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4.手

4.手


最近日差しが強くなってきて。


もう夏だな、とか思ったり。



今日も、入梅前のあの爽やかな天気。



なのに私の体調は最悪だった。


女の子にしか分からない、アレのための貧血。


一応プルーン食べてきたんだけどな。やっぱり効果無し。



体操服に着替えながら、こんな熱そうな外で今から体育とか大丈夫かな、と少し心配になる。



でも今日は合同体育。


AクラスとDクラス。


Aは私のクラスで、Dには翔ちゃんがいる。



だから今日の体育はサボったりできないとか、かなり不純な動機です。ごめんなさい。



ロッカーを出て、日焼け止めで幾分白くなった顔の加奈と小百合と喋りながらグラウンドへ向かう。



加奈と小百合とは一年の時からクラスが一緒で、それからはかなり仲良し。



「あっち〜。絶対焼けるし!!」



外に出るなり小百合が悲鳴をあげる。



「今日合同でしょ?何やるか知ってる?」



「なんかドッジやるらしいよ」



「げ。私ドッジ嫌いなのに」



とか言いながら、加奈は何でもできる。


勉強も、スポーツも。



「でもさ、男子とは別だし」



「小学校のときは男子も一緒にやってたもんね〜。かなりスリリングだったし!」



「男子と別ってだけでも、小学校のときに比べたらかなりマシかも」




とか話してて、なんでいつもこうなるかなあ。



始まってみると、今日は何故か男女混合でやるとか先生が言い出した。



女子からはブーイングの嵐だったけど、男子は乗り気で。



結局男女混合でやることになった。



クラス対抗ということになって、数人が外野に出て残りは皆箱の中。



私も外野で出たかったけど、最後の最後でジャンケンで負けた(加奈と小百合は一番に勝って、さっさと外野に出て行った)。



ふと相手のチームのところを見ると、翔ちゃんも内野らしく、数人の男子と楽しそうに何か話していた。



あー外野なりたかったな。



そしたらもうちょっと翔ちゃんに近づけたのに。



「相模さん、大丈夫?」



「え?」



いきなり声をかけられて、少し驚いて振り向くと、クラスメイトの上条くんが心配そうな顔をして立っていた。



「顔色悪いから」



たしかに、さっきより正直しんどい。



「大丈夫。ありがと」



「そお?」



「うん。心配してくれてありがとね。」



「しんどかったら無理しちゃ駄目だよ」



そう言って、上条くんは相手チームの方へと走っていった。



上条くんって優しいな。顔もかっこいいし。



そんなことを思っていると、ふと翔ちゃんと目が合った。



ちょっぴり嬉しくて、小さく手を振った。



でも、翔ちゃんはふいと顔を背けて、もうこちらを見ようとはしなかった。



あれ?私なにかしたのかな。



なんだか気になって、ずっと翔ちゃんのこと見ていたけど目を合わせてくれるかんじもしなくて、だんだんと悲しくなったきた。



フラフラする頭で、嫌われたらどうしようっていう不安がぐるぐると渦を巻く。



そのときだった。




「あぶない!」




ガン!と男子の投げたボールがきれいに私の頭にヒットし、うわ、私かっこわる、とか思いながら、上条くんの心配そうな声が聞こえたような気がしたが、私はとうとう意識を手放した。





「ん・・・」



夢なんて見なかった。



うっすらと目を開ける。少し固めのスプリングの感触で、ここが保健室だとわかる。



「・・・わたし・・・」



「大丈夫か、奈緒」



「翔ちゃん・・・?」



穏やかな顔をした翔ちゃんが、私の顔を覗き込んでいた。



「お前倒れたんだよ。みごとにボールが頭に当たって」



「ん」



そうだった。



「ここまで・・・翔ちゃんが運んでくれたの?」



「まあな。かなり重かったし」



失礼しちゃう。



いつもならここで文句の一つくらい言ってやるところだけど、今の私は、なんだか少し変だ。



普段と変わらない翔ちゃんの冗談に、ものすごく安心してしまって。



「おい、なに泣いてんだよ?!どこか痛いのか?」



涙が止まらないよ。



「翔ちゃん、私、何か嫌なことしちゃったかなあ」



ゆっくりと体を起こす。



「は?」



「体育の時間、翔ちゃん私のこと無視した」



「それは・・・そんなこと、ねえし」



「したもん」



「・・・」



「翔ちゃんに嫌われるの、私嫌だよお」



こんなんじゃ駄目だ。泣くの止めなきゃ。



でも止まらなくて。



ベッドの端に軽く腰掛けた翔ちゃんが、少し困った顔をする。



「翔ちゃん、翔ちゃん」



「ん」



「翔ちゃん、私のこと、嫌いにならないで」



「・・・ならないよ。奈緒のこと、嫌いになんかならないから」



そう言いながら、翔ちゃんは優しく私の手をにぎってくれた。



「ごめんな。奈緒」



繋いだ手から伝わる翔ちゃんのぬくもりを感じるほど、なんだか切なくなっていく。



こんなの、ただの鬱陶しい女じゃん。



だけど、



今だけ。


今だけでいいから。



翔ちゃん。翔ちゃん。



もう少しこのまま、この手を離さないで。






はじめまして。

木村よしといいます。


『翔ちゃんによろしく』にアクセスしていただき、本当にありがとうございます。


もしも「この展開、こうした方がよかった」などありましたら、よければ批評してやってください!


皆様のご意見を参考にして、もっともっといい作品を書いていけるようにがんばります☆


これから、木村よしと『翔ちゃんによろしく』をどうぞよろしくおねがいいたします。

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