表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生吸血姫と元勇者、人類を蹂躙する  作者: 早海ヒロ
第五章 魔王誕生編
127/248

【episodeZero】制裁

 間に合った。

 その事に私は、心の底からの深い安堵と、リンカを攫った目の前の人間に対する、深い憎悪、二つの感情に包まれた。


 フランが、『転移魔法の痕を見つける』などという、私が示したなんの根拠もない仮説を立証してくれたおかげで、ここまで来ることが出来た。

 いや、まさか本当に出来るとは思ってなかったのだが.......。

 今はまあ、それはどうでもいい。リンカを救えたのだから、それで良い。

 次は.......私から、私のリンカを拐かそうとした不届き者共に、罰を与えてやる番だ。


「あー!いた!ちょっとフィリス、転移した瞬間に走り出すとか、きょーちょーせいってものが.......ああっ、リンカ!」

「ごぶじのようでなによりです!」

「フランちゃん.......フルーレティアちゃん.......ごめんね、迷惑かけて.......」

「何言ってんの、リンカのせいじゃないから!」


 そうだ、リンカに夢中で、この二人のことをすっかり忘れていた。

 丁度良かった、私の蹂躙に、リンカを巻き込む訳には行かないからな。


「フラン、フルーレティア。リンカを連れて、ここから少し離れてろ。こいつらは私が片付ける」

「えっ!?ちょ、独り占めは良くないと思うんだけど!?あたしだって.............あー、りょーかい。あたしたちは下がってれば良いのね.......分かったから、そんな怖い顔しないで、ね?」

「ひぃ.......こわい.......」


 .......そんなに恐ろしい顔をしていたのだろうか。

 していたのだろうな。少なくとも、この天才二人が慄く程度には。


「.......いくよ、フルーレティア。リンカも。.......ありゃダメだ、ブチギレてるよ」

「わ、わかりました」

「フィリスちゃん.......気をつけてね」


 言われなくても分かってるさ。

 気をつけながら.......こいつらをぶっ殺す。



 ※※※



「.......ちぃ、作戦失敗かよ.......あのガキがいれば、二、三年は遊んで暮らせる金が手に入ったはずなのによ!」


 リーダー格の男が吠えるが、私の耳には届かない。

 私の心は、今、憤怒で満ちていた。

『目の前の連中を、骨も残さず皆殺しにする』。それ以外は考えられなかった。


「.......フラン・フォレスターと一緒なら勝機なんざゼロだったが.......お前一匹なら、なんとかなるかもな。この際、お前を潰してあの変態に売り飛ばすのも.............っ!?」


