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氷像のバジリスク  作者: 栗木下


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172/245

第172話「祈りの塔-1」

 アキラたちが『迷宮』そのものと言うモンスターと戦っていたその頃。


「ジョウキ ヨウヲレ ポトシロ」

「はいはーい。『軍』様の為にもカッコウちゃんは張り切って報告させてもらいますよー」

 『祈りの塔』の中でも上の方の階に位置する、殆ど明かりが無いその部屋には複数の影が有った。


「そうですねー、とりあえず『仮面(マスク)』たちには多少の欠損が出てますが、都市内部の監視体制や警備状況に問題は発生していません。これはモンスターの方も同じですね」

「インベー ダタチハ」

「普通の人間たちにつきましては、半分ほどは既にカッコウ様が仕留めてます。残り半分に関しては未だに破壊工作を継続中。特務班に関しては、今の所正確な所在は不明ですねー。いやあ、参った参った。殆どやりたい放題やられちゃってますよー」

 その影の殆どは微動だにしていなかったが、旗が付いた杖を持った影だけは大きな身振りと明るい声を周囲にばら撒きながら、目の前の人影に向かって話を続けていた。


「ツマリハ スケジュ ルドオリ ナノダナ」

 が、話しかけられていた方の影が発したその一言で、話していた方の影が纏っていた空気も含めて、部屋の中の空気全てが一気に険しくなる。


「……。ま、ぶっちゃけちゃうとその通りだったりしちゃいますね」

 そして、その雰囲気の変化に合わせる様に話していた方の影は近くに灯っていた明かりを手元に寄せ、その顔を明かりの中へと出す。


「と言うわけで、実情を正確に報告しちゃうとですね」

 話していた方の影……真旗カッコウはグレイシアン内部について詳細に描かれた地図を出すと、地図上のいくつかの場所を丸で囲う。


「まず、こちら側の存在に姿を変えるなどの能動的な隠密行動を取れる者に関してましては、直ぐには逃げられない位置にまで侵入した時点でほぼ始末しました。次にこちらの位置を遠視するなどの受動的な隠密行動を行っている者に関しましては、予め囮として用意しておいた生産能力の低い施設の破壊を行わせたところで、迂闊に身動きが取れないように包囲。実質的には正確な位置を把握してあります」

「アノウマ ンドモハ」

「特務班につきましては陽動と思しき砲撃行動の位置や、『祈りの塔』に侵入しようとした者の情報。それにノーフェたちからの目撃情報が上がっていないと言う事実から、『祈りの塔』に向かっている事は確実で、現在は『迷宮』の中に居るのではないかと思われます」

 真旗カッコウはそう言うともう一枚別の地図を取り出し、その地図上に対して書き込みを行う。


「カッコウ ミイトニ アイツラ ヲヤレル トスング」

「そうですねぇ……」

 真旗カッコウは自身の目の前に居る相手……『軍』の問いに対して僅かに悩むような素振りを見せるが、直ぐに口を開いて話を始める。


「ミートが負ける事は有り得ませんね。アレを個人でどうにか出来るなら、それは個“人”では無く個“神”です。ですが、特務班に対して与えられる損害と言えば、上手く嵌ったなら皆殺し。そうでなければ一人仕留められれば大金星。良くて戦闘不能者を出せるぐらいじゃないですか?仮にも先日の件でこちらの策を破ってくれたんですから、それぐらいは頭が回ると思いますよ。と言うわけで、何時『祈りの塔』の中に来てもおかしくは無いかと」

「ワカツタ ナラバカ ツコウド ウイング」

「カッコウちゃんですか?そこは勿論当初の予定通りに動きますよ。『軍』様だってそのつもりじゃないですかー」

 真旗カッコウは最初と同じ妙に軽い雰囲気を漂わせ始めると、その場で何回転かした後に『軍』に背中を向け、部屋の外に繋がる扉に向かって歩き出す。


「アフタハ マカセタ」

 だが、真旗カッコウが部屋の外に出る前に『軍』はその姿を一瞬にして眩ませる。


「はいはーい!カッコウちゃんたちは頑張って特務班を仕留めちゃいますよ。他の場所と違って、此処には本当に壊されたら拙い施設も有りますからねー」

 そして『軍』に続くように、真旗カッコウも部屋の外に出た所で、銀色の液体にその身を包みこむと何処かへと消え去り、部屋には静寂が訪れる……


「スゥ……ハァ……(あれが……『軍』っすか……ただそこに立っているだけで、半端ない威圧感っすね……)」

 はずだった。


「(一目見ただけで分かったっす。アレは人間にどうこう出来る次元の存在じゃないっす。アレがその気になれば、モンスターも『マリス』も多分必要ない。アレはそう言う存在っすね)」

 三理マコトは呼吸を整えつつ、先程出ていった二人が帰ってこないかと周囲を警戒するが、そう言った気配はしない。

 尤も、三理マコト自身、自分の感知能力であの二人が来ることを察知できるのかについては多少の疑問を抱いていたが。


「(ま、化け物の相手はそれを専門にする人間に任せるとして、あっしはあっしの仕事をこなしてしまうでやんすかね)」

 三理マコトはそう自分の中で区切りをつけると、この暗い部屋の中の一点を見つめ出す。

 一見すればそこには何も無かった。

 だが、三理マコト自身の勘も、サルタヒコから与えられた勘もそこに居ると告げていた。

 だから、口を開き、


「久しぶりっすね。キオ」


 かつて異形の姿へと変貌し、三理マコトの仲間を殺した後に何処かへと消え去ったもう一人の仲間の名を告げる。


「英雄にはなれたっすか?」

『……』

 そして、三理マコトがその名を告げた時。

 暗い部屋の中に存在していた照明が次々に灯り出し、三理マコトと同じくこの部屋の中に居た人物を照らし出す。


「ま、答えは期待してないっすよ」

『…………』

 そうして現れた姿はまさに異形だった。

 身長は見える部分から想像するに数mは下らず、額からは二本の角と青い結晶を生やし、下半身から下は氷に包まれており、その皮膚はまるで鎧のように硬質化した灰色のものだった。

 だがそれ以上に異質なのはその背中と胸だった。

 背中には複数の赤い液体が充填された筒や、同じ液体が流れていると思しき管が突き刺さっており、胸からは紫色の大きな結晶が突き出しており、見る者が見れば直ぐにそれが『マリス』と人間側から呼ばれている者たちの核に使われているものだと分かっただろう。


「終わらせてやるっすよ。全てをね」

 そして、三理マコトが腰に提げた筒に手を掛けた時、微かにその異形の身体が動いた。

『軍』もカッコウも実は感知能力は並のレベルだったり。


追記

なんと、アウターワールドストーリーのWikiが出来たようです。

詳しい内容につきましては活動報告にて


12/13誤字訂正

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