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転生吸血姫と元勇者、人類を蹂躙する  作者: 早海ヒロ
第五章 魔王誕生編
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【episodeZero】誘拐

「おーー!ベッドふっかふかーー!!」

「.......少し落ち着けフラン」


 通された部屋は、なかなかに豪勢な部屋だった。

 一応仮にも王族であるフランが、ベッドダイブする程度には良い部屋だ。いや、こいつは元々こういうやつなだけか。


「あ、あはは.......えっと、フルーレティアちゃん。ありがとうね、案内してくれて」

「いえ、これがワタクシのしごとですから。しつれいします」

「あ、待って!.......これ、私が作ったお菓子なんだけど、食べる?」

「!.......い、いえ、しょくむちゅうですので.............うう.......でも.......い、いただきます」


 顔を赤らめながらも、香りに勝てなかったのか、リンカが作ったケーキを口にする、フルーレティアという竜人族の天才幼女。

 ハムスターみたいに食ってるな。不覚にも少し可愛いとか思ってしまった。


「.......なあ、お前、その歳で騎士団入りしているということは、上位竜人なのか?」

「モグモグ.......そうです、ワタクシは.......モグモグ、じょういモグモグ、りゅうじんぞくなのモグモグ」

「いやいい、食い終わってから喋ってくれ」

「.......ゴクン。そうです、ワタクシはじょういりゅうじんぞくなのです。れきだいさいねんしょうって、いわれました」

「ねーねーフィリス、じょういりゅーじんぞく?って何?」

「上位竜人族は、竜人族の種族進化形態だ。竜人族は、種族進化が比較的簡単に起こる、珍しい種族でな。生まれた時は下位竜人。そこから強くなるにつれ、中位竜人、上位竜人に進化していく」

「へー、つまりその子は、そんなちっちゃいのに一番すごいとこまで進化してるんだ。凄いね!」


 正確に言えば、一番ではないんだがな。

 上位竜人が寿命を終える時、一定以上の強さを保持したままであれば、極稀に『古竜人』に進化することがあるらしい。

 するとその者は全盛期の肉体を取り戻し、数千年の寿命を得るとか。

 まあ、竜人族の歴史の中でも、片手で数えられるほどしか、その領域に到達した者はいないそうだが。


「歴代最年少で上位竜人に進化か.......竜人族の九割が中位竜人で生涯を終えると言われているのに、なかなか大したものだな」

「それほどでも。えっと.......ちちうえやははうえ、ほかのみなさんが、わたしのためにじんりょくしてくださったおかげです」

「.......おい、なんか棒読みだったぞ今。言わされてる感があったぞ今。『こう言われたらこう言え』みたいなカンペがあるんだろ」

「.......きのせいです」

「フラン、リンカ、今の聞いてどう思った?」

「え、えーっと.......」

「間違いなく、何か思い出したことをそのまま口に出してる感じだったね!」


 フランの言葉に、フルーレティアは顔を真っ赤にした。

 .......演技力が無いの、気にしてたのか?

 なんだか、からかいがいのありそうな娘だな。

 もう少しイジって遊んでやろうかと思っていると、



「失礼します!!た、大変です!フルーレティア様はここにっ.......いや何をなさってるんですか!?」



 その前に、一人の竜人族が、慌てたように入ってきた。



 ※※※



「き、緊急事態ゆえに、お客人の前で失礼致します!.......街の子供が、何者かによって誘拐されたとの情報が!!」

「ゆうかい.......!?」


 休息もつかの間、竜人族の男から告げられたのは、下位竜人の子供が数人、連れ去られたという話だった。


「ゆ、誘拐って.......誰が!?」

「それが..............どうやら誘拐犯は、人間のようです」


 人間。魔人族のような力も、エルフのような魔力も無く、長命種でもなく、八十年足らずで死ぬ脆弱な種族。だが.......


