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龍の力でハーレムを refrain  作者: 南都乃結輝
人の終わり、悪魔の始まり
7/9

悪魔の音4ー2


「彼女さんとのお別れは済んだの?」


先に学校を出ていた早乙女先輩が悪戯っぽく笑った。


「はい、終わりました。でも・・・・・・キスとかしとけばよかったですね」


多分出来ないと思いますけど────と笑って答える。まあ最後の別れってわけじゃないしチャンスはある・・・・・・よな?


「早乙女先輩は何してたんですか?」

「私はガールズトーク。火野村さんと話してた」

「そうですか。なんというか・・・・・・呑気ですね。殺されそうになってるとは思えません」

「好きな人と逃避行だよ? 楽しくやらなきゃ損でしょ」


早乙女先輩が顔を赤く染めて言った。なんか新鮮だ。凄く・・・・・・綺麗だと思う。

・・・・・・って何考えてんだ。俺には彼女がいるんだってば!


「じゃあお昼でも食べに行きましょうか」


俺の中に芽生えかけた何かをかき消すように早乙女先輩の手を引いて走った。




「これからどうするんですか?」


ハンバーガー片手に早乙女先輩に問う。


「桂木くん連れて魔界に行く」

「何言ってるんですか。行くわけないでしょう」

「じゃあ人間界で亡命しようか」

「・・・・・・ちゃんと考えてください」


選択肢なんて初めからないんだけどな。だって人間界にいる限り聖騎士に狙われ続けるんだから。

一番安全なのは魔界に帰ること。でも早乙女先輩は俺を連れていくって言ってるからなぁ。俺には白がいるから行けるわけがない。


そうだ。俺の疑問をなんとかしていかなきゃ。


「先輩、なんで人に契約を迫ったんですか? 黙っていれば悪魔だってバレなかったかもしれないのに」


今の聖騎士には人間と悪魔の区別をつける手段はない。だから人間として暮らすのも不可能ではないはずだ。

なのに悪魔として契約をして人を殺した。殺されそうになるはわかっていたのに。


早乙女先輩はペンダントを握りしめて答えた。


「我慢が出来なくなったの。最初はゆっくりでいいと思ってた。好きになってゆっくり距離を縮めて告白して・・・・・・普通の人みたいに付き合えればって。でも彼女ができたって言われて頭が真っ白になって・・・・・・。適当な人を選んで忘れさせてもらおうと思っただけ」


完全に八つ当たりだ。でも・・・・・・俺のせいでもあるのか? だって俺が無神経に彼女ができたなんて言ったから・・・・・・。


「これは私の八つ当たり。だから殺されても文句は言えないの。でも桂木くんが来てくれた時は嬉しかった。守るって言ってくれた時は人を殺したことを後悔したよ」


そう続けた早乙女先輩に小指を向ける。さっきと同じ。指切りだ。


「じゃあ約束です。もう人殺しはしない。騒ぎが落ち着くまで一緒にいますから二度と契約なんてしないでください」


早乙女先輩は驚いたように目を開いてから微笑んだ。


「うん。約束する。桂木くんがいてくれるなら何もいらないから」


小指を絡める早乙女先輩と指切りをした。なんか凄く恥ずかしいこと言われたけど・・・・・・気にしない方がいいのかな。

うんうん、気にしない。そっちの方が俺のためだ。


じゃあこれからどうするか・・・・・・だな。早乙女先輩が人間界で暮らすには聖騎士を殺すしかない。はっきり言ってそれは無理だ。

じゃあ事が落ち着くまで魔界に住むか? 白を放っておくのか? そんなの無理に決まってる。

考えろ。考えるんだ。次の手を。ここで止まったら死ぬぞ。


「桂木くんがいてくれるならこれもいらないんだよね」


ペンダントを弄くってる先輩は置いといて。ていうか考えてくださいよ。

・・・・・・ペンダント? そういえばこれって悪魔の興奮剤みたいな効果があるかもって言ってたような気がする。


「先輩、そのペンダントって悪魔にとって何なんですか?」


ペンダントを指さした俺に早乙女先輩が曖昧な答えを返した。


「よくわからないんだよね。これ持ってると力が湧いてくるの。普通ならありえないんだけど体内の魔力が増えたように感じるんだ」


なんだそれ・・・・・・? 魔力が増えるなんてありえない。それは人間である俺でも知ってることだ。それが増えたように感じる?

絶対おかしい。これが興奮剤の力なのか?


