引き金はあなたの手で
「テメエふざけてんのか! 追い込めなかったってどういうことなんだよっ!」
目の前でこれから繰り広げられるであろう、お決まりのやり取りを想像し、桐生 黎二は革張り椅子からゆっくり立ち上がった。
桐生が属している鷹桜会は、2000人の構成員を抱える中規模の指定暴力団。組長の桜木は、田所組の舎弟を務めている。いわゆる二次団体、というやつだ。
その鷹桜組の舎弟であり、支部の一つである関東第二鷹桜会の頭を務めているのが桐生なのだが、30になるかならないかの若さで一つのシマを任されているのだから、なかなかの遣り手だといえる。
武闘派揃いの構成員を任されている第一鷹桜会の三島と違い、比較的平和にシノギをあげているので、トラブルは少ないはずだった。
土木建築業、不動産業、金融業が暴力団の主なフロント企業だと言われているが、売春や賭博、薬物取引などの非合法な仕事よりは、実入りが少ないのが悩みだ。まっとうに働くと、ごっそり税金でもっていかれる。抜け道がないわけではないので、そこを何とか工夫するのも桐生の仕事の一つではあるのだが。
「すいませんっ、兄貴。でも、代わりのカタは取ってきてあります」
「どうせ女だろ。どんな上玉だろうが、一人沈めたところでたかが知れてんだよ。んなことより、逃げられたってことの方が問題なんだよっ!」
事務所に詰めていた若い衆に思い切り蹴り飛ばされ、そう小さくはない体が壁に叩きつけられる。金貸しでの失敗は許されない。取立てはチンピラにでも出来る簡単な仕事だから尚更だ。
桐生は、暴力が嫌いだった。
暴力団員の癖に何を、と嗤われるかもしれないが、恐怖が理由ではない。
自分以外の人間の飛び散る血、吹き出す汗、溢れる涎。ぬめぬめとしたそれら全てが、桐生の嫌悪の対象だった。
暇があればボクシングジムに通い体を虐め抜いている彼は、道具の扱いだけでなく人を殴るのも得意だ。まず手加減、というものを知らない。結果殺してしまうことにも抵抗はない。
初めて人を殺した22の時から、まっとうな死に方が出来るとも思っていなかった。他人にやったことは必ず自分に返ってくる。手足を切り落とされコンクリートに詰められて海に投げ捨てられるのがお前の最期だ、と誰かに未来を教えてもらったとしても、そうだろうな、と思うだけだ。
ただ、拳が汚れるのには毎回耐え難い気持ち悪さを感じた。
「いくら貸してた」
桐生が口を開くと、その場が静まり返る。
ファッションから顔の造作から何から、パッと見、ヤクザにはとても見えない桐生だが、怒らせるのは得策ではないとここにいる全ての人間が知っている。
どことなく幼い甘い顔立ちに惹かれ、まだ桐生が駆け出しだった頃、男でもいいと口説きにかかった奴らがみな、顎を割られたり逆に鉄パイプを突っ込まれたりと、散々な目にあわされたというのは有名な話なのだ。
「300です」
「たったそれだけで逃げ出したのか。そりゃ、確かに舐められてんな」
桐生は眉を寄せ、壁際にへたりこんでいる若造の前まで歩いていくと、音も立てずかがみ込んだ。
「必ず、見つけ出せ。どれだけ痛めつけようと構わないが、腹は殴るな。臓器が傷むからな」
薄く微笑んだ桐生に、男は竦み上がった。
ひたすらコクコクと首を上下させる。
口を開かないのには理由がある。一度、至近距離で喋った若い衆の唾が、桐生に飛んでしまったことがあった。桐生の潔癖症は病気だ。近くに置いてあった花瓶でめちゃくちゃに殴られ、その男は三ヶ月も病院で過ごす羽目になった。
「その女を、後でマンションの方へ寄越せ。俺の部屋には入れるなよ」
そして、次の日。
