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転生吸血姫と元勇者、人類を蹂躙する  作者: 早海ヒロ
第五章 魔王誕生編
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【episodeZero】定住

過去編で本編より百合百合してるってどーなの。

『混在街ミクス』という街がある。

 平たく言えば、『人間を含めたあらゆる種族が住む街』。

 勿論、この街の住民は魔族や亜人族に対する偏見を持たない、イスズ様を信仰する平穏な者たちだ。

 エルフ、獣人、ドワーフ、魔人、悪魔、おおよそこの世界に存在する種族の、実に八割がこの街には住んでいる。

 かつて存在したという神器を生み出した大国は、あらゆる種族が統一された国だったと言うが、この街はまさに、その縮図と言えるだろう。

 そして最近.......といっても結構前だが、この街に、一組の新婚が引っ越してきた。

 この街には元々いなかった、吸血鬼族。魔族の中でも極めて珍しい種族だ。


 .......まあ、私とリンカのことなのだが。



 ※※※



 混在街ミクスの住宅街、そこにポツンと建つ小さな一軒家が、現在の私とリンカの住まいだ。


「ふあ.......おはよう、リンカ.......」

「おはよー、フィリスちゃん。もう八時だよ?大丈夫?」

「問題ない.......今日は、仕事ない.......」


 当然だが、八時は『午後』八時だ。吸血鬼だからな。


「夜ご飯食べる?」

「あー.......いや、血だけでいい。体だるいし.......」

「昼間は楽しかったね♡」

「.......言うな.......」


 こいつ.......今日は()()()無かったのに、人のベッドに蛇みたいに入ってきやがって.......!


 あの日.......リンカに告白された日、その日にもう、私とリンカは、その.......結婚した。

 まあ、言質取られてそのまま流された感じだったが、別にいいかと思って。

 その後、旅を続け、やがてこの街に辿り着き、二人で相談して、ここに定住することにした。

 思えば、私が吸血鬼の里を出た理由は、『もっと他の種族を見てみたい』という理由であり、この街ならその大半が叶うのだ。少なくとも、この街の全てを把握するまでは、ここにいてもいいだろう。


「むふふー」

「.......いきなりどうした、変なやつだな」

「だってさー、フィリスちゃんと結婚して、一緒に住むって、子供の頃からの夢だったんだもの!それが叶ってるんだなーって.......」

「.......その話、もう五百回くらい聞いたぞ」


 比喩ではなく、本当に。

 三日に一度は聞いている。.......ん?この計算だと、私たちが結婚してから、四年くらい経ってることになるのか。


「えー、そんなこと言わないでよー。それだけ愛されてるってことなんだよ?フィリスちゃん.......フー」

「ぴゃあああっ!?み、耳に息を吹きかけるなと、何度言えば分かる!?」

「弱いもんね♡」

「やかましいわ!.......まったく!私はちょっと散歩してくる!」

「あ、これ、携帯用の血ね」

「ありがとう!」



 ※※※



「まったく、リンカのやつ.......結婚してから、黒い部分を隠さないから困る.......もう少しこう.............美味いなこの血」


 どこの誰のものだろうか。

 獣のものではないのは確かだが。

 後でリンカに聞いてみるか。

 .......あれっ、私はなにか怒っていた気がするのだが.......なんだっけ?.......まあいいか。


「ふう.......ごちそうさまでした。さて、ゴミ箱はどこに.......」

「あれ?フィリスじゃん。今日は嫁と一緒じゃないの?」

「ん?.......レインか」


 辺りを見渡していると、上から小さな影が降りてきた。

 黄緑色の長い髪に、特徴的な蝶の羽。妖精族。

 こいつはレイン・フェアリーロード。苗字が示す通り、生まれながらにして妖精族の女王。

 こんな見た目だが、天候を自在に操作する能力を持つ最強の妖精。しかも私よりも遥かに歳上だ。


「久しぶりだな。最近はこの街にあまり顔を出してなかっただろう」

「妖精界の方で、ちょいとトラブルがね。エルフに力借りて事なきを得たけどさ」


 エルフか。懐かしいな。あのバカ王女は元気だろうか。


「なんか、やたらと強くて血気盛んな王女がいてさ。そいつが一気に解決してくれたんだよね。代わりにうちの妖精が暫くそいつのオモチャにされたけど、まあ安い代償ね」


 元気なようだ。


「で、あんたはこんな夜に.......ああ、吸血鬼族だから.......こんな早くからなんでブラブラしてんのよ。ついに嫁に愛想尽かされたの?」

「お前、口に気をつけろよ。この距離なら、お前の天候操作より、私がお前をにぎりつぶす方が早いからな」

「やれるもんならやってみなさいよ、変なことしたら、街のど真ん中でかまいたちみたいな風を起こして、あんたの嫁の服切り刻んでやるからね」

「ジョークに決まってるだろ性悪妖精、謝るからやめてください」


 街中で嫁のストリップショーも勘弁だが、それ以上に、原因を作ったのが私とバレた際の説教が怖い。


「でさ。アタシ今日暇なんだけど、あんたの家でご飯食べてっていい?」

「まあ、リンカに聞いてみて、良いと言われたらいいんじゃないか?」

「分かった。.......そういやあんた、仕事は?」

「今日は無い」


 現在私は、この街で冒険者をしている。

 冒険者と聞こえはいいが、まあ、平たくいえば何でも屋だ。

 私は強いから、魔獣退治を始めとした荒事に付き合わされることが多く、いつの間にかこの街でもトップの成績を納めているため、やたらと指名依頼が多くててんてこ舞いになるのが常なのだが、今日は珍しくオフだ。