「確か魔力って魂の力のことでしたよね?」

「うん。体に宿る魂の力。それが魔力。そしてそれによって成される理を覆す奇跡が魔法」


そこまでは聞いてないんだけど・・・・・・。とにかく魂の力なんて鍛えようがないものが強くなってるんだ。危険なものに決まってる。

能力を仮定するとしたら・・・・・・魂に干渉できる鉱石か。見るからに怪しいな。


あと・・・・・・先輩が知らないのも気になる。だって魔界の石なんだろ。悪魔が知らないはずない。

珍しい石なら情報が沢山あるだろうし、そこら辺にある石なら当たり前のように知識を持ってるはずだ。


「その石、捨てましょう。わからないけど危険なことはわかります。それを持つメリットが少なすぎます!」

「分かったけど・・・・・・その前に、邪魔者が来たみたいだね」


先輩が視線をあちこちに向けた。その先にいるのは白い服を着た人間・・・・・・聖騎士だ。何人いるんだ? それに・・・・・・カメラ? みたいなのも見える。

こんな形でテレビになんか出たくないぞ。


「逃げるのは無理みたいですね」

「私が戦うから桂木くんは見てて」

「嫌です」

「大丈夫。殺さないから」

「そういう問題じゃありません。女子に守られ続けてるなんてかっこ悪いって言ってるんです。魔法なら大人にも負ける自身はないですから」


刀を抜いて構える俺に早乙女先輩が微笑んだ。


「しょうがないか。じゃあ・・・・・・死なない程度に頑張って」

「わかりました!」


そう言って駆け出す。今回は不意打ちはなしだ。真正面から打ち破る!

聖騎士の槍を躱して距離を詰める。この間合いなら刀が有利だ。

刀を腕に刺す。そしてもう1本の峰で腹を殴りつける!


「がっ!」


腹を押さえてうずくまる聖騎士から槍を取り上げた。これでもう戦えない。


「悪魔が!」

「1人倒したくらいで!」


2人の聖騎士に挟み撃ちにされた!

左右から飛んでくる剣の攻撃を体を屈めて避ける。空を切った剣撃は自動販売機に当たって中身の缶やらペットボトルやらを散乱させる。

いいこと思いついた!


刀身を水に変化させてデタラメに振り回す。これで聖騎士2人は近づけまい。

だが片方の聖騎士が突っ込んできて刀の動きを止めた!


「もう1人が来る前に終わらせないといけないからね」

「これで死ね」


その隙を突いてもう1人が剣を振り上げた。

足元に水が触れた。今だ!

空いてる刀を地面に突き立てて魔力を流す。その魔力は刀身を通じて散乱したジュースへと流れていく!


「文字通り針山だな」


下から突き上げるように生えてきた刀を眺めて呟いた。刀をデタラメに振ったのは缶やペットボトルを切って中身を垂れ流させるため。そして水の刀身にしたのは振り回した時に水が飛び散って少しでも範囲が広がらせるためだ。

そのおかげで全体の3割の聖騎士は戦闘不能になっている。どれも手や足に刺さったらしい。死人は・・・・・・一応ゼロだ。


「これでお前たちも戦えない」


目の前の2人の礼装を取り上げて言う。

次は先輩に群がってる奴らだ。


再度駆け出して刀を裏返して振り上げる。

背中へと直撃した刀は聖騎士を昏倒させた!

そのまま聖騎士から奪った礼装を使って他の聖騎士の腕や足に突き刺していく!


ほとんどの聖騎士が先輩に集中してるから動きやすい。しかも下っ端だ。このままいけばなんとかなる。


そう息巻いていると早乙女先輩の後ろで棍棒を振り上げてる聖騎士が視界に入った。

やられる・・・・・・! ここから届くか!? いや・・・・・・届かせる!


「うらああああああああああ!」


叫びと共に動いた足は嘘みたいに軽い。そして聖騎士の動きは止まってるのかと思えるくらいに遅い。


刀を強く握る。ためらってる時間はない! このまま────斬る!

振り上げた刀は聖騎士の腕を断ち切って鮮血を浴びる。片腕を斬ったくらいじゃ棍棒は地面に落ちない。なら・・・・・・!


もう1本の刀を聖騎士の腹へと突き立てる!

振り上げられた棍棒はようやく地面に落ちた。そして聖騎士は・・・・・・力なく倒れて血だまりを作った。


「はあ・・・・・・はあ。殺・・・・・・した。俺が・・・・・・?」


早乙女先輩を守るためだった・・・・・・。でも殺した。

視界が赤くなって心臓の動悸が跳ね上がる。


「桂木くん! こっち!」


早乙女先輩に手を引かれてその場を去った。

聖騎士は誰1人追ってくることはなかった。




「大丈夫? しょうがなかったんだよ。だからあんまり考えないで」

「大丈夫です。覚悟はしていたことですから」


公園の水道で頭から水を浴びて落ち着いてから返した。

武器を使って戦ったんだ。殺すこともあるだろう。早乙女先輩を守るためだ。しょうがない。


「すいません。俺が約束を破ることになって」

「ううん。気にしないで。桂木くんが無事ならそれでいいから」


そう言ってくれる先輩に安堵の気持ちを抱きながら嘆息した。


「これで俺も抹殺対象ですか。元々そうみたいな感じでしたけど」


でもこれで完全に迷いは消えた。ていうか吹っ切れた。

俺は先輩を守る。絶対に・・・・・・死なせない!


「良い決意だね。やはり君は僕の見込んだ生徒だよ、桂木君」


後ろから声が聞こえて飛び退いた。

そこにいたのは・・・・・・あの先生だ。


「先生・・・・・・」

「やあ。今日は朝からピンチだったみたいだね。でももう大丈夫。反撃の兆しが見えたから」


そう言った先生の顔は怪しく微笑んでいた。

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