表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生吸血姫と元勇者、人類を蹂躙する  作者: 早海ヒロ
第五章 魔王誕生編
136/248

【episodeZero】一人目

「フィリスっ.......フィリスっ!!」

「フィリス様っ!」

「ん.............」


 目が覚めると、ベッドの上に寝かされていた。

 どうやら、樹城の中のようだ。目を開けると、涙目のフランと、心配顔のティアナが私を覗きこんでいた。


「フラン.......余計なことをしてくれたな」

「フィリスっ!目覚めた.......!?」

「ああ。おかげさまでな」


 体を起こすと、ティアナはエルフ王を呼んでくると言って退席して、フランも力が抜けたように後ろの椅子に座った。


「本当に.......本当に、死んじゃうかと思った.......!丸二日も起きないから.......」


 フランから感じる魔力が弱い。

 おそらく、ずっと私に回復魔法や精神魔法をかけ続けてくれていたんだろう。

 こいつに斬り落とされたという右腕も既にくっついている。


「.......フラン、苦労をかけ.......」

「フィリス」


 フランは、見たことの無い顔をした。

 これは、そう。怒りの表情だ。


「次あんな真似したら.......殺す」

「次あのようなことをしたら、殺されるまでもなく死ぬと思うが.......まあ、安心しろ。もう、しない」


 フランは怪訝そうな顔をした。

 ついさっきまで絶望していた私が、目覚めた瞬間に元に戻っていたからだろう。


「なあ、フラン」

「.......なに?」


「私は.......『魔王』になることにした」


「.......魔王?なにそれ?」


 フランと、部屋に入ってきたティアナとエルフ王に、私は先ほどあったことを掻い摘んで話した。


「君が寝ている間にそんなことが.......。イスズ様と会話した、か。突拍子もない話だが、君は嘘をつく人には見えない」

「当たり前だ。私は生まれてから一度も嘘をついたことがないのが自慢だぞ」

「三千年経てばリンカが生き返るかー。でも、その頃は私、生きてるかなー」

「エルフの寿命は約千年。普通は死んでいますが.......なんとなく、姉様は生きてるような気もします」

「えへへ、照れるなー」


 多分褒められてないぞ。


「.......それで私は、私についてきてくれる者、あるいは種族を集めなければならない。亜人族はとりあえず後回しだな、まずは魔族.......悪魔族や魔人族の所に行こうと思っている」