「ふーん。じゃあ、アタシは先にあんたの家行ってるから、用済ませたら帰ってきなさいよ。あんたがいないとリンカがご飯出さないし」

「そうか。リンカに明日までには帰ると言っておいてくれ」


 明日までにはとは、人間で言うところの『午後には帰る』だな。


「はいはい。じゃねー」



 ※※※



「ただいま」

「おかえりー、フィリスちゃん。レインちゃん来てるよ」

「知ってる。.......変なことされなかったか?」

「あんた、アタシをなんだと思ってんのよ」


 全員が席につき、深夜ごはん(人間で言うところの昼ごはん)が配膳された。


「んー、美味しい。リンカはさすがね」

「えへへ、ありがとう」

「本当、フィリスにはもったいないくらいだわ。こいつ捨ててアタシのところに来ない?」

「.......おいレイン、それ以上バカなことを口走ったら、あらゆるものを犠牲にしてでも妖精界を焼きに行くからな」

「あんた、なんだかんだ言ってリンカのこと大好きよね」

「えへへぇ.......私も大好きだよ♡」

「う、うるさい!私は別に.......」

「んー?聞こえないなあ?」

「んぐっ.............まあ、嫌いでは.......」

「フィリスちゃん?ハッキリ言わないと、朝ごはんに玉ねぎ入れるよ?」

「うえっ.............分かったよ、好きだよ.......」

「はい、よろしい♪」

「.......アタシ、何を見せられてんのかしら」


 食事も終わり、暫く三人で食休みをしていた。

 うむ、やはりリンカのごはんは美味い。正直、胃袋をガッツリ掴まれてる感が否めないな。

 とか、考えていると、


「ん.......?」


 なんだか、体から異変を感じた。

 なんだろう.......体が、熱い?

 自覚すると症状はドンドン進み、やがて頭もクラクラしてきた。風邪.......ではないな、現在の私のレベルは81、病気に対しては高い耐性がある。時期でもないこの季節に、そう簡単に風邪など引くわけがない。

 だとすればなんだ?.............待て、前にもこんなことがあったぞ。確かあれは.......

 .......まさかっ!?


「リンカ、お前っ.......!?」

「.......えへへ、気づいちゃったかあ」


「お前っ.......また薬盛ったな.......!?」


「.......てへ♡」

「てへじゃない!」

「ちょっとリンカ、あんた何してんの!?.......しかも今、『また』って言った?前科があるの!?」


 レベルが上がっても、毒耐性は上がっても薬剤への耐性は上がらない。

 だから、飲みすぎなければ毒ではない、『そういう薬』も私には効くわけで.......


「おいレイン、お前、何とか出来ないか.......!」

「無理.......そもそも妖精族は、状態異常、病気、薬剤、そういうもの全てに完全耐性がある種族だから、そういう対策いらないのよ」

「はあ.......はあ.......はあ.......ぐぅ、この腹黒め.......まだ深夜だというのに.......」

「普通は深夜にヤるものなんだけどね。.......諦めた方が良いと思うわよ。暫くしたら効果も切れるだろうし。.......じゃあリンカ、ごちそうさま」

「うん、またねー、レインちゃん」

「待て!私を見捨てる気か、レイン!?」

「.......ゴメン」


 本当に逃げやがった!

 あの妖精、いつかシバいてやる!


「ふふふふ.......今日はお仕事ないんだよね.......?だから、良いじゃん.......。何も考えずに、私と遊ぼう?」

「ふー.......ふー.......ふー.......ああっ、クソ.......」

「ああ.......抵抗したいのに出来ない、顔を真っ赤にして悔しそうにしてるフィリスちゃん、可愛い.......!さ、昼間の続きしよ?」

「ま、待てリンカ.......私はあ.......うああ.......」


 あー.......ダメだ、頭がいよいよ働かなくなってきた。

 ああ、もういいか.......抵抗は無理そうだし.......。


「リンカ.......!」

「ふふふふ.......フィリスちゃんったら、気が早いんだから.......ベッド行こ?」

「うん.......」



 ※※※



 目が覚めると、昼前だった。

 あれからどうやら、随分寝てしまっていたようだ。

 こんな時間に目が覚めてしまうとは.......。


「んぅ.......フィリスちゃあん.......えへへぇ.......」


 横には、私の腕にしがみついて寝てるリンカがいる。

 .......体の熱さは消えていた。


 この腹黒幼なじみめ。

 .......いや、まあ。こいつに魅了された私も、大抵変わり者なんだろうがな。


「.......とりあえず、薬は今のうちに見つけて処分しておこう」

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― 新着の感想 ―
[一言] ノクターンでのリンカ様とフィリス様のイチャコラお待ちしております
[一言] 過去編の百合を超えられるか楽しみですね。 ノクターンで後日談ありがとうございます、ありがとうございます!楽しみが増えてうれしいです!
[良い点] 面白い〜 [気になる点] もうお腹いっぱいなので、本編はよ(ノシ 'ω')ノシ バンバン [一言] 本編はよ(ノシ 'ω')ノシ バンバン
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