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龍の力でハーレムを refrain  作者: 南都乃結輝
人の終わり、悪魔の始まり
8/9

悪魔の音4ー3、5ー1



「なんでここにいるんですか?」


ていうか今・・・・・・俺の心を読んでなかったか? 死なせないって口に出してないよな?


俺の疑問を無視して早乙女先輩が問うた。


「反撃ってどういうこと?」

「明日、学校に全員の強制登校が命じられたんだ。1人でも欠けたら全員殺すんだって。僕はそれを伝えに君達に接触したってわけ」

「なっ! そんなこと出来るんですか!? だってそれは一般人への無用な魔力使用。つまり、規約違反じゃないですか!」

「それは違うよ。全員悪魔の関係者として処理すればいいだけだからね。実際桂木くんは私を庇って人を殺したんだから」


そう言った早乙女先輩の手は強く握られていた。先輩も怒ってるのか? そうだよな。だってこんなの・・・・・・絶対おかしい。

1人・・・・・・いや2人か。その2人を殺す為に何百人って人の命を危険に晒すのか。


「うん。覗き魔君はもう悪魔として扱われてるからね。最低でも君を庇った人達は殺せるね」


明日は学校に沢山の聖騎士が押し寄せるだろう。今日より激しい戦いになるのは明白だ。

完全に足でまといの俺と俺のわがままで殺さない先輩。この2人で凌ぎきれるか・・・・・・。


「無理に決まってる!」

「えっ? 何!? どうしたの?」

「いや・・・・・・何でもないです」


早乙女先輩には誤魔化して考え込む。学校に行かないなんて選択肢はない。でも普通に突っ込んだら死ぬだけ・・・・・・。

・・・・・・どうすればいいのかわかんない。


「そこで僕は覗き魔君を聖騎士に差し出そうと思う。そして悪魔君は隙を見て逃げ出す。その後は・・・・・・教会を中と外から一気に崩す。これが僕の立てた反撃のプラン。どうかな?」


変わらず怪しく笑みを浮かべる先生。

確かに・・・・・・その方法ならなんとかなるかもしれない。あくまでも可能性の話だけど。

逃げた時点で他の生徒が殺されるかもしれないしそもそも聖騎士が言ったこと自体嘘かもしれないしんだから。

でも・・・・・・これ以上俺が考えてもいい手は思いつかない。だから────賭けるしかない!


「わかりました。それでいきましょう」

「いいの? だって桂木くん、死ぬかもしれないよ?」

「はい、大丈夫です。だって先輩が助けてくれますから」


先輩にそう答えて笑った。先輩が捕まるよりは全然マシだ。俺には人間っていう強い武器があるからな。

・・・・・・信じてくれるかどうかは置いといて。


「ところで何で助けてくれるんですか? 人間なら聖騎士に手渡した方が早いし安全だと思うんですけど」


俺のふとした疑問に先生はいつまでも変わらない怪しい微笑みで答えた。


「簡単な話です。悪魔でも人間でも私の可愛いせいとなら助けないといけませんから」


口調が変わった・・・・・・? それはどうでもいいんだけど、教師だから生徒を助ける・・・・・・か。なんか凄い人だ。無駄に尊敬するよ、その考えには。


「明日は僕も手伝うから。一緒に頑張ろう」


先生が手を差し出してした。


「はい!」


不安とか焦りとか・・・・・・そういうものを隠して精一杯の笑顔を作って答えた。

明日は・・・・・・聖騎士との決戦だ。




その日の夜。

携帯の無機質な電子音が自室に鳴り響いた。


「もしもし」

「あっ! もしもし。こんばんは、春くん」


携帯から聞こえてきた日向だ。画面見ればわかることだな。

家の周りには聖騎士が彷徨いている。つまり、監視されてるってことだ。盗聴はないと思うけど警戒はした方がいいだろう。

明日のことはできるだけ避けて話そう。


「なんか用か? 勉強のことなら答えられないぞ」

「ううん。違う。その・・・・・・なんて言えばいいんだろうね?」

「そんなこと知るか。いつも通り言いたいことをはっきり言えばいいだろ」

「うん。そうだね」


そして少し間が空いて日向が続けた。


「ちゃんと・・・・・・帰ってこれるよね? 五年前と同じは嫌だよ。無茶・・・・・・しないでね」

「ああ、帰るよ。何があっても」


待ってくれてるのは桜だけじゃない。それに白もいる。白を1人にはしたくない。だから全部終わらせて、何も無かったかのように笑おう。


「じゃあまた明日な」

「えっ? 明日来るの?」

「・・・・・・? ああ。だって明日は全員強制登校だろ?」


桜の返答に疑問が浮かんだ。知らないのか? ・・・・・・いやそれはありえないだろ。

じゃあこの反応はなんだ? まるで知らないみたいな反応。なんかおかしい・・・・・・ような気がする。


「うん? そうだったかも? ははは、よくわからないや。ごめんね」


いつもの調子に戻る日向に苦笑する。緊張感がないというか・・・・・・。まあそっちの方がらしいか。


「じゃあまた明日な」

「うん! また明日ね」


改めて別れを言って携帯を切った。勝負は明日。絶対に勝つ!

