吸血姫と国落とし2
イスズ様の眷属となり、幹部会議でヨミの出身地が判明してから、二週間後。
私が転移してきたのは、ハルトレン共和国.......次に私達が落とす国の首都。
他の街とかはって?以前からちょっとずつ崩していって、この二週間で残りを全部滅ぼしたけど?
イスズ様の加護で強化された私は、結界なんか火力ゴリ押し出来るし。
まあ勿論、私だけの力じゃ無いけどね。
「ふぅ、到着っと.......ありゃ、私が最後ですか」
「.......遅かったな.......リーン.......」
「何かあったかと心配したぞ。どうしたんだ」
「なんでもないですよ。ただ、チェックしきれてなかった村を一つ発見したので、そっちを滅ぼしてただけです。すぐ終わると思って連絡を入れなくてすみませんでした」
今回の作戦は、幹部第五位の『荒廃将』フェリアさんと、四魔神将第四席、『武神将』グレイさんが一緒だ。
「.......無事だったなら.......良い.......」
「そうだな。まあ見ての通り、現在は結界を破壊中だ。先程からずっと、結界術師や高威力魔法を使える術師を集めているのだが.......」
首都の方を見ると、なるほど、既に結界の破壊作業が始まっている。
.......けど。
「.......ビクともしてませんね」
「流石は.......聖神国から.......近い国だ.......」
「聖神国に近ければ近いほど、結界は強固になる。分かりきっていたことだ」
メルクリウス聖神国は、ミザリー教の総本山であり、人間にとっては最も守るべき場所だ。
聖神国の神都自体が超強固な結界で守られているとはいえ、周囲も固める必要はある。
故に、メルクリウス聖神国に近ければ近いほど、結界は強くなっていく。なんて面倒な。
「どうしますか?このままじゃ、破壊しきれませんよ?というか、破壊する前に首都の連中の避難が終わってしまったりしたら、蹂躙の意味が半減しますし」
「そうなのだ。なので、速やかに結界を破壊してしまいたいのだが.......そういえば、今は何時だ?」
「午後四時、ついでに日の入りは五時半です。付け加えるなら、今日は十日夜の月、強化率は五倍です」
「言いたいことを察してくれて助かる。イスズ様の加護に加え、月の加護によって強化されたリーンと、それにグレイ殿がいれば、火力であの結界を破壊出来るのではないか?」
「.......出来ることには.......出来るとは.......思うが.......」
「それでも時間はかかりますね。三十分くらい」
「三十分で済むのか.......。本当に恐ろしいな、四魔神将は。では、それでいこう」
「.......異論.......無し.......」
「私もそれで良いです」
私の月の加護の発動が合図だ。
フヒヒヒ、楽しみだなぁ〜。
※※※
―――ドゴオオオオオオオン!!!
午後五時半。
その音で、「どうせ破壊なんて無理だろう」とでも言わんばかりに、こちらを舐めていた人間の兵士達が、血相変えて飛び出してきた。
勿論、音の発生源は私とグレイさんだ。
「なっ、なん.......なんだああっ!?」
「お、落ち着け!我が国の結界は無敵だ、魔族如きに打ち破れるものでは無い!だからっ.......」
「あ、あいつらだ!あいつらが.......げえええっ!?あ、あ、あれは.......!」
「何処だっ!?.......いたぞ、あいつ.......ら.......は.......リ、リーンとグレイ!?『鬼神将』と『武神将』がいるぞぉ!?」
「な、な、な、なんだとおおおっ!?!?冗談だろ、四魔神将が二人もいるなんて.......ひ、引け!引けええ!急いで伝令だ、呑気に荷物まとめて避難準備させてる場合じゃない!!急いで国民を城の転移陣へ!!」
あーあ、そんな声が聞こえてきたよ。
無駄無駄、たった三十分で避難出来る人数なんてたかが知れてるし。
確かに多少逃がすかもしれないけど、どっちみち転移先は、最後に潰す予定のメルクリウス聖神国の神都だ。誤差の範囲だよ。
「.......リーン.......お前は.......上から.......魔法で.......破壊しろ.......」
「分かりました。グレイさんもお気をつけて」
「.......心得ている.......」
まあ、一方向から攻撃しても、壁に囲まれているこの街じゃ、混乱が伝わらないかもしれないからね。
上から魔法をぶっぱなして、直に見せてやった方が、人間共はパニくるでしょ。
そして、パニックが起きれば起きるほど、私達の仕事はやりやすくなる。
「さて、いくか.......《超爆炎》」
《爆炎》の上位互換魔法が、共和国の結界のてっぺんに炸裂した。
.......んー、微妙。ヒビは入ったけど、そんだけ。しかも修復が始まってるし。
ここは高威力魔法を連続で叩き込むしかないなー。
「う、うわあああああっ!?」
「な、なんだよ今のっ!?助けてくれぇ!」
「ちょっと押さないでよ!」
「おい、こっちに来るな!!」
あははは、醜ーい!
