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氷像のバジリスク  作者: 栗木下


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第241話「最終決戦-16」

「イース!」

 『軍』の腹が光を発するのを見た瞬間、俺は咄嗟に『社』によって自分の主観時間を引き延ばすと同時に、イースの真なる力を引き出して左腕を鱗で覆い、更に黒凍姫と白湧騎を構えるとその機能を全力で働かせ始める。

 俺が即応した理由は単純。

 『軍』が今から放とうとしているアレは、茉波さんの移動研究室の障壁すら容易に突き抜ける程の威力を持っているからであり、マトモな方法で防げるような攻撃ではないからだ。


『……核分(シュメル)……』

「災いが我に向かう事に終わりを告げよ!シローズノイジス!!」

 『軍』の胸が光を発する。

 だがその間に俺の前に角度を付けた氷の盾が生じる。

 これで後は……気合で防ぐのみ!


『……解砲(トダウン)!』

「ぎっ……ぐっ!?」

 『軍』の頬が一瞬だけ光を発し、次の瞬間には巫術・シローズノイジスによって発生させた氷の盾に『軍』の口から放たれた光線が激突。

 氷の盾は嫌な音と振動を立てると同時に、水蒸気のようなものも吹き上げる。


「がああぁぁ……」

 が、我が扱える中で最も強力な防御用の巫術と終わらせる力を混ぜ合わせた氷の盾は、単純な強度だけでも茉波さんの移動研究室の障壁に匹敵し、我に向かう攻撃の方向を逸らすと言う事にも特化してある。

 後、一応ではあるが、盾自体を『軍』に対して斜めに設置することで、物理的にも攻撃を逸らしやすくしてある。

 これらの行動の結果として……


「だりゃああ!」

 『軍』の口から放たれた光線はその軌道が逸らされ、我の後方の空へと消え去っていく。


「ぜぇ……はぁ……」

『……』

 イースの真なる力を戻しながら、俺は『軍』の顔を睨み付ける。

 まったく……まさか、今のような威力の攻撃を普通に使ってくるとはな……。

 今の『軍』が口から煙を吐いてじっとしている辺りからして、流石に連射は出来ないようだが、それでも十分な脅威過ぎる。


「それでも防げたのは事実。そろそろ……」

 俺は黒凍姫を構え直し、次の巫術と、この戦いそのものを終わらせるための準備をしようとする。

 だがその時だった。


音と共(マッハマ)に駆けよ(アチング)

「っつ!?」

 『軍』の姿が一瞬掻き消え、次の瞬間には俺の目の前に巨大な『軍』の顔が迫っていた。

 その光景に俺は思わず一瞬身を強張らせる。


死体置場の(モルグメ)大きな口(ガマウス)

「間に合え!」

 『軍』の口が大きく開かれ、鋭く尖った金属製の牙が生え揃った口内が、熱を伴った瘴気を周囲に放出しつつ俺に向かって迫ってくる。

 それはまるで死そのものが俺の命を狩らんと大きな鎌を持って迫ってくるようだった。

 だがしかし、勿論こんな物を甘んじて受けるつもりは俺には無い。

 だから俺は先程の巫術・シローズノイジスの発動から僅かな間に貯めることが出来た詠唱でもって発動できる巫術を考え、発動するべく黒凍姫の引き金を引く。


「ホウナノサケビ……」

 黒凍姫から足りない詠唱を補うように音を奏でつつ氷の弾丸が発射される。

 そして巫術・ホウナノサケビが発動した瞬間。


「イイイィィィ!?」

『ガアアァァァ!?』

 俺の白湧騎と黒凍姫から音と言うには大き過ぎる振動が放たれる。

 そして、その振動は『軍』だけでなく俺も巻き込んだ上に、肉体どころか精神と魂も大きく揺さぶられ、全身の皮膚が弾け飛び、俺は赤い血を、『軍』は溶岩の血を周囲に撒き散らす。

 それだけでなく、流石の『軍』も俺のこの攻撃には面を喰らったのか、両耳を抑えながら大きく仰け反る。

 その周囲には、『軍』の表皮である鏡の鱗の欠片が舞っていた。


『このっ……己の醜さ(ミーンミ)を知れ(ンミラー)!』

「『我はアキラ・ホワイトアイス!吹けよ北風、凍てつく風。巫術・ノスフウフキ!』」

 『軍』の身体から離れた鏡の鱗が俺に向かって飛んでくる。

 が、それを予期して俺が自力で放った巫術・ノスフウフキによって俺の背後から強風が発生し、鏡の鱗はあらぬ方向に向かって飛んでいく。


「ユミルノヒョウツイ!」

 続けて俺は今までの攻防で周囲に蓄えられていた水蒸気を上空に掻き集めると、貯まっていた詠唱にイースの真なる力を組み合わせた上で巫術・ユミルノヒョウツイを発動。

 先程『軍』が発生させた岩の塊のように、我たちが今居る溶岩の湖を埋め尽くすような巨大な氷の塊を出現させる。

 だが我は『軍』のように自然落下を待ったりはしない。


「落ち……」

『っつ!』

 我が黒凍姫を上から下に向かって真っ直ぐに振り下ろすと、それに合わせるように氷塊も凄まじい速さで落ちる。

 『不滅滅ぼし』も付与されたこの一撃に、『軍』は明確に顔を歪めるがもう遅かった。


『ぐ……が……』

「ろおおぉぉ!」

 『軍』の肉体と氷塊がぶつかり合い、周囲に大量の衝撃波を撒き散らす。

 だが幾ら『軍』と言っても流石に巫術・ユミルノヒョウツイを正面から防ぐのは無理が有ったらしい。


『あああああぁぁぁぁぁ!』

 『軍』が叫び声を上げながら、氷塊と共に溶岩の池の中に没していく。


「もっとも……」

 さて、これで並の神が相手だったなら、これで終わりと言えたんだろうがな。

 だが、俺の相手は『軍』。

 つまりは……


 まだ溶けきっていなかった部分の氷塊が砕け散った。

なお、『軍』はここまで『森羅狂象』を使用しておりません


02/20誤字訂正

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