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異世界マネジメンター! ~無能な上司は即研修~  作者: NARIAYA
第1話 新しい就職先
4/4

03 これから頑張ってクダマサ!

「バエル様~!」


 魔帝バエルの自室。

 そこにチビデビが嬉しそうな声を上げて入って来る。


「すごいデビ! クダマサの奴が3日でいくつかの問題を解決したデビ! バエル様ではひとつも解決できなかったのにデビ!」


 主人を小馬鹿にするような発言だったが、バエルは反応しない。

 ずっと虚空を見つめ放心している。


「どうしたデビか? バエル様?」


 近くに寄ったことでようやく気付いたのか、バエルはチビデビを掴み上げた。


「どどどどどうするチビデビよ! 消しちゃったぞ! 消しちゃったんだぞ! 星を一個丸々! ああああああこの事が魔王様に知れたら絶対に殺される……! 逃げても逃げ切れる相手じゃない! どうすればいい!」


「それなら大丈夫デビ。バエル様も王種になればいいデビ!」


「は、はぁ? なれる訳が無かろう!」


 半ギレするバエルに、チビデビは不思議そうな顔で答えた。


「出来るデビよ? 魔界で発生した問題を解決していけば、魔力の循環はよくなるデビ。現にクダマサが解決したことでほんのちょっぴりだけど効率が上がっているデビ! この魔力を蓄えて行けばバエル様なら余裕デビ!」


「本当か? 本当に出来ると思うか?」


「本当デビ。でもそうなる前に魔王様に見つかったら終わりデビ。その時は潔く散るしかないデビ。多分1万年掛かる拷問を一瞬に圧縮したそれを1万年受けさせられ続けるデビ!」


「それはもう殺してくれ!」


 もしそんな拷問があれば、いったいどれほどの体感時間になるのだろうか。

 1秒の中にすら一瞬というのは数えきれないほど存在する。

 1日耐えるだけでもそれは悠久の時となるだろう。


「だからこそデビ! クダマサに頑張ってもらうしかないデビ! 呼ぶことには成功したんだから大丈夫デビ! 地球の最後のひとりデビ! 絶滅危惧種デビ! しかも凄かったデビよ! あのグランオーガのポコルを顔面パンチ一発で気絶させたデビ!」


「グランオーガを!? 人間がッ!?」


 ――グランオーガ。


 オーガ種は魔物だが、グランオーガ種は魔族に分類される。

 魔力はさほどないが、悪魔と変わらないほどの膂力を持つという魔界屈指の力自慢。

 その耐久性能も凄まじく、一撃で気絶させられる存在など数えるほどしか存在しない。

 その防御力の高さから、痛みに弱く打たれ弱い。


「只者じゃないデビよ~! もしかしたらすんごい大当たりかもしれないデビ!」


「そ、そうだな! そうだよな! よ、よし! 我もクダマサを激励するぞ! 案内せい!」


 


 ドバンっと勢いよくクダマサのいる部屋の扉が開かれる。

 書類を整理していたクダマサはその音の大きさに驚いて警戒している。


「クダマサやってるデビか! 紹介するデビ! こちらがこの魔界で1番偉いお方! バエル様デビ!」


 クダマサは書類を放り投げ、バエルの前に急いで駆け寄った。


「し、社長!? こ、この度は雇っていただき、誠にありがとうございます! 社長とは知らず、以前はご挨拶もせずに失礼しました!」


 サラリーマンのクダマサは、業務で血が上っていない時は基本的に目上にへりくだる。

 慣れてくればそのへりくだりもなくなるが、それは今はいいとしよう。


「しゃちょ? まぁなんでもよい! 我は期待しておるからの! 何か入用であればなんだろうと言うがよい。我がすぐに用意してやるからのう!」


 それだけを伝え、バエルとチビデビは部屋を後にした。


 何故かって?

 バエルは緊張したのだ。


 絶滅危惧種とどう接するのが正しいのかが分からなくてだ。


 吐息が吹きかかっただけで死んでしまったらどうしよう。

 いるだけで放たれる圧力で死んでしまったらどうしよう。

 そんな事ばかり考えてしまって、逃げるように退散したのだ。


 現に、バエルは魔族が働く環境には赴かない。

 いや赴けない。


 10分もいれば皆の体に異変が生じてしまう。

 1時間もいれば皆死んでしまう。

 抑え込んでも漏れ出てしまう威圧感に、皆押し潰されて息絶えるからだ。


 これが魔王サタンだったら数分で皆死ぬ。


 強すぎても碌なことがないのだ。


「よ、よし! チビデビ! 戻るぞ!」


「もういいデビ?」


「構わん! あまり長居したら死んでしまうかもしれんだろう!」


「了解デビ~」


 ふたりはバエルの自室へと戻っていく。

 クダマサは自室で、何故突然……? と疑問符を浮かべていたが、それはどうでもいい。


 問題は、クダマサが確実な変革を魔界にもたらしたことにある。

 チビデビは途中何日も寝ていたために3日と言ったが、実際はクダマサが魔界に来て10日が過ぎていた。


 その間に、例の部署の仕組みを改善し、その部署だけでは無理だと判断して上流工程や下流工程まで確認。

 その悉くを変革せしめていった。

 おかげで魔界の魔力循環率と保有効率がなんと0.0002%も上昇した!


 すごいぞクダマサ!


 ある程度基盤が出来れば更にやりやすくなるだろう。

 だが、そうなってからの問題の方が遥かに面倒だ。

 魔界の労働者を救うため、魔帝の危機を救うため、これから毎日頑張るのだ。


 働いて働いて働きまくるのだ!


 頑張れクダマサ! 


 もう帰る地球はないけれど! 


 頑張れクダマサ!


 ここは会社じゃないけれど!


 頑張れクダマサ!


 替えのスーツはないけれど! 


 頑張れクダマサ! 負けるなクダマサ!


 次回は上司研修編をよろしく頼むぞ!

 

第1話『新しい就職先』 完

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