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氷像のバジリスク  作者: 栗木下


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第179話「祈りの塔-8」

「キオ!?キオなんすか!?」

『ああ?マコトか?どうして此処に……ああいや、言わなくてもいい。ちょっとずつはっきりしてきた』

 自分の意識を取り戻した角取キオに対して、三理マコトは思わず一歩踏み込んで大きな声を上げる。

 だが、角取キオは三理マコトの姿を視界に捉えながらも、まるで気にしたそぶりも見せずに自分の身体の調子を確かめるように手足を動かし、周囲の状況を把握するべく首を巡らせるだけだった。


『さて、何から話したもんか……』

「あっしに答えられる事なら何でも答えてやるでやんすよ!」

『そうかそうか。じゃあ聞くが……』

 三理マコトはそれに気づいていないフリをしながらもさらに一歩近づくと共に、両手を広げて自分の存在を角取キオに向けて誇示する。

 そして三理マコトの行動にようやく反応したのか、角取キオが自らの牙を露わにするような笑みと共に言い放ち行った事は……


『その量の殺気を放ってるってことは、お前は敵でいいんだよな』

 決別の意思を込めた言葉と、その意思に見合うような勢いで三理マコトを潰そうと閉ざされる両手だった。


「っつ!?」

 角取キオの行動に三理マコトは瞬時にスクナヒコの能力を応用してその場から飛び退き、その腕が決して届かない距離にまで逃げる。


「キオのくせに良く気づいたでやんすねぇ……」

『ちっ、相変わらずすばしっこい野郎だ……』

 そして、お互いに相手の攻撃がこちらに届かない事を理解した所で二人とも相手の顔を睨み付けると、それぞれに獰猛な笑みを顔に出しながら悪態を吐く。

 そこにはかつての級友を気遣ったり、相手の今を嘆くような気配は欠片も無かった。

 有るのはただ目の前に居る自分の敵を殺す為だけに研ぎ澄まされた害意であり殺意であった。


「一応聞いておくっすけど、キオは自分の身体の状態を理解しているんすか?」

『勿論しているぜ。額にはあの女が埋め込んでくれた青い結晶(コイツ)が有って、コイツの力と背中の方から供給されている『(ミリタリー)』の奴の力を混ぜ合わせることによって、俺の胸に在る紫色の結晶は出来ている。で、この紫色の結晶はお前たち人間にとっては不都合この上ないわけだ』

「本当にキオのくせによく理解しているっすね。ちなみに意識を取り戻せた理由についてはどうっすか?」

『背中の管がそこの茨のせいで何本かぶっ飛んだのに加えて、俺の腹の方に在る制御用の力が何でか活性化しているからだな。ま、どちらにしても俺がやる事は変わらねえよ』

「へぇ……」

『他人の為に死ぬなんざ御免だ!だから俺は俺の命を狙う奴を全てぶっ潰す!!』

「ま、キオならそうっすよね!」

 どちらが先に動き出したのかは分からない。

 が、二人とも明確な殺意を持って動きだし、角取キオは一撃でもかすれば確実に相手を殺せるだけの速さと硬度をもった腕を振り回し、三理マコトはそのような攻撃を全て回避しながら、角取キオの巨体からすれば蚊が刺すような一撃を繰り返し与えていく。


「ちっ、まるで刃が通らないでやんすね。硬いのは頭と股間だけにして欲しいでやんすよ。この脳筋石頭が!」

『糞がっ!ちょこまかちょこまか動き回りやがって!手前は小バエか何かか!?この玉無しの臆病者が!』

 だが、お互いに……三理マコトは得物と戦い方に端を発する一撃の火力の無さ故に角取キオの鎧のように分厚く堅い皮膚を貫くことが出来ず、逆に角取キオはその巨体と生来の荒さに端を発する攻撃の粗さ故に天地問わず素早く動き回ることが出来る三理マコトを捉える事が出来ずにいた。

 そして、お互いに決め手を欠いたまま戦いが激しくなり、二人が居る部屋どころか『祈りの塔』全体にまで戦いの音と振動が伝わり始めた所で一つの動きがあった。


「まったく、こればかりはこの状況を直感していた昔のあっしと、そんなあっしの意思を汲んでくれたカグツチに感謝っすね!」

『ああん!?なに訳の分からねえことをゴチャゴチャと言ってやがんだ!手前は!?』

 三理マコトは激しく自身の身体を拡大・収縮させて角取キオの周囲を飛びまわりながら、自分の腰に提げていた筒に手を掛ける。


「さて、本音を言えば使いたくは無かったすけどね」

『っつ!?』

 ただそれだけの動作で、その筒の中身がとてつもなく危険な物だと本能的に察した角取キオは一瞬だがその身を強張らせる。

 そして、その一瞬の隙が致命的だった。


「ま、諦めるでやんすよ。あっしもキオも……ね」

『ま……』

 三理マコトの手によって筒の底に付いていた蓋が取り外され、その中身が露わになる。


「さあ……」

『て……』

 一見すれば筒の中身は小さな燭台の様なものが一つ入っていただけで、後は空っぽだった。

 だが、筒が完全に開かれた次の瞬間……


「『ガアアアアアァァァァァ!?』」

 三理マコトと角取キオの絶叫が『祈りの塔』上層部に響き渡る。

 そして、それが開放される前の振動も含めて流石に異常事態過ぎると判断して集まり、突入体勢を整えたノーフェたちが部屋の中に踏み入ろうとするが……


「「「!?」」」

 次の瞬間には彼らも部屋の中に居る二人と同じようにのたうち始める事となった。


『何をしやがったあああぁぁぁ!このクソ栗鼠がアアァァ!?』

「ははは……ざまぁないっすねぇ!キオ!」

 所有者であるが故にか、いち早く文字通りに神経を直接焼かれるような痛みから復帰し、『祈りの塔』全体が激しく揺れる中で立ち上がった三理マコトが未だに痛みにのた打ち回っている角取キオたちの様子を眺めながら嘲笑う。

 三理マコトが放ったものの名は『シンなる火』。

 ジャポテラスに存在する神の一柱であるカグツチが所有するも秘匿し続けていた炎であり、本来ならば使う者が望んだものだけを焼く神の火である。

 が、『シンなる火』は同時にあらゆるものを焼く真なる火でもあり、実体を有さぬ心の火であり、嘘を吐くものだけを焼く信なる火でもあり、加えて微かな穢れも許さずに全てを焼き払う(シン)の火でもあるが故に、制御を見誤れば自らを産んだ母すら焼き殺してしまう禁忌の火でもあった。

 そして、そのような火は当然ながら神ならぬ人の身で操れるものでは無く、その結果が先程の範囲内に居た全員がのた打ち回ると言う結果である。


「ただ、巻き込まれた連中には悪いっすけど、もう一発やらせてもらうっすよ!」

『テメエ!?』

 だが、三理マコトは一度収めた『シンなる火』を解き放とうと再び筒の蓋に手を掛ける。


「さあて、ツクヨミの奴が良い嘘の種を用意してくれたでやんすからねぇ!火力だけなら誰が使うよりも上になるっすから安心して良いでやんすよ!」

『ふざけんじゃねえ!?』

「っつ!?」

 そして三理マコトが二度目の『シンなる火』を放とうとしたその時。

 一瞬だけ痛みに打ち勝った角取キオが床を叩き割り、その場に居た全員は『シンなる火』に包まれた状態で下の階に向かって落下を始める事となった。

こいつ等やりたい放題である


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