2
……と、思っていたんだけど。
「はぁ〜……」
「ちょっと月ー、あんたなんでさっきからため息ばっかついてんの?」
「んー」
「ん〜。じゃないし。うるさいしウザいからため息とかやめてよ」
「冷たいねぇ……」
「は、うざ。私は世界で一番優しいっつーの」
もし栞が世界で一番優しかったら逆に他の人の性格悪すぎだろ、と思ったけど、
「うー……」
それさえ言う気になれない。
「……ね、ほんと、何かあったの?超変なんだけど」
そう心配そうに言って、あたしの顔を覗き込む栞。けれどその瞳にあるのは、心配なんかじゃなく好奇心だ。
「あたし今人生最大に困ってんの。面白がらんといて」
あたしが顔をしかめると、みるみる栞の顔が緩んだ。頬ではなく顔が。
「何それ、人生最大⁉︎ぷっ、超面白そう!」
「………」
「ごめんってー。ねぇー、何ー?教えてよー」
絶対栞には言わないでおこう、と心に決める。こんな歩くスピーカーに話したりなんかしたら、一日どころか一瞬で学年中に知れ渡るに違いない。そんなのはごめんだ。
「る・なさーん。無視ー?」
「一生教えません」
「えーっ。ちっ、つまらん。女の子に告られたとかだったら面白かったのにー」
「!」
えっ。
「……え、何、図ぼ」
「黙れ」
まさか言い当てられるなんて。あり得ない。いや、
「は、はぁ?何言ってんのそんなわけないじゃんあはは」
「ふふふ、往生際悪いよー?」
にっこーり微笑む栞。だめか……。
もうこいつには隠し様がない。
「そうだよ、告られた」
よりによって、学年一の美少女に。このあたしが。自他共に認める【超腐女子】が……。