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龍の力でハーレムを refrain  作者: 南都乃結輝
人の終わり、悪魔の始まり
3/9

悪魔の音、2ー1



次の日の朝。

俺はパンをかじりながらニュースを見ていた。


「犯人はインキュバスの悪魔だと・・・・・・」


どうやら近くで殺人事件が起きたらしく専門家が犯人は悪魔だと偉そうに話している。


五年間に突如として現れた悪魔は今も尚人間を苦しめている。

勿論人間も対策してるんだけど・・・・・・。


「聖騎士が何をしているのか知らないがこれ以上国の予算を無駄遣いするのはやめてくれ!」


おじさんが叫んだ通り全く役に立ってないんだ。

普通の人間である聖騎士が悪魔になんて適うわけもなく、戦っても死人が増えるだけだしそもそも聖騎士が来る前に悪魔は逃げるんだよね。

だから聖騎士は無能なんて言われる始末だ。


テレビを見ているとリビングに妹が入ってきた。


「おはよ、お兄ちゃん」

「ああ、おはよう。さっさとご飯食べて学校行きな」

「うん」


妹────桂木白かつらぎしろは頷いてパンをテーブルに座ってパンを食べ始めた。


銀色の腰まで伸びた髪。紅い色の瞳。

俺には似てない美人さんだ。

将来が心配になる。変な男に引っかからないように注意しないといけないよな。

白はまだ小学4年生だから俺が守らないと・・・・・・。


近くで事件が起きたなら白が巻き込まれる可能性もある。

学校は普通にあるから送り迎えはするべきか・・・・・・。

うーん、悩む。小学生だけで外歩かせるのは危ないよな。

しょうがないか・・・・・・。


「白、今日は一緒に学校行こうか。帰りも迎えにいくから」

「ほんとに!? じゃあ遅く出るの?」


驚いたような声を上げる白にため息をきつつ答える。


「鞄持ってあげるからいいだろ。走れば遅刻しないし」

「走らなきゃ遅刻するの間違いだよ! それにお兄ちゃんは絶対に遅刻しちゃうよ?」

「俺は大丈夫だ。死ぬ気で走るから」


そう言って立ち上がる。

まだまだやることは沢山ある。

まずは・・・・・・洗い物だ。




8時半ぎりぎりの時間。

俺と白は小学校の前にいた。


「あれ・・・・・・どうすんだ?」

「私にはわからないけど・・・・・・放っておくんじゃない?」


校門に佇む数人の女の人を指さして俺と白は疑問の声を上げた。

昨日の悪魔による殺人事件は近くで起こったから休校にしろって抗議してるらしい。

まあ問題はそこじゃなくて・・・・・・。


「入れないね」

「そうだな」


その人たちが校門を塞いでることだ。

それによって入れなくなった生徒たちが校門前で立ち往生している。

更にそれによって俺と白は遠くで人が捌けるのを見ている。


もう8時半。

完全に遅刻だ・・・・・・。

どうすんだよマジで。


「そうだ! 裏門から入ろうぜ。そこなら親もいないと思うからさ」


手を叩いて提案する俺に白は頷いて答えた。


「うん、わかった!」


少しして裏門に移動した俺たちを出迎えたのは父親らしき人たちだった。


「すいません。通してくれませんか? 妹が遅刻するんで」

「今日は休校だ。悪いが帰ってくれ」


手をシッシッと振るう男に苛立ちを覚えながら次の手を考える。

正門は母親たちがいるから無理だ。

裏門が無理ってことは他の所も無理か・・・・・・。


第一授業を早めに終わらせて集団下校させるって言ってんだから納得しろよ。

悪魔も遠くに逃げたんだからさ。大丈夫だろ。


「お兄ちゃん、もう学校行っていいよ」


白が俺の制服の裾を摘んで言った。

もう35分。既に遅刻している。

さっきから携帯が震えてる。桜と日向が心配してくれてるんだと思う。


だがそんなことは気にしてられない。

白の頭を撫でて笑う。


「そんなことできるわけないだろ。ここで学校が開くのを待ってた方が危ないんだなら。事情を話して一緒に待ってるよ」


携帯の電源を入れると新着メールが・・・・・・24件もある!

うわっ怖っ! たったの5分でこれかよ!

とりあえず桜に学校のことを話して・・・・・・。

よし、返信完了。これで大丈夫だ。


さてと、これどうするかな。

多分学校側が折れて休校になるよな。

親も大変だな。会社遅れてまでこんなことするなんて。


考え込んでいると隣に赤い髪の女の人がやってきた。


「あらあなた・・・・・・ちょうど良かったわ。鈴鳴学園ってどこにあるか教えてもらえるかしら?」

「すいません。携帯のマップとか見てくれませんか。今はそれどころじゃないんで」


そう答えて父親たちに向き直る。

こうなったら・・・・・・強行突破かな?


鞄の中の礼装に手をかけて息を吐く。

峰打ちすれば大丈夫だ・・・・・・だから!


