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吸血姫と元勇者と邪神

 イスズ様の眷属、ですか?


「はい。いきなりで申し訳ないのですが.......」


 はい、なります。


「まずはよく.............えっ、即決!?」


 いえ.......だって、イスズ様の事は、この十七年で信頼してますし、眷属と言っても、隷属というわけではないんですよね?


「それは勿論。干渉しやすくなったり力を直接授けたり、ちょっとした依頼をすることはあるかもしれませんが、酷使する気は毛頭ありません」


 なら、今までとさほど変わらずに強くなれるってことじゃないですか。

 断わる理由がありませんよ。


「うーん.......神の眷属になるって、結構な重要事項の筈なのですが.......貴方といいヨミといい、何故こう、思い切りが良いのでしょうか」


 人間を殺し尽くすことに一切の躊躇も後悔もなくて、かつ手段を選ばないからでは?


「その通りなんですが、貴方自身が言うと、なんかこう.......」


 なんですか。



 ※※※



「では、もういっその事、こうしてしまいましょう。いちいち一人ずつ、眷属にするのも面倒ですし.......それっ」


 イスズ様が手を無造作に振ると、天井(と言っていいのかわかんないけどなんか黒いところ)から一滴の雫が落ちた。

 その雫は床(と言っていいのかわかんないけどなんか黒くて私が立ってるところ)で波紋を広げ、その波紋に呼応するように、人影が現れた。


 人影っていうか、ヨミが。


「はい。人間である彼女と私が繋がるのは、大分苦労しました。彼女と繋がりを持つのは四年ぶりです。.......二、三年後という約束だったのですが、思ったよりも時間がかかってしまいました」


 口では軽く言ってるけど、苦労したんだろうなあ。

 あと、私達ってこうやって出現してたのか。


「んっ.......?」


 あ、起きた。


「はい、正解ですよ。お久しぶりです、ヨミ」


 すると突然、イスズ様がそう言った。

 何言ってんだと思ったら、そうか。ヨミの心を読んでるのか。


「はい、その件です。そうそう、遅れてしまって.......」


 あのー、イスズ様。何話してるか全然分からないんですけど.......。


「ああ、すみません。.......あ、それは.......リーンさん、そっちは.......ああもう、ややこしい!!」


 なんかキレた!?


「はあ.......今、一時的にテレパシーを遮断しています。お手数なんですが、声を出して話していただけますか?」


 ああ、そういうことね。

 私とヨミが同時に頭の中で話すから、ごっちゃになったのか。


「分かりました。.......ここで声出すってめちゃくちゃ新鮮ですね」

「そうでしょうね。十七年間、リーンさんはここで殆ど声を出してませんし」

「ボクは二回目だからそれほど.......って、リーン?」


 今気づいたんかい。


「やほ、ヨミ。夜のケーキ美味しかったよ」

「あ、そう?あのケーキ屋さんの店長さんにちょっとコツ教えて貰ってさ、それを.......」

「あのー、談笑も良いのですが、お話を聞いてくださいませんか」

「あ、す、すみません!」

「いいじゃないですか.......同棲相手のコミュニケーションってやつですよ」

「.......ヨミって可愛いですね」


 おい。


「さて。お二人をここに呼んだのは、他でもありません。そろそろお二人共、肉体レベルが全盛期に到達しましたし.......私の眷属となってもらう頃かな、と思いまして」

「あ、四年前のあのお話!覚えててくださったんですね、ありがとうございます!」

「.......ヨミって本当に良い子ですね。魔王もリーンさんも、私の扱いがぞんざいで.......」

「本人いる前で言いますかねそれ」


 そんなに敬ったりして欲しいなら、もっと威厳オーラを出せば良いのに。

 出来るでしょ、神なんだし。


「まあとにかく。まず、私の眷属となった時の特典ですが。現在からの不老化、私の干渉の簡易化.......」


 ふむふむ。


「百時間に一度だけ無条件蘇生、全ステータスの五割増、全体的な才能値の上昇、状態異常の無効化、聖属性攻撃に対する耐性.......まあこんなところですね」


 ふむふむ...................はえ?


