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1.保健室

1.保健室


気分が悪い。朝から、頭がグワングワンする。風邪かな。ちょっとくらい大丈夫だって思って学校来たけど、三時間目が終るころには本格的に調子が悪くなってきた。

ふらりふらりと保健室。



「先生、気分悪いよお」



額を押さえながらガラリと扉を開ける。


「あ」


「あ」



「気分悪いの?大丈夫?」



優しく問いかけてくれる保険室の先生と、もう一人。



少し茶色く染めた髪が、耳に開いた穴をうまく隠している。



「翔ちゃんもいたんだ」



「いちゃ悪いかよ」



中村翔。典型的な軟派男。



私、相模奈緒の幼馴染。



「中村くんも気分悪いみたいなの。最近風邪が流行ってるからね」



PRURURURU PRURURURU



内線電話が鳴る。受話器をとり、適当に相槌をうつ先生。



「中村くんに相模さん、悪いんだけどちょっとここを離れなきゃいけないの。すぐ戻ってこれると思うんだけど、少しの間静かに寝てられるかしら?」



「あ、はい。大丈夫です。」



「ごめんね。じゃあ、ちょっと失礼するわね」



先生が出て行くと、翔ちゃんは何も言わずにベッドの中へ。カーテンを引き、しっかりと境界線をつくる。



私も、その横のベッドの中へ。



カーテンを通して、薄暗いクリイム色の光が布団の上に落ちてくる。

少し寝ようと目を閉じる。



「なあ、奈緒。」



「・・・なに?」



カーテン越しの会話。



「お前、彼氏できただろ。」



この人は、いきなり何を言っているんでしょ。



「・・・なんで?」



「一年の菊池。」



「菊池くん?」



菊池忠義くんは、料理部の後輩。



「ん。この前の日曜日、二人で歩いてただろ。」



「ああ、あれね。今度部活で使う材料の下見だよ。」



「ふうん。」



ふうんて。



「なあ、俺さ、実はマジな奴がいるかも。」



「・・・」



「っていったらどうする?」



「どうするもなにも、今付き合ってるミホちゃんはどうするのよ」



「あんなのはじめから遊びだし。」



「かわいそ。翔ちゃんみたいなのと付き合うと、絶対泣くね」



「意外と優しいんだぞ、俺。」



「はいはい。」



「試してみる?」



「みません。」



「そーですか。ま、奈緒はもはや女じゃねえしな。」



「・・・」



がばりと体を起こす音と、しゃっというカーテンの音がが聞こえてきて、翔ちゃんが出て行くんだなってわかった。



「じゃ、俺そろそろ行くわ。」



「ん。じゃあね。」



ドアの開く音がして、また静かになる。

行っちゃった。行かないでよ。まだ私ここにいるじゃん。



ねえ、本気で好きな子って誰?私の知ってる子?


本当は、いろいろ聞きたいんだよ。


翔ちゃんからそういう話をされる度に、私の心はギュッて痛くなって、涙が出そうになるんだよ。



翔ちゃん。翔ちゃん。


好きだよ。翔ちゃんが、好きだよ。



でもね、言えない。私は翔ちゃんにとっては女じゃなくて、ただの幼馴染だもん。



苦しいよ。




翔ちゃんが大学生の女の人と付き合いだしたのはそれから一週間後のことで、別れたのはたった三週間後のことだった。





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