのグループに分かれていて、うち二つが勢力拮抗によって壮絶な戦いが繰り広げられている。

 唯一壮絶じゃないのが、いとも簡単にハサドを殺して、今から勇者を殺そうというヨミ。

 一番やばいのが、二対二で天変地異と見まがうくらいの激戦を繰り広げる、サクラ君&グレイさんvsヘレナ&ゲイル。

 そしてもう一つが、


「《破魔の剣(バスターソード)》」

「《呪いの連槍(カースファランクス)》」

「《海神の三叉戟(トライデント)》!」

「《死を呼ぶ花々(デスフラワーガーデン)》!」

「《輝かしき凶弾(グロリアスバレット)》!!」

「《月光線の雨(ルナティックレイン)》!!」


 私とノインの、一進一退の魔法攻防だ。


 物理攻撃に移って一気にぼこぼこにしたいんだけど、それができない。

 ノインは、サクラ君と同系統。物理攻撃を捨てて、後方からの魔法に特化した、純魔法タイプだ。

 要するに近づきゃなんてことないんだけど、それがいまだにできない。

 というか、サクラ君しかりティアナさんしかり、一流の魔術師ってのはまず、敵に近づかれないことを重視する。近接戦に持ち込まれさえしなければ負けなしなんだから当然の話だ。

 そしてノインもまた、認めたくはないけど最強クラスの魔術師だ。サクラ君ほどではないにしろ、月の加護が発動していない私にとって、苦戦は免れない相手。


「っ、《完全なる(パーフェクト)………」

「《聖光弾(ホーリーレイ)》!」

「生め》………うわっ!?」


 魔族は、光属性に弱い。属性が悪に偏る種族なら、ほぼ例外なくそう決まっている。

 私はイスズ様の加護によって光属性に対する耐性を持ってるけど、それでも長年の癖で反射的に避けてしまう。

 そのせいで魔法が定まらず、中止せざるを得なくなった。


「こいつ、さっきからせこい戦い方をっ………!」

「ほう、不服か?」

「………別に。好きにすれば?『どんな手使っても勝つ』って考えは、私も同じだし」

「そうか。では、遠慮なくやらせてもらう」


 再び、私とノインの魔法のぶつかり合いが始まった。

 何とか魔法を潜り抜けて接近したい私と、死ぬ気で近づけまいとするノイン。

 両者の力は拮抗した。


 どれくらい戦っただろうか。そろそろ魔力の底が見えてきた。

 私の魔力は、サクラ君みたいに無尽蔵じゃない。いやあの子も無限ではないけど。

 私は魔法闘士で、純魔法タイプじゃない。いくら魔力ステータスが高くても、一芸特化には劣る。


「ハア………ハア………さすがに末恐ろしい。魔法と体術を同時に扱うにも拘らず、魔法だけでこの完成度とは」

「フー………フー………そう思うなら、さっさとくたばれよ」

「粋がるな。すでに魔力が限界だろう。私の多重魔法をあれだけ食らって、まだ立てているのがおかしいのだ」

「私を、そこらの有象無象の人間共と一緒にしないでくれない?魔力が尽きる前にお前を仕留めれば済む話だし、たとえ尽きたって何とかするから」


「魔力尽きるまで戦う、か。母親と同じく、無様な死を選ぶのだな」


「………なんだと?」

「お前の母親の死にざまはよく覚えているぞ。娘を庇うために、絶対に勝ち目のない私に防御だけで挑んできた。母の愛とはどんな種族でも美しいものだ」

「………黙れ」

「だがお前はこうやって、私に勝てずにいる。もうすぐ魔力も切れ、私に殺されることになるだろう。つまりお前の母は、娘をわずか十二年生き長らえさせただけ………無駄死にだ」

「黙れ………」

「安心しろ。私は他の聖十二使徒と違い、お前たち魔族を哀れんでいるのだ。人間に生まれず、ミザリー様の慈愛をいただけなかった貴様らをな。だからこうして、貴様らに転生のチャンスを………」


