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主人公になりたかったキミへ  作者: 夕町 迅夜
第一章 最悪最高の学校生活の幕開け
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第一章1 『予兆』

 --住宅街のとある道を歩いている。


「ふぁ〜ぁ、寝みぃ……」


 朝からオレは大きなあくびをしていた。

 格好はいつものジャージにパーカー姿ではなく、学校指定の制服を着ている。

 4月6日、今日は高校の記念すべき入学式当日だ。

 オレは今、登校中なのだ。


 朝は苦手だ。

 とてつもなく眠い……


「てか、いくらなんでも早すぎませんかねぇ」


 だが、オレが眠いのは仕方がないと思う。

 なぜなら、オレが今登校している時刻は、まだ午前5時を少し回ったところなのだ。

 まだ空は薄暗く、肌寒い。

 なぜこんなに早い時間から登校しているのかというと、決して入学式が楽しみで待ちきれないなんてことではない。

 学校側から通達された集合時間が午前5時半だからだ。


 早すぎるだろ?

 学校側頭おかしいんじゃねぇの?とかオレも思ったよ?


 でも、学校側に言っても『間違いは無い』としか返ってこないのだからこれで正しいのは間違いないのだ。

 オレは階段を下りながら、スマートフォンの電源を入れ、改めて現在の時刻と学校側から来たメールを開いて確認した。


 現在の時刻は午前5時20分。

 集合時間はやはり午前5時30分と記載されている。


 集合時間のことは今はとりあえずいい。

 だが、どうしてももう1つ納得出来ないことがある。


「よし!到着っと……多分……」


 それは集合場所だ。


「なんで集合場所が学校じゃなくて浜辺なんだよ!?」


 誰もいないのに思わずツッコんでしまった。

 オレは集合場所である浜辺に到着した。

 浜風がとても冷たい。

 波の音だけが響いていて、朝の静けさをより強調している。


 これも学校側に言ったが時間と同じく間違いは無いらしいのだ。


「訳わかんねぇよ!?学校に行くのになんで浜辺に集合させんだよ!?しかもオレしかいねぇし!!」


 浜辺に集合させるのはどう考えてもおかしい。

 だが、それ以上におかしいのは集合場所であるはずの浜辺にオレしかいないということである。


 なんなの?

 入学前から学校側からのイジメなの?

 オレ、ハブられたの?


 色々と訳が分からず、頭が混乱してしまう。

 とりあえず一旦落ち着こう。


「スゥー、ハ〜」


 深呼吸をして心を落ち着かせる。

 よく考えたら、どのみちここにいるしかないのが分かったので、先程下りてきた階段に腰を下ろしてしばらく待ってみることにした。


 周りがだんだんと明るくなってきた。

 目の前の海をふと眺めると太陽がだんだんと登ってきている。


「っ…!」


 思わずオレはその景色に見蕩れてしまった。

 それはオレにとっては数年ぶりに見た日の出だった。

 なぜだか自分でも分からないが目が潤んできて、やがて涙が頬をつたった。

 自分でも驚き、誰に見られるわけでもないのに急いで涙を拭う。

 オレは自然と笑みがこぼれた。

 きっと、色々嬉しかったんだろう。


 グラッ


「っ!?」


 そんな感動に浸っているといきなり視界が歪んだ。

 初めは涙のせいかと思ったが、明らかにおかしい。

 急いで立ち上がるが、さらに視界が歪み、意識がドンドン薄れていく。

 とうとう立っていられなくなり、オレは砂浜に倒れ込んでしまった。

 薄れる意識の中、先ほど自分が座っていた階段を下ってくる人影がぼんやりと見えた。

 体が動かない。


 クソッ!

 何なんだよこれ!


 畜生……

 最悪だ……


 薄れる意識の中、様々な感情が湧いてきた。

 数日前までは感じなかった感情が。

 また涙が出た。

 恐らく先ほどとは違う涙なのだと思う。



 オレはそのまま何も出来ず、意識を手放した……


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