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龍の力でハーレムを refrain  作者: 南都乃結輝
人の終わり、悪魔の始まり
6/9

悪魔の音4ー1


「なんで助けたの?」


次の日の朝。

金髪に戻った早乙女先輩が俺に問うてきた。


「なんででしょうね? ここで逃がしたら後悔するってなんとなく思っただけです」


姿が違っていても、性格が変わっていても、早乙女先輩だって思ったから。だからやっぱり守りたいって感じたのかもしれない。

考えてもわからないけどな。


「変なの」

「それは俺が一番わかってますよ」


からかってくる先輩にそう答えて時計を見る。もう八時だ。そろそろ学校に行くか。


「学校行きますよ。気になることがあるんで」

「行ったら殺されちゃうかも?」

「俺が守ります。・・・・・・あと口調変えるのやめてください。話しにくいです」


そう言って部屋を出る俺に早乙女先輩が後ろから抱きついてきた! 背中に柔らかい物が! これは・・・・・・つけてない!

って何考えてんだ俺は! 彼女がいるんだ。こういうのは駄目だ。

頭を振って煩悩を払拭する俺に早乙女先輩が囁いた。


「ありがと。そういうところ・・・・・・好きだよ」

「えっ? それってどういう・・・・・・」

「なーいしょ。じゃっ先行くね」


駆け出していった先輩を見送ってため息をつく。俺の馬鹿野郎。何期待してんだ。早乙女先輩は・・・・・・ただの憧れで恋とかそういうのじゃないだろ。


「学校行くか。そして・・・・・・桜と話そう」


そうすれば少しは気分も晴れるだろう。なんとなく・・・・・・そう思っていた。




学校は・・・・・・封鎖されていた。

いや封鎖ではないのかもしれない。普通に入れるからな。でも中に聖騎士が彷徨いていて教室の一つ一つに結界が張られて出られなくなっている。


それを教室に入ってから気づいた馬鹿な俺は結界内で聖騎士に囲まれていた。


「君は昨日の妨害者だね。悪魔をどこに隠したか。そして何故妨害したのかを教えて欲しい。そうしたら危害は加えない」


1人の聖騎士が優しく語りかけてきた。逃げ場は・・・・・・後ろの窓だけ。飛び降りて生きられる保証はない。

つまり・・・・・・完全に退路は絶たれてるってことだ。


「さあ? なんのことを言ってるかわからないです。俺は昨日家にいましたから」


とぼける俺に聖騎士は舌打ちをして近くにいた白泉を引き寄せた。


「この子が教えてくれたんだけど。昨日悪魔を探すって息巻いてたらしいね。それなのに家にいたのかい?」


あいつ・・・・・・話したのか! いや、脅されたのか。腰に見えてんだよ、本物のナイフが。

今度は俺が舌打ちをして答える。


「言いましたけどそれが何か? 見つけることは出来ませんでしたから諦めただけです。おかしいことは無いと思いますが」


礼装は鞄の中だ。白泉を傷つけないようにするには・・・・・・。動かないことが一番いい。ナイフを取られたら白泉が危ないから。


「君は確か・・・・・・あの黒いペンダントの持ち主だよね。なら悪魔との関係はあるはずだ。もしかしたら契約をしたのかもしれない」

「それはどういう意味ですか?」

「言わなくてもわかるだろう? 悪魔とそれに関係した者は等しく排除する」


つまり、俺は初めから殺す予定だった・・・・・・と。凄いこと言われたな。殺されて当たり前のことをしたんだけどさ。


聖騎士の数は七人。どうやっても勝てるわけない。

しかも白泉って人質付きだ。普通に逃げた方がいい。でも退路はない。


「絶体絶命か。・・・・・・わかりました。全部話します。だから白泉を話してくれませんか?」

「話の後だ」


当然のように拒否された。やっぱりこれは無理か。

聖騎士からしたら俺は悪魔に近づく大きな1歩だ。悪魔の知り合いである俺を利用すれば早乙女先輩を殺すことなんて容易にできるから。


「まずは悪魔をどこに隠したか・・・・・・ですよね。それは知りません。途中で逃げられましたから」

「ダウト。君が殺されてない時点で悪魔と君は深い関係であることはわかる。私達に殺される恐れがある君を残して逃げるとは思わない。契約したら尚更だ」


聖騎士が腰のナイフを触る。次はないらしい。

ならこっちも勝負だ。白泉を見殺しにするのは嫌だし早乙女先輩を裏切るなんて論外だ。


少しだけでも隙ができれば・・・・・・礼装を取り出せる。そして白泉を掴む手ぐらいは斬れる。

その後のことは・・・・・・その時考えるか。


次は隙を作る方法だな。これは簡単だ。だって────


「悪魔、早乙女渚なら後ろにいますよ」


早乙女先輩がドアの前で手を振ってる。あの人何やってんだ! さっさと逃げたらいいのに・・・・・・。


「なっ! いつの間に結界を!」


でも聖騎士の意識はあっちに向いた! これで────


「やっと・・・・・・助けられるな」


聖騎士の手を切り裂く。白泉から離れた腕に更に切り傷を与えて窓から飛び出す!


