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主人公になりたかったキミへ  作者: 夕町 迅夜
第一章 最悪最高の学校生活の幕開け
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第一章5 『波乱万丈な入学式』

 現在時刻:7時52分


 オレは校長曰く8時から始まる入学式に出るために約2時間前に行ったばかりの体育館へとまた向かっていた。


 とりあえず、オレは水無月と協力関係になった。

 お互いに代表になりたいからそのための協力者が欲しいということで利害は一致していたし、学力全国1位の協力者なんて大当たりもいいところだ。

 断わる理由などないだろう。


 缶コーヒーと固形のバランス栄養食という質素な食事を終えた後、水無月とは別行動をとった。

 水無月は1度寮の部屋へと戻り、オレは学校の施設見学をして入学式までの時間を潰し、現在に至る。


 それにしても、ここの設備は凄かった。

 とにかく広いし、理科の実験道具なんかは最新の機器だらけ。

 校舎は4つあり、どれも横100メートル、縦5階程まであった。

 ここをたった新入生の200人だけで使うのか……

 更に時が経てば退学していってどんどん人数減っていくし、広すぎるんじゃないか?

 本当にこの学校にいくら金かけてるか想像するだけで頭が痛くなってくる。


 まぁ、こんなことは考えてもどうにもならないから今は入学式のことだけ考えるとしよう。

 入学式って何するんだっけ?

 校長先生の話とか?

 それならさっき聞いたばかりだからどうでもいいか。

 ん?他にマジで何するんだろう……

 何もやることないんじゃないか?


 そんなどうでもいいことを考えていたら体育館に到着した。

 時間ギリギリだが、間に合ってるなら問題は無いだろう。


 靴を脱いで下駄箱に入れ、来客用のスリッパが扉の横に置いてあったのでそれに履き替えて館内へ入っていく。


 中に入るとガヤガヤとした話し声が耳に入ってきた。

 2時間前とは違い、館内には多くの制服を着た生徒がパイプ椅子に座っていた。

 オレと同じ新入生達だろう。


「キミ、新入生だね?名前は?」


「長谷川 夕夜です」


 扉の横にいた茶髪の女性に声をかけられた。

 ニコニコしていて、ふわふわした天然系の人だ。

 多分、教員だろう。


「ありがとう!ちょっと待っててね」


 そう言うと、後ろにいた教員らしき男性に何やら話しかけ始めた。

 少ししてプリントを1枚手にしながら、こちらに駆け寄ってくる。


「待たせてごめんね!このプリント持って、適当に空いてる席座って待ってて」


「わ、分かりました」


 勢いに気圧されたがプリントを受け取り、どこに座ろうか席を見渡す。

 先程は気がつかなかったが、こんな時間ギリギリに来たのに席がいくつも空いている。


 遅刻か?

 眠らされてここに連れてこられてるならまだ寝ている可能性もあるが、入学式に支障はないのだろうか?


 そんなことを思っていると、隅にある席に水無月が座っているのが見えた。


「よう、なんでこんな隅っこに1人で座ってるんだ?」


 水無月の席から1つ空けた隣のパイプ椅子に腰掛ける。


「なに?隅っこに1人で座ったら悪いのかしら?」


 特に深い意味はなかったのに不快だったのか睨みつけてくる。

 怖い…


「いえ、悪くないです……はい……なんか、すいません」


「分かればいいのよ」


 会話のキャッチボール下手すぎだろ!

 たった4文で終了しちゃったぞ……


「えー、お静かに願います」


 マイクで拡声された声が館内に響き、同時に話し声が少なくなっていく。

 おかげで気まずくなるのを避けられた。

 こいつとは今日会ったばかりなのになんでこう何回も気まずくなるんだろうか。


「それでは、これから第4回日本代表選抜高等学校の入学式を始めます。校長先生の話。校長先生お願いします」


 やっぱり、校長先生の話か。

 小学校も中学校も思ったが、なんであんなに長いんだろうな?

『何分以上話せ』みたいなルールでもあるのだろうか。

 今回はできるだけ手短なことを願う。


 校長が壇上に上がり、生徒達を見渡す。


「とりあえず、皆さん入学おめでとうございます」


 義務的な挨拶をした後、しばらくはオレと水無月が校長室で聞いた事と同じ話が淡々と続いた。


「是非とも生徒諸君には勝ち上がり、代表になれるよう頑張って貰いたい」


 説明が一通り終わった。

 入学式はこれで終わると思ったが、校長はまだ話を続けるようだ。

 結局、手短にはならなかったな。


「今話したのがキミ達がこの学校で行うことだ。ところで1度話を変えるが、キミ達は入学式が始まった時、席がいくつも埋まっていないことを疑問に思わなかったかい?」


 疑問に思っていたことを的確に突いてきた。

 水無月も疑問に思っていたのか先程まで頭を下げて流して話を聞いていたのに頭を上げて聞く気満々といった感じだ。


「キミ達生徒は起きたら自宅の部屋そっくりの部屋にいたはずだ。そして、扉に貼ってある紙に気づき、この学校の体育館に来て現在に至るだろう。まぁ、例外の子は何人かいたけどね」


