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転生吸血姫と元勇者、人類を蹂躙する  作者: 早海ヒロ
第五章 魔王誕生編
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【episodeZero】告白

 竜人族の街に戻り、「我が国でとんでもないことになってしまった」と竜皇から謝罪を受けた後。

 私とリンカ、フラン、フルーレティアは、明日には別れるということもあって、しばらく話し込んでいた。


「いやいや、一時はどうなるかと思ったよー!まあ、リンカも助けられたし、誘拐犯はフィリスが殺ったし、終わりよければ.......なんだっけ」

「『すべてよし』だアホ」

「そうそれ!」


 .......なんでこんなアホが『大賢者』なんだ。

 まあ、こいつがいなければリンカを助けられなかったし.......よしとするか。

 なんだかんだ、憎めないやつだしな。


「ところでフルーレティア、お前は仕事は良いのか?」

「りゅうおうさまに、きょうはやすんでよいといわれました」

「そうか。お前にも随分と助けられたな、ありがとう」

「い、いえ.......」


 お、照れてる照れてる。

 こいつは、私があの誘拐犯共を潰している間、リンカを結界で守っていてくれたからな。小さいのに出来たやつだ。


「みんな、本当にありがとう。私がポンコツだったせいで、迷惑かけちゃってごめんね」

「何を言ってる、リンカは悪くない。悪いのはあの人間共だ」

「そーだよ!リンカが謝る事じゃないって!」


 思えば、同年代のリンカ以外の女子とこんなに話したのは初めてだ。

 まあ、フルーレティアは幼女だし、フランも若干年下だが、長命種にとってこの程度は誤差だ。

 人間や獣人のような短命種で言うところの、『誕生日が数ヶ月違う』程度の感覚だな。


 結局、関係ないところで話が盛り上がったりして、私たちは夜明けまでずっと話していた。

 まあ、途中でフルーレティアはダウンしたが。



 ※※※



 街の正門前で、私たちは竜人族の連中に見送られていた。

 まあ、囮だったとはいえ、竜人の子供を救ったことには変わりないからな。感謝くらいされるだろう。


「みなさん、おせわになりました。しゅぞくをだいひょうして、おれいをいいます」

「硬っ苦しいこと言うな、フルーレティア。また来るぞ」

「.......はい」


 元気が無いな。随分と私たちに懐いてくれたものだ。

 ふむ、こういう時は、何か渡しておいてやるのが良いのかもしれない。『これを私だと思って』的な感じで。

 だが、なにかやるものなどあったか?

 そう思い、ポケットを探ると、


「.......ん?」


 中からペンダントが出てきた。

 これは.......昨日、あの誘拐犯野郎から徴収した『天眼アルス』か。

 あの男が使っていたとはいえ、道具に罪は無い。便利そうだから使おうと思っていたが.......まあ、良いか。


「おい、フルーレティア。これをやるから元気出せ」

「え?.......いただけるのですか?」

「ああ、お前にやる。大事にしろよ」

「.......あ、ありがとうございます!」

「肌身離さず身につけておくんだぞ。何せ『神器』だからな」

「じんぎ.......?よくわからないけど、たいせつにします」


 うんうん、素直な可愛いやつだ。

 後ろの竜人族が、『神器』と聞いてポカンとしてるが、気にしないでおこう。


「では、またおまちしております。フィリスさん、リンカさん、フランさん」

「うん、またねー!」

「絶対!また来るからー!」

「ああ、体に気をつけてな」


 そうして、私は竜人族の里を後にした。


「さてさて.......んで、フィリスにリンカ。二人はこの後どーすんの?」

「なんかねー、色んな種族が一緒に住んでるって凄い街があるって聞いたんだ!そこに行こうって、フィリスちゃんと話してたの!」

「ああ。.......フラン、なんならこのまま一緒に来るか?」


 フランはエルフの王族、だがこいつはそれに全く拘っていないように見える。

 だからこそ、このまま一緒に来るというのもありだと思ったのだが、


「んー.......行きたいけど、あたしはやめとくよ」


 フランは苦笑しながら言った。


「むぅ.......残念だ。お前にも一応、王族としての義務を果たそうという気持ちがあったのだな」

「え、そんなのないけど」


 ないのかよ。

 そこは嘘でもあると言えよ。


「だって、エルフ王の座はティアナにあげる予定だし。でもさ、それまでにティアナがちゃんと成長してくれるか心配じゃん?パパがエルフ王のままだと、あたしがこのまま行っても無理やり連れ戻されるかもしれないし。だったら、ティアナが王様になってから事情を説明して、ゆっくり旅した方が楽しそうじゃん!」