目の前にある大量の礼装を眺めて決意を固めた。




やっぱりというか・・・・・・学校の周りには聖騎士が多い。

既に俺たちに気づいて礼装を構えている人もいる。話し合いって選択肢はないらしい。


「先輩は手を出さないでください。俺が道を作りますから」

「桂木くん? なんかおかしいよ? 大丈夫」

「はい! 大丈夫ですよ。ちゃんと考えがありますから安心してください」


俺は・・・・・・刀を抜いて駆け出した。もう躊躇う理由はない。剣を振り上げた男の胴を切り捨てる。

倒れた男の頭に刀を突き立てて確実に殺す。


迫ってくる聖騎士2人。腰から銃型を抜いて片方に撃ち出す。

それを躱すために横に飛ぶ聖騎士。これでコンビネーションにズレが生じる!


今の俺には他の奴の動きが遅く見える!

襲いかかってくる槍を躱して刀で断ち切った! 作り直される前に持ち主の首を落とす。

その頭を蹴り上げて後ろから来る聖騎士の攻撃を避ける。


「ひっ!」


砕ける頭を見て悲鳴を上げる聖騎士。その隙を突いて頭を串刺しにする!

目の光が消えて項垂れるの確認してから刀を引き抜いた。


「化け物かよ」

「数だ! 数で攻めろ! 5、6人ならいける!」


その叫びと共に5人の聖騎士が駆けてくる。

槍、刀、剣、斧、ハルバード。それらの一撃を全て躱す。

動きが単調過ぎる。しかも遅い。なんだろう。子供と喧嘩してるみたいだ。

簡単に避けられる。


ハルバードを、持つ聖騎士に接近して刀を刺す。それを盾にして槍の攻撃を受け止める。

そして刀を持つ聖騎士に投げつけて刀で槍の聖騎士の喉を掻っ切った!

動きの止まった刀の聖騎士の腕に刀を突き刺して銃口を頭に向けて撃ち込んだ!

地面に落ちたハルバードを拾って斧を弾き返す。重っ! なんだこれ・・・・・・。もう絶対使わねぇ!


ハルバードを振り下ろして聖騎士を両断する。不思議な感覚だ。人間相手なら負ける気がしない。相手が全員下っ端なのが原因だと思うけど。


「連絡! 早く隊長に────」

「させると思ってるのか?」


携帯を取り出した聖騎士の腹に刀を突き刺して言った。これで正門前は全員殺した。


力なく倒れる聖騎士を見送って早乙女先輩に手招きをふる。


「桂木くん、あなた本当に人間なの?」

「当たり前じゃないですか。ここにいる聖騎士が弱いんです。魔法の先生の方が強いと思いますよ、俺は」


あの人マジで殺しに来るからな・・・・・・と思い出して苦笑した。

もしかしたら聖騎士に勝てるのはあの人のおかげかもしれない。だったら感謝しないとな。




廊下や階段にたむろってる聖騎士を切り捨てて教室へと飛び込んだ。

意外と言えばいいのかわからないけど、中にいた聖騎士は1人だけ。あのダウトって言ってた女の人だ。

あとは・・・・・・黒い髪の渋いおっさん。学校の校長だったかな? が俺の席に座っていた。


「なっ? 切り抜けてきただろ。ここは魔法に力を入れてるからな。そこで学年1位を取ってる奴は半端じゃなく強いぜ」

「ふざけないでください! 他種族の教師を使うことは犯罪です。それをあなたは────」

「俺もその他種族だが? いちいちうっせぇんだよな。使えるものは使う。それでいいだろ」


楽しそうに笑う校長先生に聖騎士が憤怒の顔を向けている。怖ぇ。出来るだけ女の人には逆らわないようにしようか。

なんて・・・・・・呑気に考えてる時間はないらしい。

教室のドアに聖騎士が駆けてきた。


今ここには関係ない生徒と話を聞く限り天使か悪魔である校長先生。そして沢山の聖騎士と俺と早乙女先輩がいる。

聖騎士はこの状況を見てどう思う? 血まみれになってる俺。傷一つついてない悪魔。廊下には沢山の死体。

当然俺が殺したと考える。そして────


「降参です」


俺が諦めたら?

礼装を落として両手を上げる俺に聖騎士たちの目が大きく開かれた。

今の俺なら倒せそうだけど作戦は作戦だ。それに狭くて巻き込んじゃいけない人たちがいるこの場所で戦うのは無理がある。


「ダウト。君に降参する理由がない。戦力差で諦める性格をしているなら最初から逆らわないと思うからね」


あっさり見破られた。ここで先生の出番────なんだけど・・・・・・姿が見えない。聖騎士に阻まれてるのか?