「黙れって、言ってんだろがああああ!!!」


 私の理性の糸は、再び切れた。



 ※※※



 目の前が真っ赤に染まっても、わずかに残った理性が、無策に突っ込んだらこの男の思うつぼだと告げる。

 なら、どうする。私のお母さんを愚弄し、貶したこの男を、どうすれば嬲り殺せる。


「そろそろ決着をつけてやろう………」


 ノインは手を天空に伸ばす。すると、手に光属性のオーラが集まってきた。

 おそらく、今の状態であれを食らえば、私は死ぬ。

 けど私は、自分の生死すら、半ばどうでもよくなっていた。

 この男を黙らせることができるなら、私は命をなげうってもかまわない。




「《穿つ暴風(テンペストシューター)》!!」

「………馬鹿め」


 巨大な指向性を伴う暴風は、狙いはずれてノインの横を通った。


「所詮この程度か。月の加護があれば厄介だったやもしれんが、昼の状態の吸血鬼などたかが知れて………」




「  つ  か  ま  え  た  」




「!?馬鹿な、どうやって………………………まさか貴様、暴風の中を!?」


 そう、ノインから魔法をそらしたのはわざと。

 本当は、暴風の中で自分の身を隠して、ノインに接近するためだったんだよ!!


「く、くそっ…………………《聖なる死の(セイクリッド・デス)………………………」

「  お  そ  い  」

「ぐあっ!!」


 ノインが魔法を使う前に、鳩尾にドロップキックをぶち込む。

 そのまま馬乗りになって、イーディスと同じように………………………



 ボグッ。ぐちゃっ。ゴチュッ。べこっ。



「あはははははは!!あははははは!!やっと!!やっと仇が打てるよ、お母さん!!見ててね、今こいつを地獄に叩き落すから!!」

「ぐぎい………………………調子に………………………!ぐげっ!?」


 死ね!死ね!

 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ!!!



「あはははははは!!これで………トドメっ………………………!!」


『ミネアは、妾にとって唯一無二の宝じゃった』

『ノインを許せん。我が娘を殺したあの男だけは』



 ………………………!!


 私は………!

 ………危なかった。本能に飲み込まれて、ノインをぶっ殺してしまうところだった。


「………う………………………あ………………………」

「………頑丈なことで」


 理性を取り戻した私は、バレないように未だ激戦を繰り広げているサクラ君に連絡する。


『サクラ君、ごめん。一瞬だけ転移阻害結界を緩めて』

『あ、はい!』


「………残念だよ、私の手で殺せないことが。《転移(テレポーテーション)》」



 ※※※




 ………………………ここはどこだ。

 リーン・ブラッドロード、絶対に許さん。

 この私を、ここまでボロボロにするなど、それが吸血鬼などという下等種族だなど、あってはならんことだ。


「………………………ようやく会えたな。ノイン」


 俺がリーンへの復讐の念に燃えていると、背後から声がした。誰だ………………………?


「………ずっと会いたかったぞ。この時を、どれだけ待ちわびたことか………リーンには本当に感謝せねばな」

「………誰だ、貴様は」


「妾か?妾はフィリス・ダークロード。魔王にして、リーンの祖母。貴様が殺した、ミネア・ブラッドロードの母親じゃ」


「!?!?魔王、だと………!?」

「十二年胸中にため込んだこの怒り………あの日の罪、貴様の恐怖と絶望の感情で贖ってもらうぞ。殺してくださいと嘆願しても殺してやらんから、覚悟しておけよ………?」



 ※※※



 ………ノインを魔王様の元に送った。多分、死ぬより百倍苦しい目にあわされていることだろう。

 出来れば私がその拷問の役目を負いたかったけど、約束は約束。仕方がない。

 それでも、もうあの男を傷つけることができない。私の最大の復讐が果たされてしまったという現実が、虚無感を感じさせる。


「………はあ、やめだやめ。考えたってしょうがない」


 この虚無感は、人間共をぶち殺すことで発散しよう。ん?虚無感って発散するもんなの?まいっか。


「さて、じゃあサクラ君とグレイさんの加勢に………」



「うおおおおおおおお!!!」



「!?な、なに!?」


 突如、背後からやばい気配を感じた。

 聖十二使徒の比じゃないほどの、神聖なオーラとでも言おうか。

 あれは………


「勇者………!?」

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