顔を腫れ上がらせた若い女が、桐生の所有するマンションの一室に連れて来られた。足取りはおぼつかない癖に、目だけは爛々と輝いている。生意気そうなその目に、桐生は振るわれた暴力の原因を察した。
「おいおい。これじゃしばらく売り物になんねえだろうが」
桐生が呆れ声を上げる。
連れてきた若い衆の一人が、申し訳なさげに身を縮めた。
「すみません。止めに入ったんですが、草尾の奴がカッとなっちまったみたいで」
「あいつか。……お前から言い聞かせとけ。嬲っていいと俺が許可を出すまで、きっちり待てってな。聞き分けないようなら、落とし前をつけさせろ。二度目はねえぞ」
「はい」
二人きりになり、奇妙な沈黙が辺りに満ちる。
助けて、や、これからどうなるのか、といった泣き言を待ってみたが、いつまでたっても女が口をきかないので、桐生が折れることにした。
散々いたぶられた後だというのに、女に許しを請うような媚びは見られない。そのことにも興味をひかれる。
「……で? 逃げたやつとはどういう関係?」
「――幼馴染です」
これ以上抵抗しても無駄だと諦めたのか、女は素直に返事をした。
これまた予想外の答えに、桐生はパチクリと目を瞬かせた。
彼が素の表情を滅多にみせることはない。どこぞのアイドルに似てると指摘されて以来、つとめて不機嫌な顔を保つようにしていたからだ。女も驚いたのか、じっと桐生に見入った。
普段だったら不愉快に感じるところだ。
だがなぜか、その子供のようにあけすけな視線は桐生の神経を苛立たせなかった。
「おまえ、血縁でもない男の保証人になったのか」
「私たちに親兄弟はいません。同じ孤児院で育ったので、彼が私の家族です」
切れた唇が痛むのか、滑舌が悪い。
舌っ足らずな話し方が女の発している威嚇のオーラとちぐはぐなせいで、桐生はどこか落ち着かない気分を味わった。腫れ上がった顔から目が離せない。
「ふーん。じゃあ、家族に裏切られたんなら、本望だよな」
揶揄するように口にすると、女の瞳がみるみるうちに暗く陰る。
身体的な暴力には耐性があるが、よほどその幼馴染とやらを信頼していたんだろう、精神的にえぐられるのは堪えるようだった。
「借りたモンは返さなきゃならない。そのくらい、ガキでも分かんだろ。そいつが見つかるまで、お前にも借金返済を手伝って貰うことになる。……男とヤったことは?」
「なんでそんなこと、あんたに言わなきゃならないの」
桐生は聞えよがしな溜息をつきながら彼女に歩み寄り、革靴のまま白い膝裏を軽く蹴った。
バランスを崩し倒れこんだ女の背中を適度な力で踏みつけ、髪を掴み自分の方を向かせる。
サラリとした髪からは微かに石鹸の香りがした。
「まだ今の状況がわかんねえのか。その幼馴染とやらがカタギじゃないとこから金借りた挙句、トンズラこいたからに決まってんだろ。処女なら先にオークションにかけるし、違うならソープ行きだ。そっちは男を喜ばせるテクを仕込んでからになるから、当分寝れねえぞ、お前」
「警察に行って、あんた達にされたこと全部言ってやるっ」
「そうだな。駆け込めりゃいいな」
靴の下で顔を歪めながらも言い返してくる女に、桐生は俄然興味が湧いた。清潔感のある短い髪も、しみ一つない白い肌も、桐生の許容範囲を満たしている。歳は20になるかならないかだろう。顔が腫れているせいで、どんな容姿なのかは今は判断できない。
上っ面だけ生意気な女は大嫌いだが、気骨のある女は別だ。
どこまで一方的な暴力に抵抗できるだろう。
ふつふつと湧いてくる加虐心に、久しぶりに腰が疼く。
「俺を満足させてくれたら、沈めるのは勘弁してやるよ。いい話だろ」
「――タケルの借金を帳消しにしてくれるってこと?」
桐生は髪から手を離し、背中から足をどけると今度は強めに頭を踏みつけた。
