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主人公になりたかったキミへ  作者: 夕町 迅夜
第一章 最悪最高の学校生活の幕開け
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第一章8 『友達』

 小一時間ほどで昼食であるお好み焼きを食べ終わり、お会計を済ませる。



 入学式の時に校長が言っていたことなのだが、学校側はオレ達が寝ている間に全員のスマホにとある細工をしたらしい。

 この島以外の外部との連絡手段を遮断したり、島内でのメール・アプリ・通話などの内容を学校側から監視可能にするなど色々と機能が追加された。


 改造されて追加されたものの1つに、『この島内だけで使用可能な電子マネー機能の追加』というのがあり、入学式終了時からこの島内でオレ達が使える通貨はスマホの中に入っている電子マネーのみになった。

 入学祝いとして学校側から5万円分の電子マネーが新入生全員に配布されたが、この電子マネーをすべて使い切った場合。つまり残高0円になった場合、その生徒は退学になるらしい。

 金の管理は財産の管理だ。

 その管理を怠る者は将来、国を担う可能性が低いと判断され、退学になるということだろう。


 この電子マネーは様々な方法で増やすことが出来るらしいのだが、その方法は自分で考えろとのことだった。

 校長曰く、今住んでいるあの寮は毎月20000円の家賃を支払わないといけないらしい。

 他にも毎日の夕食代、水道代、ガス代等は全てこの電子マネーから支払わなければいけない。

 つまり、このまま何もしなければ確実に金は尽きて退学になる。

 金の増やし方を見つけるためにも今、街を歩いているのだ。


 ふるい落としは既に始まっている。

 遅れをとる訳にはいかない。


 以上のことから現在オレ達3人は5万円ずつ所持していることになる。

 もちろんここのお会計は割り勘だ。


 ここは男のオレが奢るべきなんだろうが、電子マネーの増やし方が分からない現状、節約するのが普通だ。

 3人で食事をしたのだから3人で割り勘するのは普通のことだろう。


 だから、決してオレがケチなどということでは無い!


 昼食を食べ終えた後は阿良木の希望通り、買い物をした。

 阿良木は金を惜しむことなく使い、約8000円ほどの買い物をしていた。

 その阿良木の大量の荷物は男だからとオレが全て持たされるハメになった。

 阿良木は遠慮していたが、水無月が持たせる気満々だ。

 オレと水無月も生活に必要なものを揃える為に最低限の買い物をして、3000円程使った。

 水無月の荷物は大して多くないはずなのに、それもオレが持つハメになった。

 両手に他人の荷物がいっぱいの状態だ。


「遅いわよ。早く歩きなさい」


「す……すいません」


 これじゃあ、まるで奴隷じゃねぇか……

 絶対、水無月の奴ドSだろ。


 買い物を終えた後は特にやることもなかったので街を見ながら適当にぶらつくことになった。


 途中で阿良木はクレープやらアイスやら色々と買って食べ歩いていたがよく食べれるな……

 さっき、飯食べたばっかりだろ。

 女子ってなんでデザートだとあんなに腹に入るんだろうな。


 そんなことを思いながら街をぶらぶらと観光した。


 そして、現在時刻は午後6時。

 今の季節では太陽は沈み、空は既に暗くなっている。


「ん?なんだあれ?」


 暗くなった街中にド派手にライトアップされた建物があった。


「カジノじゃないかしら。アメリカに行った時に似たのを見たことがあるわ」


「あ〜、なるほど。数年前に日本でもカジノは違法じゃなくなったからか」


「でも、大人じゃないとできないんじゃなかったっけ?」


「休日の大人用に建てたんじゃないかしら?学生の私達には関係無いでしょ」


「だねー。そろそろ、暗くなってきたしもう帰る?」


「そうだな。荷物重すぎるから早く帰りたい」


「それは我慢しなさい。男でしょう?」


「どこの誰が男は我慢しなきゃいけないなんて言い出したんだよ」


「どこかの誰かよ。つべこべ言わないで黙って運びなさい」


「へいへい……」


 それにしても疲れた。

 昼からずっと荷物持ちっぱなしだぞ。

 いい加減休みたい。


 オレ達はカジノから離れ、寮へと向かった。

 結局、帰るまで1つも荷物を持ってくれなかった……


 本当に鬼だなこの女……

 前を歩く水無月を一瞬だけ睨んだ。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「とうちゃーく!疲れた〜……」