これを聞けただけで、こっちに来た甲斐があったってもんだよ。
でもまあ、聞きすぎても耳に毒だし、さっさと終わらせちゃおう。
「《穿つ闇》《電撃の雨》《重力爆裂》《水圧砲》《獄炎の槍》《鉄の殴打》《威力増加付与・衝撃波》」
.......これでも壊れないか。
まあ、一応流石と言っておこう。
五倍化して、平均ステータス『二十五万超え』の私の魔法をここまで耐えきるとは。
グレイさんは.......まだっぽいけど、割と同じくらいの破壊度だな。
流石、全ての体術に精通する武人。物の『壊し方』を知ってるんだろうね。
私もグレイさんに教わって、結構体術の腕は上げてきているつもりだけど、こういう時は魔法にものを言わせてゴリ押しする方が早い。
さあ、まだまだ。
早く破壊して、中の人間を全滅させてやらなきゃ。
※※※
―――パリイイイン!
おっ、壊れた。
所要時間二十七分、まあまあのタイムだね。
グレイさんもほぼ同時に壊して.......うん、空いた穴の大きさに結界が耐えられなくなって決壊した。結界だけに。
自分で思ってなんだけど、面白くないな。
「け、結界が.......」
「そんな馬鹿な!?」
「い、急げ!急いで逃げ.......」
「総員、突撃!今が好機だ、再び結界が用意される前に突入するのだ!」
「「「うおおおおおおお!!」」」
フェリアさん達が突入した。
さて.......じゃあ、私は私の仕事を果たしますか。
私とグレイさんの仕事は、人間の数を減らしつつ、強者を殺すことだ。
西側はグレイさんに任せて、私は東側に行きますか。
「そ、総員怯むな!騎士団が到着するまで、我らで足止めを.......」
「《強酸の煙》」
「.......え?」
広範囲に、骨まで溶かす程に強力な酸の煙を発生させる魔法。
レベル60を超えていなければ抵抗出来ない程に強力な酸が、駐在の兵士ごと、パニックに陥っている民衆を溶かした。
「.......この魔法、超強いんだけど.......グロすぎるから苦手なんだよね」
骨まで溶け、血が溢れ出てぐじゅぐじゅになった人間というのは、人間嫌いの私すら、結構きついものがある。
まあ、手っ取り早いのは違いないし、文句は言うまい。
「さてと.......ん?」
.......今の魔法、二人だけ抵抗したな。
あっちか。
そっちに向かうと、冒険者風の格好をした二人の男。
レベルは.......100には至ってない程度かな。
「ぐっ.......!なんてことを!」
「落ち着けあんちゃん、あいつは『鬼神将』リーンだ。四魔神将の中で最も無慈悲で残酷と言われる女.......この女なら、あれだけのことをしても不思議じゃねえ。冷静さを保て」
私、そんな評価受けてんのか。
いや合ってるけども。
「初めまして、私の魔法に抵抗するなんてやるじゃん。どうやって殺して欲しい?あ、自殺してもいいけど?」
「.......どっちも、ごめんだ!」
「待てあんちゃ.......」
「えっ、無策に突っ込んでくるとか.......《超熱光線》」
「がばっ.......!?」
うわ弱っ。
まあ、そりゃそうか。
人間の中で私と良い勝負出来るのなんて、聖十二使徒の第三位より上くらいだもの。
「.......で、あんたは?」
「.............こりゃ無理だな。出来るだけ苦しくないように殺してくれると助かるんだが」
「.......潔いいね。まあ、手を煩わせなかったってことで、願いは叶えてあげるよ」
というわけで、首を吹っ飛ばしてもう一人も殺した。
.......さて、次はどうするかな、と。




