吸血姫とファン
「《爆炎の矢》」
―――ドゴオオオオオオオン!!!
指向性を伴う爆破魔法を私が放つと、議事堂みたいな所は一気に崩れ去った。
けど、悲鳴とか怒号は聞こえない。
「.......中のヤツら、逃げたか」
多分、お偉いさん連中は一足早く転移陣で聖神国だろうね。
対になる術式を転移陣に入力すれば、誰でも発動出来るし。
逃がしちゃったのは面倒だけど、まあ遅かれ早かれの問題でしょ。
「リーン様!」
「あれ、確か伝令役の.......どうしたの?」
飛んでた私に屋根から声をかけてきたのは、私よりも歳下で、伝令役の魔人族の女の子。
「ご報告致します。首都制圧、七割が完了。残った人間の総数も順調に減っており、逃した者は今の所なし。グレイ様が数人の強者とぶつかりましたが、既に殲滅しております」
「残りの三割はどの辺?」
「ここから八時の方向の、歓楽街周辺でございます」
いや、首都ほぼ全滅してんのに歓楽街残ってるってどうよ。
多分、「どうせ死ぬならここで一発」とか考えてるヤツいるよ絶対。
「じゃあ、私もそっち向かいますか.......」
「いえ、リーン様には別件が。この首都の騎士団数百人が、戦争から帰還し、ここに戻ってきているとの報告が入っております。フェリア様は、リーン様にそちらを相手してもらいたいとおっしゃっておりました」
「あー、了解。でも数百人しかいないのか.......やる気しないなー」
「そうは言わず、どうか.......」
「うそうそ、大丈夫だよ。ちゃんと仕事はするから。伝令ありがとうね」
「.......いえ」
素っ気ないなー。
まあ、私って魔族の中でも割と残忍な方だし、怖がられたりしても仕方が無いのかなあ。
さて、じゃあ向かいますか。
(ああああ、リーン様かっこいいいい!!優しくて残忍で冷静で残酷な所がたまらないよぉぉおおおお!!!あぁああああ本当にここに配属されてよかったあああ!!リーン様にありがとうって言われちゃったああ!戻ったら、ファンクラブの皆に自慢してやらなきゃ!!)
※※※
「うわああああ!うわああああああ!」
「な、なんで.......なんで『鬼神将』がこんなところにいるんだよおおおお!?」
「ひ、怯むなあ!数で押せば、四魔神将であろうと.......かぺゃっ」
「うわー、弱っ.......いや、《強酸の煙》に大半が耐えただけマシか.......でももういいや、《闇の爆裂》」
.......ほい、殲滅完了。
街に戻ると、もう殆ど終わっていた。
歓楽街方面に向かってみたけど、殆どの店が吹っ飛んでるし。
.............あ、やべ。あかんことしたまま死んでる二人がいたわ。嫌なもん見た。
「よっと。お疲れ様です、グレイさん、フェリアさん」
「.......戻ったか.......リーン.......」
「流石、仕事が早いな。こちらも粗方終わったぞ」
「ありゃ。.......じゃあ、仕事は終わりですね。私は戻りますけど、お二人はどうしますか?」
「.......俺は.......この後も.......仕事がある.......」
「私はもう少し、ここを念入りに片さねばならん。リーンは一足早く帰って、魔王様にご報告を」
「分かりました」
※※※
魔王の間にて、私は魔王様と、後ろに控えるヴィネルさんに報告をした。
「そうか。流石に、四魔神将が二人もおると早く仕事が済むのう。御苦労じゃったな」
「ありがとうございます。私の次の出陣はいつに?」
「四日後じゃな。聖神国の忌々しい教会騎士団が、複数人の聖十二使徒を引き連れて我が軍とぶつかりつつある。そっちに向かっとくれ」
「かしこまりました」
「他に何かあるか?無いならば、下がって良いぞ」
「.......えーと、個人的なことで一つ宜しいでしょうか?」
「む?どうした、ヨミと喧嘩でもしたか?味付けに文句でも言ってしまったのか?洗濯物のたたみ方で説教を受けたか?」
「お風呂の後に浴槽を洗うのを忘れたんですかねぇ?」
「なんでそんな家庭的な問題ばかりなんですか、あとなんで私が怒られたこと前提なんですか!.......いえ、そうではなくてですね。私って、その.......怖がられてますか?」
「.......は?なんじゃと?」
キョトンとする魔王様。同じく首を傾げるヴィネルさん。
だけどこれは聞いておきたいところだ。
「その.......私ってほら、人間に対して容赦が無いじゃないですか」
「自覚はあったんですねぇ」
「そりゃまあ。.......で、その姿が、いくら敵に対するものとはいえ、おっかないのかなー、とか、思ったり」
「ああ、そういうことか」
そうだとすると、若干落ち込む。
まあ、舐められるよりかは.......