 男が言い終わる前に、私は飛び蹴りを食らわせた.......のだが、間一髪で避けられた。

 .......今のを躱すか。素人ではなさそうだな。


「ちっ、お前ら!お前らもやれ!」

「「「「「「「おう!!」」」」」」」


 男の声に反応して、周りの七人も各々に武器を持つ。

 だが、それがどうした。

 雑魚如きが、私の邪魔をするな。


「《力場斬撃(フォーススラッシュ)》」


 純粋な力を結集した、無属性の斬撃を放つ魔法。

 私が唱えたその魔法は、狙い違わず二人の人間を真っ二つにした。


「ぐぎゃっ.......!」

「げぼぁっ.......!?」


 .......何気に私は、『人を殺す』という行為をしたのは初めてだった。

 魔獣やら獣やらは何体も狩ってきたが、人を狩るということはした事がなかった。

 だが、不思議だ。不気味な程に何も感じない。

 人を殺した。それも二人も。なのに、なんの罪悪感も、達成感すら感じない。


 ああ、そうか。私がこいつらを殺すのは、当然の『義務』だからかもしれない。

 私のリンカを、私にとってこの世で最も大切な存在であるリンカを、怖い目に遭わせ、あまつさえあの綺麗な肌を傷つけようとした。

 .......全員皆殺し程度では、腹の虫が収まらない。

 少なくとも、あのリーダー格の男は、なるべく苦しんで死んでもらわなければ。


「ぐっ、やっぱり、化け物か.......!お前ら、連携をっ.......」


 だから、周りの雑魚は邪魔だ。消え失せろ。


「《多重化付与(エンチャント)業火砲(フレアブラスト)》」


 一万度近い業火が、周辺全てをを包み込み、リーダー格の男以外の命を、


「ぐぎゃああああ!!」

「熱、あ、熱いよぉぉぉぉ!!!」


 容易く奪いさった。



 ※※※



「ち、畜生.......このまま死んでたまるかあああ!!」


 リーダー格の男は、私に背を向けて逃げた。

 逃がすわけあるか。

 リンカを怖がらせた主犯、絶対に殺す!!


「《氷槍(コールドランス)》!」


 私が放った魔法は、しかし、


「ふんっ!」


 軽く体を捻った男に避けられた。

 .......なんだ今のは。あの男、こちらも見ずに躱した。


「フィリスちゃん!そいつ、『天眼アルス』って神器を持ってる!!気をつけて!!」


 神器だと?

 あの九十九のアイテムか。その一つをこいつが?


「はっ!そういうことだ!!こいつがある限り、てめえは俺に攻撃を当てることなんて出来ねえんだよ!!」


『天眼アルス』.......文献で読んだことがあるな。

 千里眼や読心眼、果てには未来視やステータスの盗み見も出来る、恐るべき神器。

 なるほど、私の魔法を避けられたのは、未来視の力か。


「.......で、それがどうかしたか?」

「あ?なんだと?」

「未来が見える。心が読める。遠くがわかる。なるほど、凄まじい性能だ。.......だが、その強力な神器に対し、お前は大して強くない。宝の持ち腐れとはこの事だな」

「なんだと、てめえ.......!」

「その程度、こうすればどうにでもなる.......」

「あ?.......っ!?!?ま、待て!!」


 未来視で先読みしたか。

 だがもう遅い。


「《弾丸の雨(レインバレット)》」


 魔力の塊を雨のように降らす魔法が、広範囲にばらまかれた。

 いくら未来が見えようが、無数の弾丸など、余程の力を持つ戦士でなければ避けられない。

 そしてこの男は、その枠には入っていない。


「ぐああああああ!!!」


 しばらくは避けていたが、そのうち一発、また一発と当たり.......とうとう足を貫かれ、その場に倒れ、弾丸の餌食となった。


 雨が降り終わっても、男はまだ生きていた。

 当然だ、生かすように手加減したのだから。


「ぐおあああ.......!て、てめえ.......!許さ.......」

「うるさい」

「ぐぎいいいいい!!」


 品のない男だ。

 こんなやつが、リンカの柔肌に触れたのかと思うと.......頭が爆発しそうな程に怒りが込み上げてくる。


「.......私は言ったよな。『楽に死ねると思うな』と。リンカを痛めつけようとした報い.......その体で受けろ、クズが」

「ひっ.......ま、待て.......」

「待つか。.......《激痛の波動(ウェイブオブペイン)》」

「ひぎゃあああああああ!!やめ、やめて.......やめてくれええええええ!!!」



 .......私が男に死ぬことを許したのは、ここから十分後だった。



 ※※※



「フィリスちゃん.......!」

「リンカ!.......ああ、無事でよかった.......!悪かった、お前から目を離して!」

「ううん、フィリスちゃんは悪くないの。私が弱いから.......」

「いやいや、私が!」

「ううん、私が.......」

「.......ゆずりあいもよいですが、そろそろもどりませんか?」


 フルーレティアのツッコミを受けて、私たちは正気に戻る。


「そ、そうだな。.......リンカ、もう怖い思いはさせない。安心しろ、ずっと私が守ってやる」

「っ.............そういうの、反則.......」

「ん?何か言ったか?」

「......なんでもないよ。帰ろ、みんな」

「そうだな。フラン、頼むぞ」

「もー、人遣い荒すぎだから.......まあいいけどさ。《転移(テレポーテーション)》!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