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吸血姫と元勇者と加護、そして発見

皆様のおかげで、100話を突破することが出来ました。

ありがとうございます!

 イスズ様からの干渉から丸一日が経った頃。

 私とヨミが、久しぶりの書類仕事でヒィヒィ言ってた時。


「.......リーン。ボク、帰っていい?」

「逃がさないからね。まだそっちの山があるから、少なくともそれ終わるまでは」

「うえ.......ところで、なんでヴィネルさんいないの?」

「今、魔王様にめっちゃ説教受けてるよ。なんでも、サクラ君にセクハラしたんだってさ。『成長しちゃったリーンちゃんやヨミちゃんと違い、いつまで経っても成長しない彼に可能性を感じすぎて、自分を抑えられなくなりました』だって」

「なにやってんのあの人?.......じゃあ、この量を二人で捌けと?」

「最近、魔王軍張り切ってるからねー。メルクリウス聖神国に乗り込むのも近いんじゃないかって話だし、私達四魔神将が随分と国を滅ぼしたし。人類亡びのカウントダウンは始まってるんだよ、多分。.............それに比例して、書類も膨れ上がるけどね」

「.......帰っていい?」

「そんなことしたら、ヨミの大事にしてる神器二本を馬房にでも放り投げてくるからね」


 諦めたヨミと一緒に、書類を片付け始めた。

 .......ヴィネルさんは変態だけど、この量をいつも一人で捌いてるんだなあ。

 これからはもう少し優しくしてあげよう。


 .......そう思っていると、



 ―――パンパカパーン!



 という、安っぽいファンファーレが聞こえてきた。


「.......何、今の」

「んー、でも、なんか聞き覚えがあるような.......」


 ああ、あれだ。

 五歳の時、ステータスが授けられた時の音。


『おめでとうございます!加護の定着が完了しました!これより貴方は、邪神の眷属となります!ステータス画面を確認してみてください』


 ああ、やっぱり。

 もう丸一日経ったのか。


「『ステータス』」



 ***



 リーン・ブラッドロード  吸血姫  Lv182

 職業(クラス):復讐王

 状態:健康・邪神の加護


 筋力:53460

 防御:44730

 魔力:55280

 魔防:47220

 速度:51870


 魔法:元素魔法(全)・空間魔法・精神魔法・闇魔法・回復魔法・付与魔法



 ***



 とんでもない事になってるわ。

 私の平均ステータス、ついさっきまで3万前後だったのに、5万超えとか。

 ステータスが五割増になるってのは聞いてたけど、イスズ様の力怖っ!


「.......ヨミ、そっちはどう?」

「なんか凄いことになってる」

「だろうね.......ちなみに私はこんな感じ」

「.......うわあ、これは。月の加護も含めたら、本当に敵いなくなるんじゃない?」

「かもね。.......ヨミは?」

「こんな感じ」



 ***



 ヨミ 人間 Lv176

 職業:剣王

 状態:健康・邪神の加護


 筋力:82170

 防御:78690

 魔力:76390

 魔防:75960

 速度:79930


 魔法:身体強化魔法



 ***



 やだ、うちの子ヤバい。

 平均7万を軽く超えて、筋力に関しては8万オーバーとか。

 前は5万を少し超える程度だったのに。


「うわっ.......いよいよ人外じみてきたね、ヨミ」

「えへへへ」


 いや、別に褒めたつもりは無いんだけどね。


「イスズ様には感謝しなきゃね。こんだけの力貰ったんだし、ちゃんとしっかり、人類を滅ぼさなきゃ」

「そうだね!」

「じゃあさしあたって、この書類全部片付けなきゃね。具体的には今日の幹部会議までに」

「.......そうだね」


 そう、今日は幹部会議があるんだよねー。

 あと.......六時間か。無理くね?



 ※※※



「つ、疲れた.......」

「これから会議って思うと憂鬱.............」

「あらー?お二人共ー、大丈夫ですかー?」

「ナツメさん.......大丈夫に見えます?」

「いえー、全然ー」

「ヴィネルさんさえいれば、私達がこんなことには.......」

「.............後で斬ろう」

「荒れてますねー」


 何とかギリギリ、書類全部片した私達は、魔王様が繋げてくださっていた扉に全力ダッシュして、なんとか間に合った。

 いやでも、ここから会議は.......嫌すぎる.......。


「あら?お二人共、随分お疲れですねぇ?」

「あ、ヴィネルさん。ヨミ、斬って」

「了解」

「いきなりなんですか!?」


 ノコノコ現れるとは、いい度胸じゃんヴィネルさん!

 私とヨミの体力、ついでにサクラ君へのセクハラ、その他もろもろで天誅を下してくれるわっ!


