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転生吸血姫と元勇者、人類を蹂躙する  作者: 早海ヒロ
第五章 魔王誕生編
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【episodeZero】光

リンカ視点。

「うあっ.......!」


 私が連れ込まれたのは、変な森に隠れた地下室。

 竜人族の街からどのくらい遠いのかは分からないけど、転移魔法を使ってたから、きっと凄く遠いところだ。


「しばらくここにいろ」

「.......私をどうする気なの」


 こういう時は『舐められたら終わりだ』って、フィリスちゃんが言ってた。

 だから気丈に振る舞う。

 けど、私の強がりも効かず、目の前の男は、いつの間にか仲間を七人も周りにはべらせて、下卑た笑みを浮かべた。


「まあ、ありきたりな話さ。売るんだよ、お前をな」

「.......吸血鬼族は魔族だよ?人間に売るのは無理じゃないかな」


 魔族を敵視して、手当たり次第に殺せって言う人が多い人間に、吸血鬼の需要があるとは思えなかった。


「ああ、普通はそうだ。吸血鬼族なんて汚ねぇ種族、普通は処刑ゲームにくらいしか使えねえ」


 凄く腹が立つ言い分だけど、我慢してここは聞いておこう。


「だがな、人間は如何せん数が多くてな。数が多いと、所謂『物好き』ってのが出てくんのさ。例えば、下等な魔族やら亜人族やらを好んで抱きたがる、変態貴族とかな」


 背筋がゾッとした。

 つまり私はこれから、その貴族に売られるってことなんだろうか。


「元々お前には目をつけてたんだよ。エルフの里で誘拐でもしようかと考えてる時に、お前とあの金髪のガキ吸血鬼を見た時からな。吸血鬼族は珍しい、先方も高値で買い取ってくれるはずだと思ったわけだ」


 .......そんな前から。

 けど、おかしい。そんな前から私たちを監視してたなら、私はともかく、フィリスちゃんが気づかないわけが無い。


「だが、厄介だったのはあの金髪だ。化け物みたいに強えじゃねえか。おまけにエルフ族最強の魔術師、フラン・フォレスターまで出てきやがった。これでも俺はS級冒険者、多少腕に覚えはあるが、さすがにあの二匹と殺り合うのはゴメンだ。だから、アイツらを別のところに誘き寄せて、その隙にお前を捕まえることにした。お前を部屋に置いていくかは賭けだったが.......いやいや、苦労したぜ」

「.......どうやって、フィリスちゃんに気付かれずに私たちの監視なんてしてたの」

「フィリス?あの金髪か?.......そりゃ簡単だ」


 男はニヤニヤしたまま、自分の首筋にかかっているペンダントを私にみせてきた。

 綺麗なペンダントだけど、先っちょに付いているのは目玉みたいなフォルムで、少し怖い。


「こいつは『天眼アルス』。あの『神器』の一つさ」


 耳を疑った。

 神器は、数千年前に栄えていた超文明大国によって作られた、恐るべき性能を持つ九十九のマジックアイテム。

 たった一つ手に入れるだけで、一騎当千の力すら得られると言われる、神域の力なのだと、フィリスちゃんが教えてくれたことがあった。


「こいつの効果は、『視覚に対する絶対的なバフ』。その中には、千里眼の力も含まれている。こいつで、お前のツレの感知範囲外からずっと見てたってわけだ」


 それで、フィリスちゃんやフランちゃんすら気づかなかったのか。

 相手が神器を使ってくるなんて、さすがのフィリスちゃんも予測していなかっただろうな。


「さてさて.......じゃ、おしゃべりは終わりだ。ここからはお楽しみタイムだ」

「.......お楽しみ?」


 私を犯そう.......って話じゃないよね。

 私は魔族だから、そうしようと考える人間なんてごく少数だと思うし。


「さっき話しにでてきた変態貴族だがな。魔族を抱く趣味っつーか、正確には『ボロボロの魔族を無理やり』ってのがお好みらしくてな。つまり、ボロボロじゃねえとダメなんだわ」

「っ!.......だから、私を拷問したりして、傷物にしようってこと?」

「そういうことだ。その為にこいつらを呼んだんだよ」


 その言葉を待っていたと言わんばかりに、男の周りにいた七人の男が、ジリジリと近寄ってきた。


「.......こ、来ないで.......」

「ぶひゃひゃひゃ!魔族とはいえ、見た目はいいから、痛めつけんのが楽しみだぜ」

「本当にいいんすか?後でやめろってのは無しっすよ?」

「構わねえ。ただし殺すなよ?」

「やめて.......!」


 そして、男たちの手が、私に伸びてきた。

 汚い。嫌だ。私を好きにしていいのは、世界で一番大切な、『あの人』だけなのに。



 フィリスちゃん。

 私が好きで、好きで、たまらなく大好きな幼なじみ。

 昔から、弱かった私を守ってくれた、大切な女の子。

 里の男の子からバカにされた時は守ってくれた。

 将来を期待されてたのに、早くにレベルリミッターに至ってしまった時も、ずっと傍にいて慰めてくれた。

 自由奔放で、何するか分からない、そんな危ない子だけど.......それでも私は、子供の頃から、ずっとフィリスちゃんを愛してた。

 でも、言えなかった。女の子同士なんて、普通じゃないって、分かってるから。

 きっと言ったら、フィリスちゃんは離れてしまう。

 だからせめて.......ずっとそばにいたいって、思った。


「助けて.......フィリスちゃん.......」


 私の願いを踏みにじるように、男の手が私に.......



「っ!?伏せろ!!」



 リーダー格、私を攫った男が叫んだ。

 直後、地下室の上面が吹き飛んで、轟音と共に太陽の光が入ってきた。


「畜生、なんだ!?」


 直後、上が開いた地下室に、誰かが飛び降りてきた。

 太陽の光に慣れていない吸血鬼の私は、目が眩んで、影しか見えなかった。

 誰か分からない人が飛び込んできたということに、私の心を一抹の不安がよぎった。

 けど、それは杞憂だった。


「.......おい、貴様ら」


 だって。


「貴様らか。リンカを攫ったのは」


 この声を聞いただけで、私はいつだって安心出来たから。

 やっぱり.......来てくれた。


「フィリスちゃん.......!」

「リンカ.......無事か」

「うん!」

「そうか。少しだけ待ってくれ、今コイツらを片付ける」


 眩んだ目じゃ、今どうなっているのか、よく分からなかった。

 けど、フィリスちゃんの声がするだけで、私は凄く満たされた気持ちになる。


「てめえ.......どうやってここを!」

「.......これから死ぬ貴様らに、その話は必要ないだろ」


 大好きだよ、フィリスちゃん。



「貴様ら.............私のリンカを奪っておいて.............楽に死ねると思うなよ」



 フィリスちゃん、凄く怒ってる。

 こんなフィリスちゃんの怖い声、聞いたことがない。


 .......けど、『私の』リンカって言ってくれたことに、心が跳ね上がったことは.......今は、私だけの秘密。

幼なじみ百合って、凄く良いですよね(迫真)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 【幼なじみ百合って、凄く良いですよね(迫真)】 (>_<)
[良い点] リンカさんがフィリスに好感があったことから、フィリスから離れることはないなと安心しました。 [一言] なるほど、リンカさんもそっち系なのですね。
[一言] よきかな(成仏)
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