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転生吸血姫と元勇者、人類を蹂躙する  作者: 早海ヒロ
第五章 魔王誕生編
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【episodeZero】横取り

「ぬおおおおーー!」


 猪の魔獣の突進によって、私はすんごい勢いで吹っ飛ばされた。

 結界魔法で咄嗟に防いだが、それでも威力は殺しきれず、後退.......するわけにもいかず、近くの木を掴んでそのまま一回転、飛び蹴りを食らわせた。


「グオオオオオオオオ!!!」

「.......ぐう、あまり効かないか」


 一応、付与魔法と身体強化魔法を重ねがけした一撃だったのだが.......。


 分かったことだが、こいつは異様に防御・魔防が高い。攻撃力は大したことないくせして、とにかく固くて攻めあぐねる。


 しかも.......


「グオオアアアアアア!!!」

「きゃあ!?」

「っ、行かせるか!!」


 こっちは、()()()()()だ!!


 私は、こいつをこれ以上、一歩たりとも前に進ませる訳にはいかない。

 後ろには、リンカと依頼にあった薬草の群生地がある。リンカを吹っ飛ばされるのも、群生地を踏み荒らされてもう一度探す羽目になるのも真っ平だ!

 故に、魔法も指向性を持つもの限定、炎系は論外、ただ殴るだけでも、衝撃等に気を配らなくちゃいけない。


 リンカを逃がすことも考えたが、こいつが群れで行動するタイプである可能性を考慮すると、私の近くにいてもらった方が良い。最悪、群生地は諦める。

 何しろ、リンカは弱いんだ。昔は伸びしろが良かったが、どうやら戦闘に関する才能がまるで無かったらしく、僅かレベル二十五でレベルリミッターに至ってしまった。


「フ、フィリスちゃーん!大丈夫ー!?」

「問題無い!お前は近くで伏せていろ!」


 .......とはいったものの、マジでどうするか。

 勝つのは簡単だ、炎系の魔法で包み込んでやれば良い。

 けどそれだと、群生地が燃えるし森が燃える、ついでに私にも引火して最終的にはエルフの村も燃えかねない。

 そうなれば、いくら気の良いエルフでも、私をボコボコにするくらいじゃ許してくれないだろう。


「グルアア!」

「うおっ.......《雷球(ライトニングスフィア)》!」

「グオオオオ!!」


 ダメだこりゃ、効いてはいるが、致命傷には全く到ってない。

 .......あまりこの手は使いたくなかったが。


「これでいくか.......《身体強化(フィジカルブースト)―打撃強化・内部到達》」


 .......敵とはいえ、殴る感触って結構嫌なもんなんだよな。

 だからあんまり好きじゃないんだ、身体強化魔法。

 話によると、数十万とか数百万人に一人しか持ってない、物凄い魔法らしい。流石天才な私だ、そんな力も持っているとは。これは『賢者』も近いな。


「さあ、行くぞ猪野郎。私に楯突くとどうなるか教えてやる!」

「フィリスちゃん、頑張れー!」

「わはははは、そうだ、もっと声援を送れリンカ!さあ、行くぞ!この私の拳を」


「《魔防低下付与(エンチャント)氷連槍(コールドファランクス)》どかーーん!!」


「グギャアアアアアアアアアアア!!!」


 私が色々と最後まで言い終わる前に、どこかから飛んできた魔法が、目の前の猪を貫いた。

 氷で出来た数十本の槍が、一斉に猪に突き刺さり、猪は断末魔の叫びを上げて倒れ、そのまま絶命した。



 .............えー。



「っしゃー!魔獣仕留めたー!さっすがあたし!あ、そこにいる二人大丈夫?あたしが来たからにはもう安心だかんね!!」


 そう言って出てきたのは、エルフ族の娘だった。

 長命種同士は、なんとなくの感覚で相手の年齢の目安がわかる。この娘は.......十代後半、私より多少下程度だろうか。

 .......私のカッコつけを恥ずかしいものにしてくれやがったのはこいつか。


「おいお前、私の獲物を横取りとは.......」

「わー、助かったよー!フィリスちゃん一人じゃ危なかったし、本当にどうもありがとう!」

「あははは、でしょでしょ?あたしにかかればこんなもんよ!!」


 .............。

 .......なんか怒れるムードじゃなくなってしまった。



