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主人公になりたかったキミへ  作者: 夕町 迅夜
第一章 最悪最高の学校生活の幕開け
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第一章6 『一枚の写真』

「うわぁ〜、懐かしいなぁこれ!」


 部屋の掃除をしていたら、懐かしいものがゴロゴロと出てくる。

 まぁ、基本的に本しかないんだけどね…


「これスゲー泣けたんだよなぁ!こっちのは凄い笑えたっけ!あ〜、クソ!久々に読み返してぇ!」


 テンションが物凄く上がる!

 本って時々読み返すと懐かしさも相まって、凄く面白かったりするんだよなぁ。


 懐かしみながら空っぽだった本棚にドンドン本を収納していく。


「ん?何だこれ?アルバムか?」


 本を整理していると、中から見覚えのないアルバムが出てきた。

 手に取って中身を確認する。

 !?


「懐かしいな…この写真…」


 中には小学生の頃の写真が入っていた。


「それにしてもオレ暗過ぎだろ…」


 オレのアルバムだから大半の写真にオレは写っていたがどの写真も本ばかり読んでいる。

 周りの奴らは凄く楽しそうなのに、オレだけ隅の方でつまらなさそうに本を読んでいる。

 言ってしまえば、場違いだ…


「なんでこんな写真ばっかりなんだよ…誰が作ったんだ?ただ、オレの黒歴史載せてるだけじゃねぇか…」


 そのまま黙々と名前も覚えていないような奴らと写っている写真を見ていく。

 本当につまらなさそうだな…オレ…


 昔からクラスや輪の中心になっているような連中は嫌いだった。

 そういう奴らは他人に合わせて仮面被って、偽善者を演じていて、八方美人に振舞って、ギャーギャー騒いでいるようにしか見えなかったから。

 それがとてつもなく気持ち悪く感じていたな。


「もう最後のページか…結局、本読んでる写真しかないし、なんのためのアルバムなのか分からないな」


 アルバムの最後のページをめくる。


「…」


 涙が出た…

 ダメだ。

 止まらない。


 最後のページには室内で撮った写真が載っていた。

 小学生の頃住んでいた親戚の家の自室だ。

 別に特別なものじゃない。

 写っているのは一人の笑っている少女と笑っている小学生の頃のオレ。

 ただそれだけだ。

 なのに涙が止まらない…


 静かで薄暗い、本に埋め尽くされた部屋の中心でアルバムを持った少年が床に蹲って泣いている。

 約30分、たっぷりと泣いた。

 喘ぎ、嗚咽しながらひたすら泣いた。




 ありがとう…


 ありがとう…


 ありがとう…


 オレを変えてくれて本当にありがとう…




 あと3年だけ待っててくれ…


 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「スゥー、ハ〜」


 顔を上げて、深呼吸を1つ。

 心を落ち着かせる。

 スマホで時間を確認すると、もう9時近い。


「もう時間だな」


 アルバムを机の上に置いて、洗面所へと向かう。


 パンっ!

 顔を洗い、自ら顔面を叩いて気持ちを入れ替える。


 さて、服はどうするか…

 流石にジャージは辞めておこう。

 着ていったら水無月に殺される気がする。

 ジーパンに白のTシャツ、その上にいつもの黒いパーカーでも着れば私服っぽくなるだろ。


 以上の格好で水無月との集合場所である寮前の道へと向かう為、部屋の扉を開ける。


「イタッ!」


 扉が何かにぶつかった。

 扉の前には頭を抑えながら蹲っている茶髪の女生徒がいる。

 制服ではなく、私服のようだがこの寮にいるなら同じ新入生の1人だろう。


「おい、大丈夫か?」


「大丈夫じゃないよ〜。いきなり扉開けないでよね!」


 オレは自室の扉を開けただけだ。

 他人の部屋の前にいるお前の方が悪いだろ…


「大丈夫そうだな。で、何してたんだ?オレの部屋の前で」


 話しながら部屋から出て、オートロックの扉が閉まる。


「なんか対応冷たくない?まぁ、いいや!私、阿良木 葵(あらき あおい)っていいます。同級生の人達に挨拶しておこうかと思って、部屋を順番に回ってるんだ」


「そうか。オレは長谷川 夕夜だ。まぁ、頑張れ。じゃあな」


「やっぱり、冷たいよね!?」


「悪いけど、今急いでるんだ。遅れたら命に関わる」


「命!?一体今から何しに行くの!?」


 なんだこの茶番は…

 まぁ、気が楽になったからいいか。


「暇だから、街でも歩いて回ろうかと思ってな。それで人と待ち合わせしてるんだよ」


 スマホを開いて時間を確認する。

 ヤバい、約束の9時まで後3分しかない。


「本当に遅刻するから。じゃあな」


 そのまま走って行こうとしたら腕を掴まれた。


「何だ?まだ何か用なのか?」


「街を歩いて回るの?」


「そうだよ」


「私も行っていい?街もそのうち見ておこうかと思ってたし丁度いいかと思って」


 あー、クソ!時間が無い!

 もうなんでもいいや!


「分かった。時間無いから早く行くぞ!」


 掴まれた手を振りほどいて、早足でエレベーターへと向かう。


「ちょっと、待ってよ!」


 視線だけを後ろに向けると阿良木が後ろから小走りで付いてくるのが見えた。


 なんだか今日は、後ろを付いて歩かれるのが多い日だな…


 そんなことをふと思い、自然と笑みがこぼれた。





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