後ろから結界が割れる音が響いた。それと同時に早乙女先輩に抱きしめられる。


「無茶しすぎだよ。殺されるかもしれなかったのに」

「すいません。でも無傷だからいいじゃないですか」


教室から聖騎士が叫ぶ声が聞こえた。追ってくるのかよ! なんか凄い執念だな。




暫くして聖騎士を振り切った俺たちは学校に戻って火野村先輩と接触した。

昨日のテレビを見た限りだと火野村先輩は早乙女先輩のことを知ってるみたいだったから悪魔と関係ある人だって考えたからだ。


「まず・・・・・・感づいてると思うけど私は悪魔よ」

「いや知りませんでしたけど。そうだったんですか」


自分からバラした先輩に頷いて答えた。関係あるとは思ってたけどまさか悪魔だったとは・・・・・・。

あれ? じゃあもしかして────


「インキュバスって・・・・・・」

「それは私で間違いないよ。火野村さんはもっと力の大きい悪魔。最上級って呼ばれてるくらいにね」


早乙女先輩が俺の言葉を遮って言った。それは違うのか。ていうか早乙女先輩はインキュバスは自分だって言ってたんだから違うのは当たり前だよな。


「私は別の目的があるのよ。だから早乙女さんに口を出すつもりは無いわ。やってることは契約と同じだもの」

「契約・・・・・・? それって確か願いを叶えるっていう?」

「ええ。悪魔は人間と契約して力を高める。ただ淫魔が契約する内容がそういうのが多いってだけよ」

「じゃあ早乙女先輩は人を襲ってレイプしたわけじゃないんですか?」

「そんなことやったら他の悪魔に殺されるわ。考えられるとしたら契約の対価が死ぬことだった・・・・・・かしら」


火野村先輩の説明を聞いてなんかホッとしたような気分になった。なんだろう・・・・・・この安心した感じ。変だな。

それと火野村先輩が悪魔が悪魔なら協力できるんじゃないのか? 早乙女先輩を逃がすことへの助力と火野村先輩の目的の手助けで。


「それは無理ね。私の目的は天使よ。人間が口を出していい問題じゃない。インキュバスが敵うものでもないわ」

「なんでわかったんですか?」

「この状況で雑談するような子じゃないことくらいわかるもの。悪魔と関係を持ってることが判明した私に助けを求めてくるなんて真っ先に思い付くじゃない」


余計なことはしないと嘆息する火野村先輩に苛立ちを覚える。悪魔ってこうなのかよ! 同じ悪魔なのに・・・・・・同じ仲間が殺されそうになってるのに何もしないのか。


「わかりました。早乙女先輩は俺が何とかします」

「ええ。そうしてくれると助かるわ。貴方達は私にとっても都合がいいもの」

「先輩、もう行きましょう。聖騎士が戻ってくるかもしれないんで」


早乙女先輩の声を聞かずに手を引っ張って教室を出た。




「・・・・・・財布。教室に忘れた」


昼になって何かを買おうとして気づいた。そういえば鞄学校だったな。


「取りに帰ろうか。私も荷物あるし」

「そうですね。金がないと話になりません」


早乙女先輩の意見に従うことにした。


・・・・・・こういう時に限って聖騎士が戻ってきてる。数は朝より少ないみたいだ。


「普通なら見張りを付けるよね。どうやって突破しよっか?」

「強行突破しかないですよね。見つかったら殺されるんですから」


先輩にそう答えて礼装を握る。人を倒す為に使えるようになったんじゃないんだけどしょうがないよな・・・・・・。


建物の影から駆け出して聖騎士に迫る。

完全に虚を突いた一撃は聖騎士に抵抗の暇を与えずに意識を奪い去った。

その場にいる聖騎士はあと3人。全員俺に気づいて戦闘態勢をとっている。


その内の一人とつば競り合う。うわっ! 力強っ! 刀が折れそうだ。