「心配いらんぞ。主は割かし好かれておるし、信頼もされとる。それどころか熱狂的なファンクラブまであるぞ」
良いのかもしれないけど.............なんて??
「.......ファンクラブ??」
「うむ」
「誰の?」
「主のじゃ」
「.............なんで?」
「まず容姿じゃな。主は黙っておれば相当な美少女じゃ。それに性格。主は魔族に対しては非常に柔和じゃし、それに胸打たれた者もおるらしい。加えて、それに対して人間には容赦が無いというギャップに萌えた.......という者もおるとかなんとか」
マジで?
「.......ま、まあ、ファンクラブと言ってもそこまでの加入人数はいないでしょう?」
「いえ、この前二千を超えたらしいですよ。魔族の人口は総合で百万程度ですから、五百人に一人はリーンちゃんのファンクラブに加入している計算になりますねぇ」
マジで!?
「ちなみに、今回リーンちゃんの元に配属した伝令役の娘がいるでしょう。あの子はファンクラブの幹部らしいですよ」
「マジでぇ!?!?」
嘘だろおい、あの娘が私に素っ気なかったから怖がられてんのかなーとか思ったのに、あれもしかしてただの照れ隠し!?
「ちなみに初代ファンクラブ会長はヴィネルじゃぞ」
「え、なんで言っちゃうんですか」
「またこの人!?」
私がまだロリの時に作ったんだ絶対!
で、成長しちゃった今は嫌だから退いたんだ絶対!
「まあ、今の私の推しはサクラきゅんですからねぇ」
「推しって言うな、推しって」
「まあまあ、良いではありませんか。嫌われるよりは好かれた方が良いでしょう?私は十七歳なんて興味ありませんが」
「.......我が側近ながら最低じゃな、主」
「変態にも限度ってあるでしょ.......こんな人が幹部第一位.......」
「とはいえ、私は未だにリーンちゃんの事は大好きですよ?愛でる方面では一部を除いてありませんが、いつも応援しています」
「そ、それは、ありがとうございま.............一部を除いて?」
「はい、その慎ましやかな胸とか」
.......。
.............。
...................へえ。
「なるほど、ヴィネルさんは自殺志願者だったんですね。そうならそうと言ってくださいよ、私が介錯ぐらい務めますから.......ねえ?」
「.......あ、やば。もしかして気にして.......」
「ヴィネル、主.......死んだな。今まで御苦労じゃった」
「もうそのレベル!?だ、大丈夫ですよリーンちゃん、貧乳だって一定の需要が.......」
「《雷球》」
「あっぶなああ!?」
「私だって分かってますよ、貧乳な事くらい!お母さんはあんなにっ.......ティアナさん並に、メロン服に入ってるんじゃないかってくらい大きかったのにぃ!!しかも、ヨミもあんな男勝りなボクっ娘なのに、結構普通に成長するしいいぃぃぃい!!!なんで私は育たないんだああああ!」
「(隔世遺伝.......)」
「リーン、半殺しまでなら許可する」
「魔王様っ!?」
参考までに言うと、
ヨミはC
ティアナさんはG
ヴィネルはE
リーンと魔王様はAです。