刀を引き抜いて男を殴りつける。

氷でできた刀身の峰が男の体勢を崩す。


「なっ! お前────」


口を開いた男の顎に刀を打ち込んで昏倒させる。

そのまま体を回転させて首元に刃を当てる。


「通してください。もう時間が無いんです」

「お、お前! 何をしてるのかわかってんのか!? これは・・・・・・犯罪だぞ」

「じゃあ学校に押し寄せて生徒の登校を阻むのは犯罪じゃないんですか? ・・・・・・さっさと消えろ、糞親が」


俺の脅しが効いたのか一目散に逃げていく大人たち。

それを遠目で見ていたのか小学生が駆け寄って感嘆の声を上げた。


「おお! すげぇ、かっこいい!」

「今の魔法だぜ! 初めて見た!」

「もう一回やって! もう一回!」


おお! まさかの人気。

かっこいいって言われたぞ!

かっこいいか・・・・・・。自慢できるかも。

いや、バレたら退学だこれ。

魔法の無許可使用は犯罪だからな。


「また今度な。ほら、もう時間ないぞ。さっさと中に入りな」


礼装で裏門に掛かってる鍵を斬って門を開いた。

それを見た小学生がまた感嘆の声を上げる。

もういいから入ってくれ!


小学生を見届けて正門の方を睨む。

こっちを指さして叫んでるみたいだ。

ああ・・・・・・めんどくさいことになってる。

あれも斬るかな。


「やめなさい。刀じゃ難しいでしょ」


刀を取る手を赤い髪の女の人が止めた。


「じゃあどうするんですか? その内数人こっちに来ますよ」

「これを使うのよ」


女の人が鞄から銃型の礼装を取り出した。結局実力行使ですか。

でも・・・・・・銃型ならここからでも攻撃できる!

ナイスアイディアだ!


「はい、貴方が使って」


何故か礼装を手渡された。

女の人は微笑んでいる。


「どういうことですか?」

「私使い方知らないのよ。貴方は使い慣れてるみたいだから貴方が使って」


・・・・・・嘘だろ。

今時礼装の使い方知らない高校生がいるのかよ。小学生でも知ってるぞ。

文句を言っててもしかたない・・・・・・、やるか。


礼装を構えて狙いを定める。

しっかりとイメージをして・・・・・・引き金を引く!


細く小さい魔力弾が勢いよく発射される。

それは加速して一人の女の人の顔面に直撃した!

倒れる女の人。周りは騒ぎ出し始める。


「やべっ! 逃げましょう!」


女の人の手を握ってその場から離れる。

女の人は何故か笑っていた。


その後学校に着いた俺たちを待っていたのは教師の雷だったのは言うまでもない。




昼休み。

説教が終わって疲れ果てた俺に白泉が話しかけてきた。


「なあ桂木知ってるか? 三年に転校生が来たんだってよ」

「いや知らない。ていうかどうでもいい。俺は疲れたよ。少し寝る」


白泉が机に突っ伏そうとする俺の襟を掴んで止める。


「その人がさ! 超美人なんだって! スタイルがな、こう・・・・・・ボンッキュッボン! みたいな!」


手を大きく振りながら説明する白泉に欠伸をしながら言う。


「それなら今朝見た。見たことない人だったけどスタイルが凄い良くて美人の人」


結局あの人は誰だったんだろう?

1年生か? まだ四月だから知らない人も多いからな。

そもそも他の学年を知る必要はないが・・・・・・。


「私知ってるよ! 火野村先輩だよね?」


桜と一緒に肩まである髪の女生徒が話を加わってきた。


俺の幼馴染みの如月日向きさらぎひなただ。

元気が良く周りを引っ張ってくタイプの子だ。本人は自覚ないみたいだけどな。


「そうそう! 一回見てみたいんだよな。生徒会長と同じくらい人気があるって話だぜ」

「転校初日から?」

「転校してきたのは昨日なんだってよ。だから2日で人気が二つに割れたってことだな」


俺の質問に白泉が自慢気に答えた。なんでお前が自慢気にしてるのかは知らないけどこの学校で一番の人気を誇る理沙と同等か。

なんか気になる・・・・・・。

それに白泉が美人だって言うならほんとに美人なんだろう。

こいつは女を見る目は厳しいからな。俺の目で見る可愛い子はこいつにとって大したことないらしい。

流石イケメンだ。ハードル高い。


「なっ? 見てみたいだろ?」

「そうだな。凄い興味ある」

「よし、じゃあ早速行こうぜ!」


俺の了承を得て白泉が叫んだ。

そして俺も一緒になって叫ぶ。


「おー!」


そんな俺たちを見て桜が呟いた。


「なんというか・・・・・・春は変わりませんね」


ごめんなさい! でも気になるんだ。ボンッキュッボンの美人!


