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氷像のバジリスク  作者: 栗木下


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第178話「祈りの塔-7」

「そもそもとしてだ。アキラ、お前はどうやって俺があの場(奉納の舞)を生き残ったのかが気になっているよなぁ」

「まあな」

 俺たち六人はベイタたちと話をしながらも、何処かに攻撃を仕掛ける隙が無いかを探っていく。


「お前が居た場所には人間一人分の土くれが残っていたし、あの光の速さはいくらお前でも逃げ切れるようなものじゃなかった。だから、今日この場に来るまでてっきりお前は仕留めたものだと思っていたんだがな」

「ふふん、そこら辺はカッコウちゃんが頑張ったのですよ。光が放たれる直前にベイたんとシベルんをカッコウ様の力でこちら側の領域に戻し、身代わりとしてノーフェたちを表に出したのです」

「ま、アキラが力を使う前にシベルの奴は身体を両断されちまってたから、実際には俺しか回収はされなかったがな。いやはや、アキラの力で殺されるとかシベルの奴が羨ましいな。うん」

「ちょっ!?ベイたん!?そこでぶっちゃけちゃうの!?シベルんが生きているかもしれないと言う疑念をもたせるカッコウ様の作戦が台無しだよ!?」

「はっはっは、悪い悪い!」

「厄介ですね……」

「ああ……」

 だが、まるで隙が無い。

 二人ともまるで街角で出会った顔見知り相手に世間話をしているような気楽さなのに、その挙動にはこちらの位置から攻め入れるような隙は無く、別の角度から攻め入ろうと思っても、ごく自然な動作でその隙を消す。

 それどころか、幾つかの隙をワザと作る事で、迂闊に攻め込もうとすれば手痛い反撃を喰らわせる準備すら済ませているようだった。


「ただ妙でもあるな」

「何がです?」

 ただ、そんな二人の動きを見ていて俺は多少の疑問を覚えた。

 そんな熟練の戦士でもそう簡単には出来ないであろう動きを、人間だった頃からアキラ・ホワイトアイスと同等の実力者だった真旗カッコウはともかく、元は治安維持機構の見回り班で俺の相棒でしかなかったベイタが出来る?

 努力の賜物と言ってしまえばそれまででも有るが……。


「さて、そろそろ話を進めるか。アキラ、俺がこの身体を得てからお前と殺し愛をしたのは今までに二度。そのどちらでも俺はお前を仕留め損ねてきた。そして今回が三度目だ」

「そうだな。確かに殺し合いをした。で、一度目は俺が殺されかけ、二度目は俺がお前を仕留め損ねた。それで、何が言いたい?今更戦う気は無いとでも言いたいのか?」

「「「っつ!?」」」

「キャッ」

 俺の問いにベイタは今までで一番禍々しい笑みを浮かべ、その笑みに俺以外の五人は思わずたじろぎ、真旗カッコウは頬を染めながら小さく可愛らしい声を出す。


「はっ、そんな訳があるか!俺が今生きている事を最も感じられるのは、アキラ!!お前と殺し愛をしているこの時なんだぜ!そう!今の俺はお前の皮を剥ぎ!肉を裂き!骨を折り!血を啜り!内臓を引き摺り出し!脳漿をかき混ぜ!心を痛めつけ!魂を貪り!お前の全てを感じ取り!!お前を殺すためだけに在る!!その為ならば俺は俺の全てを悪魔どころか『軍』様の敵である侵略者共にも捧げていいくらいだ!!」

「ベイタ~ん。流石にその発言はグレーゾーンだよー目的は果たす気みたいだから別にいいけどさー」

 そして、ベイタが俺に対して歪み切った愛を語る中でそれは始まった。


「さあ、アキラ!見ろ!見てくれ!これが、これこそがそんな俺の在り方を最大限示すための在り方だ!!」

「蒸気が……」

「集まっていく!?」

 ベイタの身体から発せられていた大量の蒸気が周囲へ散らばっていくのを止め、逆にベイタを中心とした繭のように渦を巻き始める。


「クスクスクス、始まった始まった。さて、上の方でも何かが起きているみたいだし、ベイたんなるべく早めにしてねー」

「ああ、分かっているよ……」

「なんて熱さ……」

「いったい何をする気ですの……」

「どうする?アタシのハンマーで叩いてみる?」

「いや、たぶんだけど止めておいた方が良いだろうな……」

 そして、『祈りの塔』の上層部の方から何か叫び声の様なものと、大きな物が壊れるような音が響く中、ベイタの周囲で渦を巻く蒸気は放射する熱と回転する速度を上昇させていく。

 ソラさんがあの状態のベイタに対して攻撃を仕掛ける事を提案してきてくれたが……俺には直感的にそれだけはしてはならない気がしたので、止めておくように言っておいた。


「止まった……」

「全員、構えておけよ」

「さあて、それじゃあ……」

 やがて、渦を巻いていた蒸気はその動きを止め、白い球体の様になり、その変化を見て取った俺たちは改めて体勢を整え、真旗カッコウも自分の得物をクルクルと回しながら構えを取る。

 お互いに構えを取る中で静かに時間だけが流れていく。

 この時までは何が起きても対応できる自信が俺たちには有った。

 だが、その次の瞬間にはその自信は完全に砕かれていた。


「第二ラウンドの開始で」

「終幕だ!」

「『!?』」

「アキラさん!?」

 気が付けば俺の前には全身が赤く輝いているベイタが立っていて、その右腕はまっすぐ前に伸ばされていた。

 その腕の先には丁度俺の腹が位置しており……必然、俺の腹には高熱を発する事で光り輝いているベイタの右腕が突き刺さり、貫通していた。


「何……が……」

『起き……た……?』

「アキラ様!!」「アキラお姉様!?」

 そして穂乃さんたちの俺の名を叫ぶ声と共に、最早痛みすら認識できなくなっていた俺とイースの意識は埋没していった。

ベイタんが超変態です


12/19誤字訂正

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