「.......まあ、竜人族を拐かそうと考える種族など、連中以外にいないだろうな」

「え、どーゆーこと?たまに里に人間は来るけど、結構優しい人が多いよ?」

「それは恐らく少数派.......女神イスズ様を信仰する派閥の人間だ。人間は、その九割以上が、『女神ミザリー』という、生と慈悲を司る女神を信仰している。.......その女神の教義に、『人間とは神が作りし絶対の種族であり、その他の種族は下位の存在である』みたいなのがあってな。ミザリー教の連中は、エルフや竜人といった種族始めとした他種族を見下している。.......特に、属性が悪属性に偏っている、我ら吸血鬼族や魔人族なんかは、魔獣と似たような扱いらしい」

「へー.......あ、だからパパ、『人間には気をつけろ』ってよく言ってたんだ」


 エルフのような、善属性に偏りがあるが、人間ではない種族は、人間の間では『亜人族』とか呼ばれているそうだ。人間の亜種とでも言いたいんだろう。

 まあ、そんなミザリー教に入らず、イスズ様を信仰し、他種族との共存を望む人間も存在するが.......既に、イスズ様は人間の間で邪神扱いをされていると聞くので、かなり淘汰されているのが現状だな。


「話を戻そう。それで、誘拐がどうとか言うのは?」

「は、はい.......街で遊んでいた五人の子供が、忽然と姿を消したそうです。そして.......付近に、その五人とは別の匂いが紛れていた、と」

「そのにおいが、にんげんのものだったということですか?」

「そうです」


 竜人族の嗅覚は、獣人族に次いで世界で二番目に鋭い。情報は確かだろう。


「わかりました。ワタクシがいきます!」

「はい、竜皇様も、そのようにと.......」

「じゃ、あたしたちも行こっか!」


 .......このバカエルフ娘は何を言い出すんだ。


「おいフラン、これは竜人族と人間の問題だ。私たちが首突っ込んでも、良いことなどないぞ。.......なあリンカ」

「で、でも.......子供たちは、助けなきゃ!」


 お前もか.......。


「.......リンカ、よく考えろ。相手は人間だぞ?基礎ステータスの時点で竜人族に及ばない種族だ。竜人族の騎士団が動くなら事足りるだろ」

「そ、そうかも、しれないけど.......」

「でもさでもさー。子供を誘拐するってことは、ある程度計画は立ててるはずだよね?結束力が強い竜人族の子供をさらったらどうなるかなんて、あたしでも分かるし。あっちはあっちで竜人族の対策してるかもじゃん。.......でも、あたしたちはエルフと吸血鬼だから、その対策があっても抜けられるかもだよ?」


 .............たしかに。


「.......フランのくせに、頭を回すとは生意気な」

「ちょっ、どういう意味!?」

「まあ、そういうことなら向かうのもやぶさかではないが.......だが、これは竜人族の問題というのも事実だろう。よそ者の私たちが首を突っ込んで良いものか?」

「そ、そうです!ワタクシたちのもんだいに、おきゃくじんをまきこむわけにはいきません!」


「あ、それは大丈夫です。その.......竜皇様が、『客人が来たがったら手伝ってもらいなさい』と」

「えっ」

「えっ」



 .............あの竜皇、この伝令の男に私たちの前で説明させたのはそういう理由か!!

 おかしいと思ったんだ、緊急事態とはいえ、客人の前で種族の問題について話すなど!!

 こっちには、好奇心旺盛なバカ(フラン)優しい善人(リンカ)がいるから、誘拐なんて起きたら一緒に行くと言うと予測して.......。

 あいつ.......温厚なフリして随分と腹黒いじゃないか、竜皇。


 .......リンカが行く気満々じゃ、私も行くしかないんだよ.......!

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― 新着の感想 ―
[良い点] まっ、待ってくれ!頭が追いつかない!! こんな純真そうで真面目っぽいフルーレティアたんを某魔人は催眠して堪能したと!?なんてクズなんだ!そりゃトラウマにもなる!! エッチなこと教えたら、『…
2023/05/11 22:20 退会済み
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