「悪魔族とか魔人族かー.......あたしたちエルフでも交流は無いなー。たまに村に観光客が来るくらいで」


 全種族中、最も悪属性の色が濃いあの二種族は、人間が特に嫌っている。

 実際は温厚な者が多い種族と聞いているが。


「それでな.............フラン」

「ん?」

「その.......な。私一人では、正直キツいんだ。リンカもいなくなった。これから三千年、戦争にずっと参加しなければならないと思うと.......気が滅入る」

「そりゃそうだろうね」

「それでな.......フラン.......その.......」


「いーよ」


「へ?.......まだ何も言ってないが」

「ついてきてくれって言いたいんでしょ?一緒に戦ってって。いーよ。あたしがフィリスの部下第一号になってあげるよ」


 フランは無垢な顔を少しも崩さず、そう言った。

 だが、これに焦ったのがエルフ王だ。


「ま、待て待て、フラン!フィリス君の気持ちも分かるが、お前は次期エルフ王だぞ!?この村でまだ学ぶべきことが.......」

「あー、それ。王位ならティアナにあげるよ。元々その気だったし」

「ええっ!?」

「なんだと!?」


 こいつ、やはり親どころか妹にすら言ってなかったのか。


「とにかく、あたしはフィリスと一緒に行くから。後のことはよろしくー」

「ちょ、あの、姉様!?」

「待てフラン、話はっ.......」


 フランは言うだけ言ったあと、私を抱えて、ティアナとエルフ王が何かを言うより早く、


「《転移(テレポーテーション)》」


 さっさと転移してしまった。



 ※※※



「.......ここは」

「逃げるなら、見知った場所の方がいいっしょ?」


 フランが転移した先は、竜人族の街だった。

 かつて、リンカとフランと共に、来た場所だ。

 .......ここにリンカがいないという事実に、胸がズンと重くなる。


「.......なあ、フラン。本当に良かったのか?その.......」

「ん?別にいいよ。あたしはフィリスが力になりたいってのは本音だし.......あと、あの村を出る口実も出来たしね!」


 .......なんて純粋な顔で言うんだこいつは。

 これからケーキを食べに行く幼児のような顔で、『故郷を飛び出す口実が出来た』と語るその姿は、まさしくフランだった。


「なんか、力が抜けたな.......。それで、これからどうする。私としては、すぐに悪魔族たちの所へ向かいたいところなのだが」

「あー、それなんだけどね。もう一人誘いたい子がいてさ」

「誘いたい子?.......おい、まさか」

「そのまさかだよ。門番のおっさん、こんにちは!レティいる?」

「おや、フランさん。団長なら今、お客人と話してますよ」


 レティ?

 .......おお、フルー()()()アか。


「やはり誘いたいやつとは、フルーレティアか」

「そーそー。あれからちょくちょく会ってたんだよ、あたしたち。レティ、あの後すぐに魔法騎士団の団長になって、大出世街道まっしぐらなんだよね」


 あれ以来、彼女とは一度も会っていない。

 さて、どんな成長を遂げているのか.......



「ですから、ワタクシは知らないと言っているでは無いですか!あの方とは一度お会いしたきりですって!」

「本当でしょうね?.......隠し事してたら、この街に雷の雨を降らせてやるからね」

「本当ですよ!そもそも、混在街にいたという話も今聞きましたし.............ああ、なんてこと。知っていたら助太刀に向かったというのに.......」



 .......ん?


「なんか揉めてるねー。後にする?」

「いや待て。この声、聞き覚えが.......入るぞ」


 扉を開けると、そこには.......


「なら、ここに来たら私に連絡を.............あー!?フィリス!!」

「えっ、フィリスさん!?」

「.......やはりお前か」


 部屋の中にいたのは、部屋の主であるフルーレティア。

 見た目は.......あの頃と大差ないな。私と同じくらいの時に半不老を迎えてしまったらしい。気の毒に。

 そして、もう一人.......


「なんでここにいるんだ、レイン」


 混在街で割と長い付き合いだった、妖精女王レインだった。


「ちょっと、やっぱりいるじゃない!」

「い、いえ!ワタクシもフィリスさんが来てたなんて知らず.......」

「あー、一応言っておくが、私が来たのはつい今しがただ」

「やほー、レティ。連れてきちゃった」

「フラン!やっぱりあなたか.......」


 聞いた話によると。

 レインは混在街が落とされたと昨日知ったらしい。

 私の姿が無く、騎士団が全滅していることに気がついたレインは、私が生きていることを悟り、私が前に話したフルーレティアを尋ねたと。


「フ、フィリスさん、お久しぶりです。その.......」

「おお、フルーレティア。久しぶりだな。言葉も流暢になってるし、あの頃から背も.............伸びたな、うん」


 まあ、伸びてないことは無いから、嘘は言っていない。


 私とフランは部屋に入って、これまでのあらましを二人に簡潔に説明した。


「.......そっか。リンカは.......」

「ああ。.......だが、案ずるな。三千年待てば戻ってくる。気長に待つさ」

「それでさー、その魔王としての仕事を、レティにも手伝って欲しいんだよ。お願いできない?」


 フランが聞くが、フルーレティアは難しい顔をした。


「うーん.......手伝いたいのは勿論なのですが.......。ワタクシは今、竜人族の騎士団長、そうそうここを離れる訳にはいかず.......」


 .......まあ、そうだろうな。

 私や、立場をポイッと捨てたフランと違い、彼女はこの街に必要な存在だ。

 そう簡単にここを.......


「じゃあ、アタシがそれ代わるわよ」

「.............え?」


 サラッとそう言ったのはレインだった。


「そろそろ、妖精界を一新しなきゃと思ってたのよね。妖精界の新たな創造には時間かかるから、その間の妖精族の受け入れ先をここにしてくれれば、アタシがこの街守っとくけど」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