折れる刀を捨てて攻撃を避ける。その一撃は地面を砕いて止まる。

武器の形状は斧だ。あんな礼装あったのか。初めて見たぞ。


斧の追撃を後ろに飛んで躱す。もう反撃の手段がない。他の礼装も持っとくべきだった! 完全に俺のミスだ。

幸い動きは大振りで躱しやすい。この隙を突いて逃げられれば────


横からパンチが飛んできて聖騎士を吹っ飛ばした!

どうやら俺の作戦は無駄に終わったらしい。他の聖騎士も意識を無くして倒れていた。


「こんなの一突きで寝かせればいいのに」

「それが出来たら楽なんですけどね・・・・・・」


拳を握って笑う先輩に苦笑を返した。やっぱり悪魔って怖ぇ。先輩より強い火野村先輩はどうなるんだよ。パンチで家でも砕くのか?


「さすがにそれはないか」

「ん? 何か言った?」

「何も言ってませんよ。じゃあ別行動ってことで」


早乙女先輩と別れて教室に向かった。




「桂木! お前よく戻ってこれたな。大丈夫だったのか?」


教室に入ると白泉が駆け寄ってきた。


「大丈夫。早乙女先輩のおかげで無傷だ。ここには財布を取りに来ただけだから直ぐに消えるよ」

「そ、そうか・・・・・・。ごめんな。昨日のこと話してさ」

「いいよ、別に。過ぎたこと気にしたってしょうがないし。それより白泉が無傷で良かった」


頭を下げる白泉に笑って答えって鞄を漁る。中身が変わってる? 財布は・・・・・・あるな。ならいいや。多分聖騎士が手がかりを探したんだろう。

財布の中も変化なし。キャッシュカードもある。なら十分だ。


あとは・・・・・・前の礼装だ。さっきの戦いで代わりがあった方がいいってわかったからな。持っておこう。


「白泉、悪いんだけど鞄を家に持ってて欲しい。家の前に捨てておけばいいから」

「いいけど・・・・・・なんでだ?」

「聖騎士と鬼ごっこするなら鞄は邪魔なんだ。だからここに置いとくしかない。でもほら、学校に置きっぱって嫌だろ。だからさ」


届けて欲しいと答えて礼装をポケットに突っ込んだ。これで少しはマシに戦えるかな。次は俺の覚悟の問題だ。

最悪の場合・・・・・・殺すことも考えておかなきゃいけない。


「じゃあ俺は行くから。じゃあな」

「待ってください!」


教室を出ようとする俺の腕を桜が掴んで止めた。嬉しいけど嬉しくない状況だ。今は女の子の手の感触が・・・・・・とか言ってる場合じゃないから。


「あなたが・・・・・・悪魔を助ける理由なんてあるのですか?」


桜が沈痛な面持ちで問うてきた。桜は早乙女先輩のことを知ってるはずだ。つまり見捨ててもいいんじゃないのかって言ってるらしい。


「理由なんてどうでもいいだろ。ただ信じたいから助ける。それだけで十分理由になる」

「そんなのおかしいです。だって人を殺したんですよ! そんな人を信じて春まで死ぬことはないじゃないですか!」


桜の手を力が入った。心配してくれてる・・・・・・。嬉しいけど。それは違う。


「俺は死なない。そして早乙女先輩も死なせない。ほら、あれだ! 絶対に帰るから待っててくれ・・・・・・ってやつ。だから約束だ。絶対に帰るから」


叫ぶ桜にそう答えて小指を出す。

その指を桜の小指と絡めて指切りをして思う。帰る・・・・・・か。どうやったら帰れるんだろうな。

聖騎士を殺せばいいのか? それとも・・・・・・。


俺の中で疑問が生まれた。

そもそも何が原因で早乙女先輩が携帯をする羽目になったんだ。あと・・・・・・先輩が黒いペンダントを求めた理由。

聖騎士との関係は解決出来ることじゃないかもしれない。でもこの2つならなんとかなるんじゃないのか?


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