 .......一応、こいつも考えて生きてるんだな。


「分かった。じゃあまあ、ティアナが王になったという話を聞いたら、迎えに来てやるか」

「そうだね。フランちゃんともここでお別れかあ.......寂しいなあ.......」

「あははは、きんじょうのわかれじゃないんだから!」

「今生の別れな」

「そうそれ!」


 .......こうして、私たちとしばらく一緒に旅をしていたフランは、ここでエルフの村に戻り。

 私たちの旅は、再び二人きりになった。



 ※※※



「最近は昼夜逆転の生活だったせいか、夜に眠くなるな」

「そうだねえ、これじゃ普通の種族みたいだね」


 フルーレティア、フランと別れたその日の夜、私たちは焚き火で暖をとっていた。

 最近は、フランと時間を合わせることが多かったからな。朝起きて夜に寝るという、吸血鬼の里では、見張り役以外には考えられない生活をしていた。


「でも、案外このままで良いのかもよ?夜に起きて朝に寝る種族って、吸血鬼族と悪魔族くらいだし」

「.......まあ、旅をする分には良いのかもな」


 最近はレベルも上がってきて、睡眠に対する耐性も付き始めたから、私としては別に数日くらい寝ずに行動しても良いのだが。


「リンカ。昨日は本当にすまなかった」

「もう.......またそれ?フィリスちゃんが謝ることじゃないって」

「いや、謝らせてくれ。私は里を出る時、リンカを守ると誓ったのに、この体たらくだ。怖い思いをさせてしまった。ごめん」

「っ.......いいの、フィリスちゃんが助けに来てくれたんだから、それで.......」

「だから」


「私は、一生リンカを守る。二度と怖い思いなんてさせない。ずっと一緒にいる。絶対にもう離れない。.......約束するから」


「――――っ!そ、それって.......その.......」

「?リンカ、どうした?顔が真っ赤だぞ。暑いのか?焚き火、消すか?」

「え?.......あ、うん。お願い.......」


 ふむ、火力が強すぎたか。

 私は焚き火の火を消し、辺りは真っ暗になった。

 まあ、吸血鬼にとって暗闇など昼間と同じだが。


「すまない、配慮が足りなかったな。こういう所も気をつけないとな」

「で、その、あの、フィリス、ちゃん.......さっきのは、その.......こ、告.......」

「ん?私はちゃんと、リンカを守るぞ。まあ、リンカが結婚とかをしたら、私は離れなければならないかもしれないがな!」

「.........................え?」


 私は、天才では無いのかもしれないが、まあ空気は読めるのだ。

 リンカにだって、良い人が見つかるかもしれない。そんな時は、そいつにリンカを任せ、そっと離れるべきだ。

 まあ、相手のやつは、最低でも私より強くて頭も良い、パーフェクトなやつでないと私は認めないがな!


「世界は広い。お前は器量も顔も性格も良いから、きっと素晴らしい相手が.......」

「.........................ない」

「ん?」


 今、なにか.......



「もうっ、我慢出来ない!!なんで!?なんでそうなるの!?さっきの、完全に私に対する告白とかプロポーズの類じゃん!!それなのに、なんで私がどっかのお嫁さんになる話になったの!?」



 .......うえっ!?

 なんか、リンカがキレた!?

 わ、私がなにか.......


「そもそも、里でもあんっなにアピールして!!旅にまでついてきて!!そこでもフィリスちゃんが私を離さないように色々頑張って、レベル低いなりに努力して!!一生懸命にフィリスちゃんが私に惚れるように努力して、漸くそれが実ったのかと思ったのにっ.......なんて紛らわしいこと言うのかな!?バカなの!?フィリスちゃんは自分のこと天才って言ってるけど、フィリスちゃんってやっぱりバカなの!?なんで私の気持ちに気づかないの!?ただの幼なじみってだけで、楽しそうってだけで、危ない旅になんかついてくるわけないじゃん!!このおバカ!!」


 な、なんだ?

 なんでこんなに怒ってるんだ、リンカは?

 それに、よく分からないことも結構言ったぞ。

 私を惚れさせるとか、努力が実ったと思ったとか、バカとかバカとかバカとか.............


 呆然としている私にリンカは詰め寄り、私の肩を掴んで、そのまま体重をかけてきた。

 ステータス的には私はリンカより遥かに上のはずなのに、何故か私は力が抜けて、そのまま倒れ込んでしまった。

 今の状態は、私がリンカに押し倒されている状態だ。


「お、落ち着けリンカ!私がなにかしてしまったか!?あ、謝る!私がなにか誤解させたのもバカなのも謝るから、ちょっとまずは.......」

「ちがう!!なんで気づかないの!?ここまで私がカミングアウトしてるのに、こんなに顔真っ赤にしてるのに、なんで私の気持ちが分からないの!?」


 そ、そんなことを言われても!

 待て、冷静になれ!何故リンカは怒った!?

 リンカの様子が変わったのは、えっと、あの、どこでだったか.......

 思い出せ、そしてちゃんと謝って.......



「私はっ.......フィリスちゃんの事が好きなんだってば!!」




 .......へあ?

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