頭蓋骨と床が擦れる鈍い音がし、女は低い呻き声を漏らした。
「なに、寝言いってんだ。取引ってのは、対等な立場の人間の間でしか行われないんだよ。お前は借金の利息分、つまりただのモノだ。奴隷っていった方が分かりやすいか?」
女は涙ひとつ零さなかった。唇を食いしばっているから、カーペットも汚れていない。そのことが、桐生をひどく上機嫌にさせた。
「まあ、いいや。俺の奴隷になるなら、タケルって男は殺さないでおいてやるよ。それでどうだ」
殺す、という言葉の響きに、女は初めて形相を変えた。
話がしやすいように、靴を下におろす。再びかがみ込み、女の片腕を無造作に掴んだ。
「ぐっ……ふあっ」
力任せに引き上げた瞬間の女の顔は、ぞくぞくするほど色っぽかった。痛みを必死に堪えて抗おうとする表情。男をすでに知ってるのかもしれない。どっちでもいい。どうせ、壊れるまで遊ぶんだ。
「ほら、全部脱げ。埃とかゴミとか汚ねえだろ。綺麗になったら、俺の部屋で可愛がってやるよ」
「……彼を殺さないで」
「お前次第だ」
その日から、桐生は部屋で一人の女を飼い始めた。
◇◇◇◇◇
逃げた男は、それから程なくして見つかった。
懲りずに他で借金をしようとしたらしく、そこから足がついた。働きたくても雇ってくれるところなんてねえんだよ! と叫んだ男からは酒の匂いがしたそうだ。
「酒は買えたんじゃねえか、って思っちゃいますよねえ。てめえのイロ置いて逃げた癖に、図々しいっつーか、なんつーか。族上がりでもないふつーの男なんスよ? うちみたいなとこから金借りるまで堕ちるとか、何なんスかねえ」
「道理おぼえる前に、権利ってヤツだけ覚えたんじゃねえの」
「権利……ッスか?」
「どんな生まれでも人間らしく生きる権利とか何とか。おエライ先生方がよく叫んでんだろ」
「はあ」
よく分からない、といわんばかりに首を捻った若い衆に周りから「考えんなよ。頭から煙でんぞ!」と野次が飛ぶ。暢気な笑い声が響く中、一人が桐生を振り返り問いかけた。
「で、どうします? バラしますか」
「いや、どっかで働かせろ」
「了解です。そこそこ綺麗な顔した男なんで、男娼やらせてもいいかもしれません」
「任せる。500になってるんだっけ? 回収できりゃそれでいいわ。逃げ出せないように薬打っとけ」
殺さない、と約束した。
桐生は口約束だろうが何だろうが、一度取り決めたことは守らないと気がすまない性質だった。汚い世界だが、だからこそ、一つくらいは確かなものがあったっていいはずだ。
女の名前を呼んだことはない。
あの潔癖症で誰かと一緒に住めるわけがない、すぐに追い出すだろうと予想した組員達をよそに、桐生は意外なほど不快感を感じなかった。
女には二つの美点があったからだ。
一つ目は、几帳面な性格。
桐生の指示をよく守り、広い部屋を常に清潔に美しく保とうと努力している。
子供に全く興味を示さない母のもと、ゴミ溜めのようなアパートで育った桐生は、不潔さを何より憎んでいる。カビたパンも饐えた匂いのする牛乳も糞くらえだ。それでもあの頃、強烈な吐き気に襲われながらそれしか口にするものはなかった。我が物顔でウロつく害虫も、何の汚れか判明できないほど薄汚れた服も大嫌いだったのに、どうすることも出来なかった。
女は、野菜中心の和食をそれは上手に作ることが出来た。それが二つ目だ。
外出時には、必ず誰かが付き添っている。外部と連絡を取ることを防ぐ為だが、プライベートな買い物すら逐一桐生に報告が上がる。
毒を仕込むことなど出来ないと知っていたので、躊躇わず桐生は箸を伸ばした。
「そんなに簡単に食べちゃうんですか? 何が入ってるかも分からないのに」