 オレ達は集合場所でもあった寮の前の道に到着した。

 阿良木も流石に疲れたようだ。

 おそらく、荷物を大量に持っているオレの方が疲れたがな。


「今日はこれで解散でいいかしら?」


「あっ!ちょっと待って!」


 阿良木がスマホをポケットから出す。


「2人とも連絡先交換して!いいでしょ?」


 上目遣いでこちらに問いかけてくる。

 そんな風に頼まれると断る訳にもいかない。


「もちろん、オレはいいぞ」


「私も、もちろんいいわよ」


 水無月とオレも笑顔で応じる。


「ほんと!?ありがとう!」


 阿良木はとても明るい笑顔になった。

 とても嬉しそうだ。

 それを見るとこちらもなんだか嬉しくなってくる。


「ふふふ」


 水無月が笑った。


「えへへっ」


 阿良木が笑った。


「くくっ」


 オレも笑った。

 笑いをこらえるのに必死だ。


 3人で笑いあった。

 水無月とオレもスマホを取り出し、アプリのLINKで阿良木と連絡先を交換する。


「これで私たち3人友達だね!」


「そうね。友達ね」


 2人は嬉しそうにそう言う。


「友達……オレなんかが友達でいいのか?」


「もちろんだよ!私達3人はもう友達だよ!」


「私もそう思ってるわ」


 阿良木はともかく、水無月も友達であることを肯定してくれた。


「そうか。ありがとうな……」


 水無月は悲しそうな顔をしていた。

 小学生の頃のオレを知っているのなら変に心配させたのだろうか……


「じゃあ、友達として改めてよろしく」


 気を取り直して、オレのせいで暗くなってしまった空気を明るくする。


「うん!よろしくね!」


「私こそよろしく」


 3人ともまた笑った。


「楽しいな…」


 つい、思っていたことを呟いてしまった。


「なにか言った?」


「いや、何でもない」


 阿良木には聞こえていなかったようだ。

 良かった。


 水無月の方を見るとこちらの方を見て微笑んでいた。

  その水無月の顔は何故かとても優しく見えた。


「なんだよ」


「いいえ、なんでもないわ。ふふっ」


 絶対、聞こえてたな……


「とりあえずお前ら、帰る前にこの荷物は持って帰れよ?流石に部屋までは自分で持って行け」


 帰る話に会話を戻し、両手いっぱい分の荷物を2人に差し出す。


「お、重い……」


「自業自得だろ。ここまで持ってやったんだから感謝しろ」


 阿良木は自分で買った物、約8000円分を両手いっぱいに持ち、オレと水無月は自分で買った物、約3000円分の商品が入った袋1つを手に持った。


「じゃあ、またねー!」


「では、また」


「あぁ、またな。お休み」


 3人ともそれぞれの部屋へと戻っていく。

 オレはエレベーターで8階まで上がり、自分の部屋にようやくたどり着いた。

 オートロックのドアをキーカードで開き、部屋へと入る。


「あぁ〜!疲れたー!」


 持っていた袋を投げ捨て、ドアを開けた勢いのままベッドに飛び込む。


「もうヤダ!動きたくない!」


 ベッドに倒れながら、横目で部屋に散らばりっぱなしの本を見る。


「片付けはまた明日にするか……。とりあえず、一旦眠ろう……」


 スマホのアラームを午後10時にセットして、ついでにアプリのLINKを開く。

『友達』の欄に水無月と阿良木の名前が載っている。


「友達か……」


 視界がぼんやりとしてきて、スマホを握りしめたまま深い眠りに落ちた。





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