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転生吸血姫と元勇者、人類を蹂躙する  作者: 早海ヒロ
第五章 魔王誕生編
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【episodeZero】知恵神

「わー!待って待って、待ってくれ!」


 一瞬、土竜魔獣が喋ったのかと思って驚いたがそうではなく、魔界の方から駆けてきた十人くらいの男たちのうちの一人の声だった。


「悪魔族と魔人族ですね」

「半々でいるな」


 敵か味方かは分からないが、少なくとも武器は全員が所持している。警戒に越したことはない。


「ふう、危ない危ない.......すまない、その魔獣は退治しないでやってくれないか。彼らは俺たちの仲間みたいなものなんだよ」

「.......仲間?魔獣がか?」

「ああ。昔、この魔獣の子供の命を、うちの若いのが助けたことがあってね。それ以来、こうして魔界に足を踏み入れようとするやつから、俺たちを守ってくれているんだよ」


 なるほどな。

 魔獣とはいえ知恵はある、心を通わせることも不可能ではないということか。


「最近は、人間しかここに来ようとはしないからね.......まさか、吸血鬼やエルフ、竜人が来るなんて思わなかったから、来るやつは落とせと言ってしまったんだ。すまなかった」


 人間.......やはり、ここにも来るのか。

 まあ、この様子からして完璧に返り討ちにあっているようだが。


「まあ、そういうことなら構わない。私たちは、ちょっと魔界に用があってな」

「そういうことなら、街へ案内するよ」



 ※※※



 案内された街は、結論から言って物凄く大きかった。

 竜人族の街の三倍はあるだろう。やはり、同盟を結ぶ二種族が同じ場所に住まうと、街も自然と巨大化するんだろうな。

 吸血鬼の里(うち)など、比べるにも値しない。


 検問を通り、中に入ると、街の奥にある城に通された。

 こんなにすんなり通していいものかと聞くと、『何故か、あなたにはこうした方が良い気がするんですよね』と言われた。

 おそらく、私の職業『魔王』の効果だろうな。

 これには、イスズ様を信仰する者、あるいは属性が悪属性に偏っている種族を惹き付ける力と、その者たちに対して強いカリスマ性を与えてくれるという力が備わっているらしい。


「便利だねー、『魔王』。あたしも欲しいなー」

「『大賢者』、しかも『大賢王』も間近なやつが何を言ってる」

「いやあ、照れるなあ」


 別に褒めたつもりは無い。


「ところで、レティどこ行ったの?」

「花をつみに行ったぞ」

「ああ、トイレね」


 せっかく隠したのに言うな、デリカシーを日光に焼かれたのかお前は。

 いっそこいつに、この場で常識やモラルを叩き込んでやるべきかと真剣に悩んでいると、


「フィリスさん、フランさん、助けてください!!」


 トイレ.......じゃなくて、花つみに行っていたフルーレティアが、息を切らして部屋に飛び込んできた。


「なんだ、どうした。なにか無くし物か?」

「トイレ詰まった?」

「お前、頼むから一度エルフの村に帰って、デリカシーについて調べてきてくれ」


 なんならティアナに教わってこい。


「そ、そうじゃないんです!.......へ、変態が現れたんです!」

「「はあ?」」


 変態?

 動物の形態が変わることか?

 それともダメな方の意味か?


「動物的な方か、罵倒の意味を込めた言葉か、どっちだ」

「後者です!」

「そうか。こんな所に変態を侵入させるとは、なんとザルな警備だ。一体どんなやつ.............」



「あああん、逃げないでください麗しき美幼女!!その白い髪スーハーさせてしっぽ撫で回させて肌ペロペロさせて!!分かりました、おっぱいで深呼吸させてくれるだけでいいです、さあさあ!!」



「こんなやつです!.......ちょ、何してるんですか、やめてください!!」

「はあはあ、いいじゃないですか、減るもんじゃないし.......うへへ、今どんなパンツ.............へぶっ!?」


 異論の余地もなく完全完璧に純度百パーセントで、ただの変質者のようだったので、迷いなく裏拳を食らわせた。


「フルーレティア、大丈夫か?」

「こ、怖かった.......」

「よしよし、もう心配ないぞ。変態はもう天に召され」

「痛たた.......あっ、こっちにも金髪美幼女が!!嗚呼イスズ様、わたしめのところに、こんな美しいロリを遣わしてくださり、ありがとうございます!!」


 召されてはいなかった。割と強めに攻撃したはずなのだが。

 こいつ.......咄嗟に後ろに飛び退いて衝撃を減らしやがった。

 しかもそれだけでなく、私が拳を()()()に後ろに下がられた。完全に私の動きを予測していた感じだ。

 だが、どうやって?


