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氷像のバジリスク  作者: 栗木下


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第76話「模倣の迷宮-7」

「我ハ汝等ガ血肉ヲ……」

「全員私の後ろに来てください!タヂカラオ様!アメノマ様!」

「援護します!タクハタチ様!アメノハヅチ様!」

 モンスターが手の一本を私たちに向けて勢いよく突き出そうとするのを見て、私は全員の前に出て強化を施した盾を構え、続けて布縫さんが盾の前に何層も布状の結界を張り巡らせます。


「穿タン!」

「ぐうっ!?」

「あぐっ……!?」

 そしてモンスターが手と腕を高速で回転させながら突き出し、布縫さんの結界に動きを阻害されて多少回転の速度を落としつつも結界を引き裂き、私の盾とモンスターの金属製の爪が接触した所から激しい火花と何かが削れるような金属音が辺りに響き渡り、おまけに横に逃げようとした者を迎撃するためなのか腕の回転に合わせて金属製の刃が周囲に向かって放たれています。

 これは……拙いですね。


「風見さん!」

「分かっています穂乃お嬢様!」

「核は額と胸に在るからそこを狙って!」

 このままでは盾を削り切られ、そうなれば逃げ場も防ぐ方法も無くなる。

 私のその考えを察したのかは分かりませんが、私の後ろで穂乃さんたちが反撃の為に動きだします。


「カグヅチ様!」

「シナツヒコ様!」

「!?」

 穂乃さんから火球が、風見さんから突風がそれぞれにモンスターに向かって放たれ、空中で一つになったそれは単体であった時の数倍の威力を持った爆炎となってモンスターの額に向かい、そいてモンスターの額に在った赤い結晶を破壊するように爆発します。


「まずは一……っつ!?なにこれ!?」

「なっ!?こんな事があり得ますの!?」

「我ハ擬態ス、我ガ核タル結晶ニ」

『ハズレダ』

 ですが、モンスターは腕の回転を止めて引き戻しこそしましたが、まるで手傷を負っていないかのようにその場に立ち続けていました。

 いえ、それどころか各腕に一本ずつ赤い結晶がいつの間にか生えています。

 ただ、どことなくそれぞれの結晶が纏っている空気のようなものは違います。


『ミステイ カーニハ ンゲキヲ』

「いけない!」

「真贋見極メラレヌ愚者ニ裁キヲ!」

「ぐっ!?」

「トキさん!?」

「トキ姉ちゃん!?」

 モンスターが動き出し始め、何をする気なのかを察した私は穂乃さんたちを庇うように盾を掲げ、その直後にモンスターの太い腕が振り下ろされて、盾に当たった瞬間に解き放たれた爆発と共に私の全身に重い衝撃が伝わります。


「くっ……一体どうなっていますの!?」

「はぁはぁ……」

「恐らくですが、大半の赤い結晶は核を模した偽物で、偽物を破壊してしまうと破壊するのに使った力をそのまま反撃に転用しているんだと思います!」

「つまり本物以外に攻撃を当てるとこっぴどい反撃を喰らうってことだね……」

「なんて厄介な……見分ける方法は?」

 モンスターの腕がゆっくりと引き戻されていく間に穂乃さんが私の体を癒し、他の三人が周囲を警戒しつつ何が起きたのかを冷静に判断します。

 そしてその判断結果は恐らく正しいでしょう。

 ただしかし……


「ゴメン。アタシの目じゃどれが本物でどれが偽物なのかは分からない」

「すみません。私も空気の振動を察知してモンスターの動きを察しているだけなので、判別は出来ないです」

 いつの間にか額に生え直している核を含めて十個ある核の内、本物の核がどれなのかを判別することまでは誰にも出来ないでしょう。

 それは私の耳も同じです。

 くっ……こんな時にもっと力が有れば……今そんな事を考えても栓の無い事ではありますが、思わずそう考えてしまいます。


「血肉ヲ捧ゲヨ……」

「くっ……」

「一体どうすれば……」

 そして私たちの間に半ば諦めにも似たような空気が流れ始めたその時、状況は動きました。


「なら、あっしの力が有効でやんすね」

「「「!?」」」

「チニクヲオオォォォ!?」

『チョッカ ンモチカ』

 虚空から突如として治安維持機構の制服を纏い、両手に一本ずつ短剣を握った小柄な男性が現れたかと思えば、その短剣で腕の一本に生えていた赤い結晶を破壊し、破壊した直後に先程と違ってモンスターは苦悶の声を大きく上げました。


「全員通路へ!」

「「「っつ!?」」」

「了解!」

「ちょっ!あっしも守ってくれでやんす!」

「ガアアアアァァァァァ!?」

 と、ここで私は複数の核を持つモンスターは核を破壊されるとその痛みで暴れ出す事を思い出したため、ソラたちを引き連れて今居るホールから守り易い通路に移動して盾を構えます。

 そしてモンスターの核を破壊した張本人である男性が通路に滑り込み、私の構える盾の後ろに逃げ込んだところでモンスターが暴れ出して八本ある手を縦横無尽に振り回し、灰色の肉から生えている刃を四方八方に射出しては引き戻します。


「ぐうぅ……」

「なんて暴れ方……」

「トキ姉ちゃんも布縫さんも頑張って!」

 その暴れ方は凄まじく、通路に逃げ込んで一方向からのみ攻撃が来るようにしておいても気を緩めれば容易に守りを突破されることを確信できるほどでした。

 恐らくはホールの中に居れば今頃は全身が細切れになるまで切り刻まれていたでしょう。


「それにしても三理マコト。どうして貴方がここに居ますの?」

「あっしは皆さんと外との連絡役としてこっそり付いて来てたんでやんすよ。と、そんな事よりも早急に話しておくべき事があるでやんす!」

「何ですか?私たちはアキラ様の元に向かうためにも少しでも早くあの金本バンドだったモンスターを倒さないといけないのですわよ」

 やがて攻撃の手が緩み始めた頃、穂乃さんがどうして此処に居るかなどの事情を窺っていた三理君がとんでもない爆弾を私たちに投下してくれました。


「そのホワイトアイスさんが真旗カッコウと昔の男(・・・)の姿をしたモンスターに襲われて大ピンチ何でやんすよ!」

「「「!?」」」

 そう。色んな意味でとんでもない爆弾を。

爆弾です。誰が何と言おうとも爆弾です。

それも特大のな!

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