「食べちゃうんですよ。美味そうだしな。……ほら、お前も食え」
「――依子」
「は?」
「お前、じゃない。私には依子って名前があるの」
女のセリフに、桐生はくつくつと笑い始めた。
「勘弁しろよ。てめえは奴隷だ、俺のイロじゃねえ。なんで名前なんか呼ばなきゃなんねえんだよ」
「っ! そういう意味じゃない!」
「どういう意味でもいい。俺に名前を呼ばそうなんて二度と考えんな。いいな」
桐生の冷ややかな口調に、女は悔しげに唇を噛んで俯いた。
可哀想に、と桐生は思う。
勝手にぶっこわれた自分とは違い、女は周囲のろくでなしの手でよってたかって壊されようとしている。正気を保つ為、ここにいることの理由が欲しいのだろう。
たとえば、愛や執着。
桐生が自分を抱くことに意味があれば、ここは牢獄ではなく心地よい巣に変わる。
残念だったな。そんな真っ当な男が、ヤクザなんてやるかよ。
食後、桐生は洗剤の香りがする布張りソファーの上で女の上にのしかかった。何も言わない。黙ったまま、思いやりの欠片もないやり方で欲望を吐き出すだけ。
女はどれほど屈辱を与えられようと、決して涙も涎も零さなかった。
同じ支部の男たちと飲みに行き情報を交換したり、シマを見回ったり、親のところに機嫌伺いにいったり。代わり映えのしない日々を送っているうちに、桐生は女が傍にいることにすっかり馴染んでしまった。
屈して媚びてくるわけではない。ただ、女は親切だった。自分に浴びせられる暴力にも怖気付かず、恨みを覗かせることもなかった。
「お前、毎日なに考えてんだ」
一年が過ぎた頃、桐生は思わずそんなことを尋ねてしまっていた。
「掃除の手順とか、晩ご飯の献立とかかなあ」
「はっ。平和だな」
「平和ですよ。三食昼寝付きだもん。欲しいものはすぐに買ってもらえるし、誰にも馬鹿にされないし、支払いの心配もしなくていいし」
女の膝に頭を乗せ、仰向けになった桐生の上で一つずつ数えてみせる。
わざと明るい声を出すいじらしさに、初めて桐生の胸が詰まった。出会った頃と比べ、ずいぶん痩せた。童顔の愛らしい丸顔だったのに、顎がとんがってしまっている。
「監視付きだし、俺の奴隷だし、監禁されてるし?」
「……タケルは少なくとも生きてるし」
交代で見張りについてる誰かに聞かされたのか。こうしている今も、幼馴染が地獄を這いずりながら己のツケを払っているということを。
女は処女ではなかった。
桐生は詳しく聞かなかったが、タケルという幼馴染が初めての恋人で全てを捧げた相手だったのだろう。借金の保証人になった自分を置き去りにして、ある日突然消えた家族同然の男。その日から、女の世界は一変してしまった。
「そろそろ借金返せそうだってよ。あいつは今更抜けらんねえだろうが、お前は自由になれるな」
何の気なしに口にした一言に、女は真っ青になった。
「……え?」
「んだよ、その顔。もっと喜べ。いっぺんカタギに戻った女に粉かけるなんて真似は、誰にもさせねえ。突然放り出されたんじゃ暮らせないっていうなら、何か餞別やるよ」
「いやだ。ここにいたい」
「はあ?」
女は、桐生と引き合わされてから初めての涙を流した。
ポタ、と頬をつたったその一滴が桐生の髪に落ちる。
――他人の排泄物が、髪に。
全身を支配するはずの凶暴な嫌悪感と怒りは、なぜか桐生を襲ってこなかった。代わりにこみ上げてきた切なさに、桐生は戸惑ってしまう。
「勘違いしてんじゃねえ。そういうの、ストックホルム症候群っつーんだよ。聞いたことあんだろ? 恐怖から逃げる為に、自分を傷つける相手に依存するんだと」
「なんでもいい。病気でいい」
「バカか。くだらねえ」
桐生は体を起こし、乱暴に女の頬を擦った。