「いただきまー.............あら、何でしょうか。わたしの美幼女センサーの反応が薄いですねぇ。あなた、ひょっとして男の娘だったり?それはそれで萌えるから全然良いんですけど」

「知るか、お前のセンサーなど!!あと、私はれっきとした女だ!!」

「ではそうですね、既に恋人がいたり、とんでもなくアブノーマルな性癖をその身に宿していたり?」

「まあ、妻はいるが.......って、なんでお前みたいな変質者に、んなこと言わなきゃならないんだ!!」

「あー、それですね。私、ネトラレとか人妻はNGなんですよ。幼妻とか超羨ましいですけど、あなたは守備範囲外なのでどっか行ってもらって結構ですよ。その隣の白い竜人幼女は置いていってください」


 ダメだこいつは。

 もう、頭のどこかがおかしいんだな、きっと。


「フラン、お前の魔法でせめて安らかに眠らせてやれ」

「うん、分かった」

「ちょっ!?初対面の悪魔に向かって、それは無いんじゃないですかねぇ!?」


 フランの面白半分の魔法に追いかけ回されて泣きそうになっている変態を眺めていると、肩を叩かれた。

 振り向くと、私の後ろに隠れていたフルーレティアが、これ以上無いほどの困惑顔を浮かべていた。


「どうした、あの頭のおかしい女はフランが成敗してくれるから、気にしなくていいぞ」

「あ、あの、ですね。その変態なんですけど」

「あいつがどうかしたか?世のため人のため、間違いなくここで仕留めておくべき存在だろ、あれは」


「美幼女に冷たい目で見られながら殺されかける、こんなシチュも悪くないですね」などとすっとぼけたことを言いながら必死に逃げている悪魔族の女。それを追いかけるフラン。

 年齢指定が必要な光景だ。


「いえ、あの。あの変態のステータス、見たんですけど」

「おお、なんだ。職業欄に『変質者』とでも書かれていたか」


 アレなら、そんなんでもおかしくは.......



「いえ、それが.............『知恵神』なんですよ」



 .............はあ?


「冗談はよせ。あれが知恵神?なんの冗談だ」


 知恵神とは、『神級シリーズ』の一つ。

 あらゆる知識を持ち、それを応用し、あらゆる物事に精通する、まさに知恵の神とも言うべき存在が現れた時、その者に与えられるという、頭脳系の最上位職。


 それがあの変態?ありえるか。


「で、ですが、何度見てもそうで」

「その神器、壊れてるんじゃないか?アレを知恵神と言って崇めるやつがいたら、私はそいつを隔離病棟にぶち込むぞ」


 フルーレティアの言葉を信用出来ないでいると、


「お待たせしました。悪魔王様、及び魔人長様がお呼びです」


 先ほど、私のことを案内してくれた男が現れた。


「そうか。行く前に、あの頭のおかしい変態娘を何とかしてくれ。フルーレティアが随分と被害にあったんだ」

「頭のおかしい変態娘.......?それはもしや.......」


 ん?心当たりがあるのか?


「ああっ、やはりヴィネル様!!何してるんですか、あれほどロリショタを追いかけ回すのはやめてくださいって言ったのに!」

「ロリショタを愛でるのは私の使命です。こうやって眺めているだけで、癒しが.......スーーーーハーーーー」

「そんな使命捨ててしまえ、深呼吸をするな!.......おい、なんなんだこいつは!」


 私が男にそう聞くと、


「.............この方は、ヴィネル様。魔界の統治や経理、警備、その他あらゆる頭脳労働のうちの七割を一人で処理する、天才的頭脳を有する.......『知恵神』です」



 ...................出来れば神器の故障であって欲しかったのだが。

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