「俺、馬鹿なんですよね。だから戦力差とかわからなくて。でも実際に見たら勝てる気しないんで降参です。少しでも刑期を短くしようと頑張りますよ」

「安心していい。君の刑期はゼロだをだって死ぬことになるからね!」


女の聖騎士が迫ってきて剣の礼装を振り上げた!

今の俺に抵抗する手段はない。白刃取りなんてできるわけないし・・・・・・。


俺目掛けて振り下ろされた剣は床から生えた氷の山によって防がれた。

女の聖騎士だけじゃない。他の聖騎士も氷によって動きを止められている。

早乙女先輩が床に手を当てて魔法を発現させていた。

これが・・・・・・魔法か。


「魔法は人間でも使えるんだよ。桂木くんも昨日使ってたじゃん。礼装を通して水を操ってたあれ。あれも魔法だよ。覚えておいて」


先輩が立ち上がって微笑む。なんか・・・・・・おかしい。何でこんな時に笑えるんだ。

先生が来ない。これは作戦の失敗を表す。つまり・・・・・・完全に詰みだ。

それでもこの状況を何とかするとしたら。使う手は一つしかない。でもそれは・・・・・・。


「ねえ聖騎士さん。私を殺していいから。桂木くんのことを見なかったことて欲しいな。彼は悪魔の私を守るために動いたの。悪魔がいなくなれば大人しくなると思うから」


やっぱり・・・・・・これだ。この騒動の中心。早乙女先輩が自主すること。


「待ってください! そんなの駄目です! だって・・・・・・もう少しじゃないですか! もう少しで────」


叫ぶ俺の口を早乙女先輩がキスして塞いだ。前と同じ感触。甘くて・・・・・・柔らかい。

離れていく早乙女先輩の顔は涙で濡れていた。


「ごめんね。ありがとう。でも・・・・・・もういいんだ。沢山夢は見れたから」

「先輩・・・・・・。でも・・・・・・」


糸が切れたように体の力が抜けていく。酷い疲労感と吐き気。あと頭痛がする。視界はチカチカと光を放っておかしくなってる。


夢ってなんだ? まだ・・・・・・まだやれるのに。沢山殺した。人を捨ててでも守りたかった。なのに・・・・・・もう・・・・・・いいって、なんだよ。


「私としてはこっちの子の方がが危険に見えるけどね。まあいいわ、初期の任務は達成。こっちの子は行方不明扱いにでもしときなさい」


女の聖騎士が俺の腹に1発蹴りを入れて早乙女先輩を連れていった。

他の聖騎士からも追撃が来る。

それを止めようとする桜の声も聞こえた。

でもそんなことはどうでもいい。

俺の中に渦巻いてる気持ち・・・・・・。

それは────


「何で来なかったんだよ! お前は!」


遅れて教室に入ってきた先生に叫んだ。相変わらず怪しく微笑んでいて、それが俺を更に激昴させる。


「聖騎士に邪魔をされていてね。遅れたんだ。済まない」

「済まないで済むかよ! お前が間に合えば先輩は!」


頭を下げる先生に掴み掛る俺を校長先生が止めた。


「待て。結果は同じだ。お前はこの場で殺されてたんだ。お前が代わりになるなんてのは無理なんだよ。それより・・・・・・お前、うちの教師か? 見ない顔だが」


校長先生が先生に向けた疑問は俺の中で線となり確信へと導いていく。


すれ違ったことすらない先生。早乙女先輩が欲しかった黒いペンダント。それは俺が持っていてこの人から貰った。昨日の公園で接触してきて聖騎士の強制登校を伝えてきた。その時に俺の心を読んだようなことを言った。そして・・・・・・校長先生の知らない人。

もし、こいつが偽物だったなら。こいつは────


「悪魔か」

「ご明察。人間の勘というのも中々面白い」


俺の呟きに先生が反応した。

この人が悪魔なら知らない先生が学校に馴染んでるのも納得がいく。精神干渉の魔法だ。

礼装を通さないで魔法が使えるなら直接触れるだけで記憶操作か出来る。教師は勿論のこと。馬鹿で先生とよく話している日向にもされていることもわかった。


「昨日の反撃っていうのは?」

「嘘ですよ。「悪魔」の片方が捕まる展開が欲しかっただけです」

「なんでだよ。同じ悪魔だろ。助けようとか思わないのか?」

「私が欲しいのは石の効力のデータだけ。馴れ合いなんてくだらないですから」


カラカラと笑う先生────いや悪魔。

全部・・・・・・仕組まれてたってかよ。全ての原因。全ての・・・・・・元凶。それがこいつか!

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