「そ、そんなに特典が!?」

「はい。私をミザリーと同じ程度の加護しか与えられないとか思っていたのなら心外です。世界のバランスを崩さない為に、これでも加減してるんですよ?」

「邪神すげえ.......」

「でしょう?ミザリーは、顔が大神の好みド直球だそうでして。それで寵愛を受けていて、神としてのレベル『だけ』!.......は、高いですが、全体的な神としての能力は、私の方が圧倒的に上ですからね。この程度の加護は授けてあげられます」


 その大神も無能じゃねーか。

 いやまあ、前世の世界でのギリシャ神話でも、大神ゼウスは好色で、神にも人間にもめっちゃ愛人いて、好き放題やってたらしいけどさ。

 なんなら、ゼウスの正妻のヘラって、ゼウスの実姉だし。


「そういえばその大神って、ヘラさんとかアテナさんとも.......おっと、これ以上は」

「今凄いこと聞こえたんですけど!?ギリシャ神話の女神がどうしたんですか!?」

「禁則事項です♪」

「なんでその名言まで知ってるんですか!ポーズもそっくりの確信犯だし、そもそも貴方はどちらかと言えば団長ポジションでしょ!」

「.......?なんの話をしてるの?」


 憂鬱な話だよ。


「まあ、この話はこれくらいにして」


 これくらいにするの!?

 ギリシャ神話の件は!?

 宇宙人、未来人、超能力者の話は.......


「ほいっ」


 どうなって.......ん?

 なんか、体が淡く光り始めたんだけど。


「これで暫く.......そうですね、一日も経てば、身体に加護が定着して、晴れて私の眷属です」


 ちょっ、あの、話の続き.......もういいや。


「えっと.......これからもよろしくお願いします」

「お、お願いします!」

「こちらこそ。これで干渉もしやすくなった事ですし、またお菓子食べましょうね、お二人共」


 この神、それが目的じゃないよね?

 取り敢えず、天照大御神様には祈っておこう。


「さて.......これで私のお役目は終わりですが、干渉期限時間までまだ余裕がありますね。.......お菓子でも食べて待ちますか?」

「喜んで」

「えっと、じゃあ、いただきます」


 わー、モンブランだ!

 しかも、下がちゃんとクッキーになってる、私の好きなやつ!


「んー、美味しい.......」

「美味しいです!」

「それは良かった。これを差し入れてくれる天照ちゃんは良い子なので、大神の毒牙にかからないと良いのですが」

「大神どんだけヤバいんですか、好色家にも程があるでしょう!?.......というか、イスズ様は大丈夫なんですか?」

「幸運にも、大神が寵愛しているミザリーが私のことを嫌いなせいで。そこだけはあの女に感謝してますよ」

「へ、へぇ.......」

「ちなみに、天照ちゃんは見た目十二歳位のロリっ子でして。流石に、今は大神も手を出さないでしょう。.......ですが、大神は『光源氏作戦』とか言って、天照ちゃんにことある事に近づいてるんですよ。光源氏ってなんなんでしょうね?」

「なんで日本のアニメ文化は詳しいのに、古典作品のことを知らないんですか!」

「ねえ、さっきから何の話をしてるの?」


 ごめんねヨミ、でも大事なことなんだよ。


「(大丈夫ですよリーンさん、あとでヨミの記憶はちょこちょこっと改竄しておくので、ここで何を言っても)」


 なにその気遣い。

 まあじゃあ、遠慮なく。


「光源氏っていうのは、源氏物語の主人公で、かくかくしかじかで.......」

「ミザリーを追いやって今までの暴挙を明るみにした暁には、あの大神の格も下がりますよね。そうなったら一発ぐらいぶん殴りましょう」


 そうしてください。

作者は長門派です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 長門派ってあの3人の中で最大勢力らしい ワイもどちらかといえば長門派です
[一言] 作者さん仲間!(長門派
[気になる点] 寵愛してる子が一つの世界で好き勝手したからって、その上司が降格までされるもんかね? 別に世界そのものをどうこうしたわけでもあるまいし この事は単なる切っ掛けで、他に洒落にもならない前…
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