 ※※※



「わあっ、こんなに.......ありがとう吸血鬼の二人、助かっちゃった!あ、これお礼ね!」


 そう言われて渡された、薬草の謝礼金を手に、私とリンカは宿に戻っていた。


「.......なんか、元気な子だったね。あの後すぐに消えちゃうし、お名前も聞けなかったよ」

「私としては、あの猪を横取りされたのが少しばかり腹立たしいが.......まあ、礼を言えなかったのは心残りだな」


 本当になんだったんだ、さっきのエルフは。

 明らかにアホそうな雰囲気だったが.......だが、魔法の実力は確かだった。

 さっきの魔法、《氷連槍》は、氷系統の高位元素魔法だ。

 しかも、それ一本一本に《魔防低下》を付与して、段階的に魔防を低下させ、後続の魔法が効きやすいようにしていた。

 しかも、あれだけの魔法を使ってまったく息切れを見せていなかったところを見ると、おそらく相当の魔力と技術を持っている。

 正直、癪に障るが.......戦ったら私が負ける可能性が高い。


 モヤモヤが晴れぬままに、宿についてしまった。

 まあ考えても仕方があるまい、どうせもうすぐ立つことになっている。

 そう考え、今までの思考を振り切るように勢いよく扉を開き.......



「あ、おっかえりー!ねえねえ、さっきのお金もらった?貰ったよね?じゃあお酒!お酒飲み行こう!!」



 .......。


「あれぇ?さっきの子だ!さっきはありがとー!」

「いえーい!あ、そんな可愛い顔してたんだー!さっきは魔力だけで二人を識別してたから分かんなかったんだよね!あたしの魔法凄かったでしょ!」

「うん凄かった!こう、氷がズドドッ、て.......」

「おい待てリンカ、何ナチュラルに会話を進めてるんだ。.......お前、どうやってこの部屋に入った?」

「え?そりゃまあ、まずそこの鍵穴に水詰めるでしょ?で、それを凍らせて合鍵作って、付与魔法で硬くしてから、ガチャッと」


 紛うことなき犯罪者じゃないか。


「おいリンカ、警官を呼んでこい。罪状は家宅不法侵入だ」

「ちょ、ちょい待って!?あたし、二人の恩人だよね!?お巡りさんは無いんじゃないの!?」

「あんな猪、私一人でも何とかなったし、仮にならなかったとしてもお前がしたことは犯罪だアホ!」

「でも、フィリスちゃんも似たような方法で、里で合鍵を作ってムカついた人の家に入って落書きとかしてたよね?」


 リンカ、無用な茶々を入れるな。


「まあまあ、フィリスちゃん。この子も悪気があったわけじゃなさそうだし、良いんじゃない?ここは助けて貰ったことでトントンってことで」

「.......リンカがそう言うなら、まあ良いが」


 仕方が無い、私の見せ場を奪った件については、別の方法で報復してやろう。


「ふう、焦ったあ.......流石に、月に二回もお巡りさんのお世話になるのは勘弁だよ」

「お前今なんて言った?もう一回捕まってるのか!?」

「うん、お店に出てた美味しそうな梨があってさ。お腹空いてて、それを食べたらお金払えって言われたけど、お金なんて持ってなかったし。それでお巡りさん呼ばれて、それを蹴散らしたら今度はパパとママまで出てきて、お巡りさんに加勢しだしてさー。結局、えっと.......せってーざいと、こーめしーぽーぼーがい?だっけ?」

「.......窃盗罪と公務執行妨害か?」

「そう、それ!.......で、捕まっちゃって。パパがお巡りさんに謝り倒して、次の日に出してもらったけど、すんごい怒られた。アハハ」

「おいリンカ、こいつ、思ってた十五倍くらい馬鹿だぞ」

「あ、あはは.......」



「そ、そういえばさ!貴方のお名前、まだ聞いてないよね?なんて名前なの?」

「ん?.......前に妹から聞いたんだけど、人に名を聞く時は自分から名乗るもの、らしーよ?」


 こいつ.......。


「.......フィリス、吸血鬼族だ」

「私はリンカ・ブラッドロードだよ。私も吸血鬼族。よろしくね」

「フィリスとリンカ、覚えた!じゃあ私も名乗るね!」



「私はフラン!ハイエルフのフラン・フォレスター!仲良くしよーね!」

この子の存在忘れてる人は、登場人物紹介、もしくは「吸血姫と元勇者と最古参の過去」を参照。



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