暫くして白泉に連れられたのは早乙女先輩のクラスだった! そういえば昨日クラスの人が騒いでたな。

転校生のことだったのか。


「うわぁ、やっぱすげぇな。どうやって見ようか」


白泉が人集りを見て呟いた。


ちなみに俺は諦めかけてる。

あの人集りはちょっとね・・・・・・。

あれに突っ込むなら早乙女先輩と話してた方がいい。


「当たって砕ければいいんじゃないのか?」

「おっ! そうだな! じゃあ行くぜ!」


俺の言葉を間に受けて白泉が群れに突貫していく。何故か俺を引っ張って・・・・・・。


「なんで俺も行くんだよぉぉぉ!」


俺の叫びが人の騒ぎの中に木霊した。


人集りの中は修羅の道だった。

体中に肘とか拳が当たって服を引っ張られる。

痛っ! 今殴られたぞ! 誰だ今殴ったの!


もみくちゃにされて体勢を崩したところを誰かに押されて前のめりに倒れる。

もう最悪だ。ほんとにやめてくれ。なんで俺がこんな目に・・・・・・。


「あら? 貴女さっきの・・・・・・」

「桂木くん? また謝りに来たの?」

「・・・・・・えっ?」


倒れた俺の目の前にいたのは今朝出会った赤い髪の女の人と早乙女先輩だった。

見ないと思ったらここにいたのか。


それより・・・・・・圧巻だ。

赤い髪の人のおっぱい! 超デカイ! 90後半はあるんじゃないのか!?

ボンッキュッボンって話は本当だった・・・・・・。


「駄目だ。また変なこと考えてる」


女の人を見てる俺を見て早乙女先輩が呟いた。


「この子、早乙女さんの知り合いだったのね。てっきり友達がいない子なのかと思ってたわ」

「いるよ! 沢山・・・・・・ではないけど友達くらいいます!」


赤い人に激しくツッコミを入れて床に座り込む。

この図は・・・・・・何かおかしい。椅子に座る二人の先輩と床に座る俺。なんの辱めですか?

でもスカートの中身が見えそうだ。役得だ・・・・・・。


おっと、自己紹介しなきゃいけないよな。初対面だし。


「二年の桂木春です」

「昨日転校してきた火野村桜花よ。よろしくお願いするわ」


お互いに簡素な紹介を済ます。

火野村先輩か・・・・・・。綺麗な人だ。

俺なんかじゃ絶対に関われないよな。

白泉には感謝しなきゃ。姿は見えないけど。


「そういえば先輩、昨日大丈夫でしたか? なんか気分悪くしたみたいで」

「えっ? うん、大丈夫。ごめんね、急に口数減らしちゃって」


結局あの後話すこと自体あまりしなかったんだ。

恋愛の話は苦手なのかな?


謝りあって気まずくなった雰囲気を変えるように話題を振る。


「ニュース見ました? あの、悪魔の殺人事件のやつ」

「そんなのあったの? 今日寝坊しちゃってニュース見てないんだ」

「そうなんですか。インキュバス? って悪魔の仕業らしいですよ。誰なんですかね。初めて聞く悪魔ですけど」

「インキュバスは淫魔のことね。サキュバスとも呼ばれるわ」


火野村先輩の説明に頷きつつ疑問を口にする。


「でもなんでその淫魔が人間を殺すんですか? 淫魔ってことはあれですよね?」


セックスとかするんですよね?

女性相手に直接言わないよ。さすがに失礼だからな。

俺が言いたいのは殺さずにセックスだけする悪魔なんじゃないのかってことだ。


「行為を行った後に殺したのよ。だから人間はインキュバスだとわかったんじゃないかしら」

「なるほど。それなら納得できますね」


じゃあなんでそんなことするのかってことは気にしない方がいいんだろう。

そこまで深く知る必要もないし。


「はーい。どいてどいて! 先生が通るからね」


その声と共に人の波を掻き分けて来たのは昨日の先生だ。

何故か白衣を着てる。


「初めまして、お嬢様。お目にかかれて光栄です」


先生は火野村先輩にそう言って頭を下げた。


「なんのことかしら? 私は一般庶民の生まれよ」

「・・・・・・そうでしたか。これは失礼致しました。私の知っている人に似ていたので」


違うと言われたのに恭しい態度はやめないんだな。

あとこの人早乙女先輩を睨んでる気がする。案外問題児なのか?


「それと桂木君、君にはこれをあげるよ」


先生に黒い宝石が付いたペンダントを貰った。

なんでなのかは見当がつかないけどね。


「なんですか、これ?」

「退魔のペンダント。インキュバスの事件があっただろう? 覗きをするくらいエッチな君には必要かと思ってね。持ってきたんだ」


余計なお世話だ。

その言葉を飲み込んでお礼を言って貰うことにした。

貰えるものは貰っとく。これは大事だ。


「ところで桂木くん。反省文は終わったのかな?」

「うぐっ! 終わって・・・・・・ません」


焦る俺を見て楽しそうに笑う先生。

この人絶対に性格悪い!

まったく手をつけてないオレも悪いんだけどさ。


「早く提出してね。じゃないと・・・・・・後悔するかもよ。じゃあね」


意味深な言葉を残して先生は去っていった。

後悔・・・・・・? なんで?


その意味を考えてるうちに昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。


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