 校長の視線が隅っこの席であるこちらに向いた。

 例外の子はオレ達のことなんだろうな。


「新入生は全員で200名いる。キミたちを眠らせたのに使用した催眠ガスは今日の午前5時には完全に効果が切れるようにした。それなのに、未だに寝ていたり、紙に気付いていないなんて理由でこの入学式に来れていない者がいる。現在空席になっているその席はそんな間抜けな子達の数だ。先程、ほかの教員の方に入口の所で体育館に辿り着いた子をカウントしてもらっていた。その数、152人。つまり200-152で計48人の生徒は今ここに辿り着けていないということだ」


 48人と言ったら新入生の約4分の1ほどの人が来ていないことになるぞ。

 まばらに空席があるからもっと少ないと思っていた。

 そんな状態で入学式を始めてもよかったのか?


「辿り着いたキミ達には関係ない話だが、現在ここに来れていない生徒計48名には退学になってもらう」


 館内が一気にざわめき出した。

 校長の笑顔が消え、どうやら本気のようだ。

 声のトーンも1段階落ちる。


「それがこの学校のルールだ。未だに寝ていたり、紙に気付かないような間抜けな生徒は日本代表になる権利などない。そんな者を国の代表にしたら国の尊厳に関わる問題だ。これは入学試験だと思ってくれてもいい」


 なるほどな。

 だから、早く起きて学校についたオレと水無月に入学式に遅れないよう何度も忠告してきたのか。

 遅れたら退学とは洒落にならないな。


「では、改めて入学おめでとう。キミ達は日本代表になるに相応しいと国から認められ、入学試験に合格した。これから1年間、代表になる為に自分の全てを行使し、蹴落とし合い、奪い合い、今、周囲にいる人達を踏み台にして勝ち上がっていってもらいたい。君達の今後に期待するよ」


 校長は話し終え、生徒達に一礼してから壇上を降りていった。

 周りの生徒達を見渡すと、唖然としている者、決意を固めている者、状況が飲み込むことが出来ず周りに話しかけている者など様々だった。

 横にいる水無月は決意を固めている側だ。

 協力者としては心強いものだな。


「校長先生ありがとうございました。先程、入口で配布したプリントを見てください」


 手に持っていたプリントを見ると、時間割表のようなものがひと月分プリントいっぱいに書かれていた。


「この学校は、日本代表を決めるだけの場所ですのでクラス分けはありません。よって、授業は個人でそのプリントに記載されている通りに教室を毎時間移動してもらって受ける形になります。そのプリントは毎月頭ある集会の時に次の月分を配布します」


「では、これをもちまして、第4回日本代表選抜高等学校入学式を終了致します。今日は授業はございませんので、これからは自由にしてもらって構いません。明日から授業はございます。授業の教材の方は部屋に届いているのでご安心下さい。解散」


 館内は一気に騒がしくなり、生徒達は立ち上がってドンドン体育館の外へと出ていく。


 さて、オレはこれからどうしようか…

 特にやることもないからなぁ。

 街でも適当に歩いて回ってみるか。


「なぁ、水無月。お前これからどうするんだ?」


「やることも無いし、部屋に戻るわ。アナタは?」


「オレか?適当に街でも歩いて回ることにするよ。これから住んでいくことになるんだし、ある程度把握しておきたいからな。一緒に来るか?」


「そうね。じゃあ、御一緒させてもらうわ。」


「意外だな。てっきり、断わると思ったぞ」


「街を見て回るのはこれから住んでいく上で必要な事だし、やっておいて損は無いからよ。もしかして、社交辞令だった?だったら邪魔しても悪いから行かないけれど…」


「いや、そんなことは無い。1人で街歩くのもどうかと思ってたから一緒に行ってくれるならありがたい」


「そう…じゃあ、制服から着替えたいし、寮の前に9時集合ってことでいいかしら」


「分かった」


 体育館を出た後、オレも寮に1度戻る事にした。

 エレベーターが混む前に急ぎ足で寮であるマンションへと向かう。

 エレベーターで8階へと上がり、自分の部屋のドアを開けると床に散乱していた本が崩れたのか、5冊ほど外に出てきた。


 改めて部屋を見るとスゲー汚いな…

 部屋自体はほぼ新品の綺麗な寮の部屋だからまだいいがとにかく本が多い。

 床が見えぬ…


「時間まで掃除でもするかな…」


 そう決心し、オレは部屋の掃除を開始した。


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