「ま、待ってください!書類任せちゃったのは悪かったですから勘弁してくださいちょっ、本気ですか!?私、頭脳派だから戦闘力低いんですよあれヨミちゃんなんかいつもより速っ、ああああ!」

「.......何をしておるんじゃ主らは」

「あ、ま、魔王様!助けてください、ヨミちゃんがあ!」

「主の自業自得じゃろう。サクラにセクハラなんぞしなければ、そんなことにはならんかったんじゃ。見よ、サクラが怯えてるじゃろうに」

「あ、怯えてるサクラきゅん.......良いですね!」

「ひいっ!?」

「ヨミ、斬れ。死なぬ程度にな」

「御意」

「ちょっ!?」



 ※※※



「あ、頭掠めた.......めっちゃ剣が頭掠めた.......死ぬかと思った.......」

「さて、使いものにならんヴィネルはほっといて、じゃ。幹部会議を始めるぞ。久々に四魔神将を含む全幹部が集まったんじゃ、有意義なものにしていこうではないか」


 その後、今後の方針、軍の動かし方、魔術師の配置、結界に関して、聖神国の動き、エトセトラ。

 途中から復活したヴィネルも含めた幹部全員で、数時間に渡って話し合い、終わったのは深夜近かった。


「では、次に滅ぼす国は、ハルトレン共和国。指揮官はリーンとグレイ、それにフェリア。これで良いな?」


 全員が頷く。


「よし.......こんなところじゃろう。他に、何か意見等がある者はおるかの?」

「魔王様ー、よろしいですかー?」

「むっ、ナツメか。どうした」

「意見というかー、情報なんですけどー」


「ヨミちゃんのー、出身地と思われる村のー、正確な位置をー、見つけましたー」


 .......その言葉に、幹部は全員目を見開き、ヨミの方を向いた。

 ヨミはというと.......一瞬キョトンとしたけど、直後に、悪い笑みを浮かべた。


「.......確かか?」

「はいー、間違いないはずですー。先日ー、四年前にミィアの言ってた位置にー、偵察を送り込んだのですがー、断片的に手に入れた情報や条件にー、全てあてはまっていましたー」


 現魔王軍幹部第八位、『大海将』ナツメ・メイルストームさんは、戦闘能力もそれなりに高いけど、その偵察、ひいては情報収集能力を評価されて、魔王軍幹部に就いている。

 人魚族の王女であり、全ての海に愛されているナツメさんは、地面だろうが空だろうが、どんな場所でも、そこを『海と定めてしまう』という、デタラメな力を持つ。

 つまり、自らの配下である人魚や魚人、なんならただの魚も、空飛べるし地面も()()()という、人魚とはなんぞやという恐ろしい力を持っているのだ。

 その力を利用し、手のひらサイズの範囲を海と定める。その中に魚やプランクトンなんかを入れて、各地にばらまき、情報収集をさせるという、もう殆ど反則技を用いて、情報を集めてくれている。

 そんなナツメさんが持ってきた情報なら、ほぼ間違いはないだろう。


「.......今まであの村を滅ぼさなかったのは、あの村を滅ぼし、魔王軍とヨミの関係性を疑われるのを避ける為じゃ。じゃが、もうそろそろ良いじゃろう。どうせ、勇者討伐の折に、ヨミの存在は知らしめてやる予定じゃ。勇者殺しの前あたりに、滅ぼしてしまっても構わんじゃろう」

「.......じゃあ!」


「ああ。存分にやってしまえ、ヨミ。好きに暴れろ。蹂躙しろ。.......妾らも、しっかりバックアップしてやるからの」


「.......ありがとう、ございます!」


 いよいよか。

 いよいよ、ヨミの復讐、その最たる目標が、達成される時が近いのか。


「村を滅ぼすのは、勇者殺しの前夜とでもするか。前夜祭というやつじゃ。我らの仲間であるヨミを虐げた村など、残しておく気は毛頭ない。ヨミ、欲しい物などがあればヴィネルに言え。大抵のものは揃えてやる」

「.......本当に、ありがとうございます」

「構わん。主をこちら側に引き込む時に、主のワガママを受け入れてやると言ったのは妾じゃ。その約束を果たしているだけのことよ」

「勿論、私も手伝うからね、ヨミ。何かあったら言って」

「リーン.......!」

「おう、俺もだ。うちのヨミを売っぱらった村なんざ、残しておく気はねえ!」

「同感です。そんな目障りな村、完膚なきまでに殲滅しましょう」

「ティアナにしては良いことを言うでは無いか。私も同意見だ、どんな手伝いでもするぞ、ヨミ」


 アロンさん、ティアナさん、フェリアさんに続いて、他の幹部の皆さんも続々とヨミに頼もしい言葉をかけている。

 なんていい人たち何だろうか。私が泣きそうになるわ。


「み、皆さん.......!ありがとうございます、何かあったらよろしくお願いしま.......」



「やはりここは、ワレの炎で.......」

「何を言う、ワシのアンデッド兵で村を囲み.......」

「ぼ、僕の魔法で押し潰して.......」

「俺が.......全てを.......破壊すれば.......」

「私がー、大波でー、押し流してー.......」



 .......。

 あっ、分かった。

 違うわ、この人たち。

 この人たち、ヨミが好きすぎて、これが『ヨミの復讐』だって忘れて、自分達が村を滅ぼそうとか考えてんだわ。

ヨミはめっちゃいい子なので、幹部みーんなから愛されてます。

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― 新着の感想 ―
[一言]  大海将の能力は反則級ですねー  村や町ごと水没させて住民を溺死させるなんて事も、できるの ではないでしょうか。
[一言] 100おつです。 このまま順当に勝ってしまうにしろ、どんでん返しや困難が待ち受けているにしろ、私はいいと思います。 ただ・・・人間の悪徳、そういった面が見れると嬉しいです(ひどい
[良い点] 幹部の皆さんいい人すぎる! [一言] ヨミの生まれた村に魔王軍の最高戦力が… 村人超逃げてー!
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