「泣くな。言ったろ、気持ちわりいんだよ、そういうの」
「分かってるよ。すぐ泣き止むから。だから、ここにいていいって言って」
ひくひくと啜り上げる女から、出会った時の強さはすっかり失われていた。
飼い慣らしてしまった。男がいないと生きていけないようなつまらない女に、桐生が変えてしまった。
落胆が胸の中に広がっていく。
いいから出て行け。引導を渡そうと口を開こうとした瞬間。
女は両手を広げ、指の隙間からギラギラと光る瞳で桐生を射抜いた。
桐生は息を飲む。この目だ。この目に、あの時囚われた。
「あなたのモノでいられないのなら、殺して」
「――本気で言ってんのか」
「試してみればいい」
どうせ脅しだろう。そうに決まっている。
桐生は心の中に芽生えた怯えを振り払おうと、隣の部屋の隠し場所からS&Wの自動拳銃を取ってきた。消音装置のついた軽量モデルで、グリップも握りやすい。自室での護身用に準備してあったものだ。
桐生が銃を片手に部屋から出てきても、女の表情は変わらなかった。むしろ、安堵したように口元を弛緩させている。
「じゃあ、ここで死ねよ」
「うん。……ありがと」
必要以上に苦しめるつもりはない。桐生が頭を狙うことは、二人共わかっている。結果、部屋には血と脳漿が飛び散ることになるだろう。
潔癖症の桐生にとって、自分の居住スペースを汚してまで女を処分する、というのは特別な意味を持っていた。そのことに、女も気づいている。
ゆっくりと桐生の腕が上がる。
無造作に引き金は引かれたが、弾は女の髪を掠め、背後の壁に突き刺さった。
桐生の道具の扱いは群を抜いて上手い。右目の瞳孔を狙おうと思えば、その通りに出来たはず。
つまりは、そういうことだ。
「……この距離で外すなんて、ヤクザやめれば?」
女の呆れ返った声に笑いがこみ上げてくる。殺されそうになったっていうのに、真っ先に出てくる言葉がそれか?
桐生は拳銃の安全装置をかけ直し、それを女に差し出した。笑いをかみ殺しながら、ふくれっ面をした女の手に銃を握らせる。
とっくの昔に、こいつもこっち側にきてたんだな。
ピクリとも動かず、むしろうっとりとした表情で桐生の構えた銃を見つめていた女に、改めて強烈な欲情を覚えた。
狂った女に壊れた男。案外、似合いじゃねえか。
「やるよ」
「自分で撃てってこと?」
「違う。護身用だ」
桐生は女の手を引き、小さな頭を自分の胸に抱え込んだ。腹に固い銃を感じる。このままズドン、でも別にいいか。
「俺のイロになったら、いろいろ辛えぞ。敵も多いし、二度と当たり前の生活には戻れない。糞みてえな死に方する俺に、最期まで付き合う気はあるんだな?」
「痛いのは嫌だから、その時がきたらキリュウが殺して」
女が桐生の名前を呼んだのも、これが初めてだった。
「黎二だよ」
「れいじ?」
「そうだ、よりこ」
「……覚えててくれたんだ」
「俺はな、執念深いんだ。言われたことをそうそう忘れたりしねえんだよ」
「じゃあ、私と一緒じゃない」
クスクス笑い合いながら、黎二と依子は抱き合って床を転がった。
邪魔、とばかりに依子の放り投げたS&Wがくるくると回転しながら床を滑っていく。
手の届かない場所に転がった防衛手段を、黎二はただ見送った。
そして、腕の中でとろけるような笑みを浮かべる女のせいで死ぬことになる自分の未来を夢想する。
それも悪くない。
ヤンデレ小説書いたったー
http://shindanmaker.com/a/482075
で診断された結果、『潔癖症』な『舎弟』と『猫好き』な『奴隷』の組み合わせで、ヤンデレ話を書きます、と出たので、書かせていただきました。猫好き要素入れられなくてスミマセン!