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氷像のバジリスク  作者: 栗木下


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第166話「グレイシアン-7」

「『巫術・シロノミヤ!』」

 俺たち六人の周囲に白い壁が発生し、その姿を隠していく。


「此処か」「探せ」「まだ近くに」「居るはず」

 そして、その直後に聞こえてきたのはノーフェたちの駆け足の音と話し声。

 とりあえず一目見ただけでバレない程度には、表面を上手く雪のように変化させられたらしいな。


「何処だ?」「何処だ?」「何処だ?」「居ない」「通路は?」「異常なし」「ならば」「上に逃げたか?」「いや」「新たに」「壊れた」「場所は無い」

「「「…………」」」

 ノーフェたちの声が凄まじい速さで増えていき、その声の多さに俺たちは暗闇の中で多少身を強張らせながらも、物音一つすら立てぬように、出来る限りお互いの体を密着させる形で静かにしていた。


「探せ」「私たちは」「直ぐに来た」「遠くに」「行くほどの」「時間は」「無かった」

「「「…………」」」

「「ハァハァ……」」

 ノーフェたちの声が幾らか少なくなったような気がする。

 が、まだこの場を探って俺たちの足取りを探ろうとしている個体も居るようで、シロノミヤによって形成された壁の向こう側に気配を感じる。


「居ない」「何処に行った?」「分からない」「確かに」「此処に」「居たはずだ」「この道は」「誰にも」「通れない」「他の道は」「私たちが」「居た」「だが」「此処に」「隠れられる」「だけの」「空間は」「無い」「どうなっている?」

「……」

「「ァ……ぉ……ぉぉ……」」

 ああくそ、ノーフェたちの声がまた増えた……いや、増えたのか?ノーフェたちは全員声が同じだから、どうにもその辺りが分からないな……。

 だけど、ソラさんたちに外の様子を確認してもらうためには声を掛けないといけないし、そうしたら普通に気付かれる可能性もあるし……。


「ん……?」

 と、ここで突然外の音が聞こえなくなる。

 俺は何があったのかと顔を動かせる範囲で動かしてみるが、暗闇でなにも見えない為に何が起きているかはまるで分からない。


「ご安心を。中の音が聞こえないように結界を張りましたので、小声で話す程度なら大丈夫です」

 そう思っていたら暗がりから風見さんの声がする。

 なるほど、風見さんが力を使って内と外で音を遮断したのか。

 だから外の音が聞こえなくなった代わりに、中の音も外には伝わらなくなったと。

 で、特殊な能力を持たないノーフェたちにはこちらを見つけられないが、こちらにはソラさんたちが居るから音を遮断してしまっても問題は無いのか。


「ありがとう風見さん」

「いえ、この状況ではこれぐらいの事しか私には出来ませんので」

「「はぁはぁ……」」

「で……」

 そして俺は風見さんに礼を言ったところで、多少気が落ち着いたためなのか気づいてしまう。

 両胸を揉まれ、股間に誰かの息が当たっている事に。


「俺の両胸を揉んでいるのは誰かな?緊急事態だから極度の密着状態になるのはともかく、胸を揉むのはどう考えてもおかしいと思うんだけど?」

「「!?」」

「…………」

「わ、私じゃないですよ」

「同じく違います」

 俺の僅かに怒気を含んだ声に暗闇の中で反応した気配が二つあり、その直後に俺には手を出せない位置から布縫さんと風見さんの声が聞こえてくる。

 うん、これでほぼ犯人は確定したな。

 とりあえず犯人を完全に確定させるためにも外の様子を訊くか。


「トキさん。外の様子は……ひゃう!?」

「外の……すみませっ!?」

 が、俺の下からトキさんの声が聞こえると同時に、予想以上にくすぐったい感触が俺の股間に来てしまい、何とか声の音量は抑えたが代わりに妙な声が出てしまう。

 ご、ごめん。トキさん。

 どうやら、俺が考えていた以上に危ない場所にトキさんは厄介な場所に居たらしい。

 そこは冗談抜きに拙いからこれ以上は動かないで!

 いやまあ、おかげで犯人は確定したけど。


「「…………」」

「とりあえず二人とも無事にジャポテラスに帰ったら始末書ね」

「「はい……」」

 と言うわけで犯人の二人については後で始末書を書かせると言っておいたところでこの件はお終いと言う事にしておく。

 こんな茶番を何時までもやっている暇は無いわけだし。


「で、ソラさん。外の様子は?」

「ちょっと待ってくださいね……丁度去っていくところですね。全員、私たちがやって来た方の道に向かって走り去っていきます」

「私の方でも空気の流れを感知し続けていましたが同じ結果です。ノーフェたちは全員『祈りの塔』の逆側に走っていき、現在周囲には動くものは居ません」

『妙だな……』

「(だな)」

 ソラさんと風見さんが外の状況について報告をしてくれるが、その報告を聞いた俺とイースは明らかな違和感を感じる。

 いや、声音からしてソラさんと風見さんの二人も違和感は感じているようだったし、此処まで明らかならトキさんたちも声こそ発していないが気づいているだろうな。


「少し質問なんだけど、最初にノーフェたちが来る際に『祈りの塔』の側から来た個体は居たか?」

「恐らくになりますが……居なかったと思います」

「アタシの目に映る範囲では多分居なかったと思います」

 俺は隠密性と言う意味では今の状況は安全と判断して、シロノミヤは解除せずに話を続けることにする。

 ごめんトキさん。

 発言したい状況だろうけど、もう少しそのままの状態で耐えていてくれ。


「もしかして……」

『そう言う事だろうな』

 そして俺は先程シロノミヤの壁の向こう側から聞こえてきたノーフェたちの会話と言うか、独り言のような物を思い出す。

 そうだ、ノーフェたちは『この通路は誰にも通れない』と言っていた。


「となるとだ……」

 だが、そう考えた場合、問題が一つ発生する。

 恐らくだが、『祈りの塔』から漂っている気配からして恐らくは地上にも同様の罠が仕掛けられていると考えた方が良いし、敵が『祈りの塔』側から来ない事を考えるに、あちら側から来ても同じ罠にかかるのだろう。

 しかし、この通路にかけられている罠が誰にも通れないものだとした場合だと、それでは奴ら自身『祈りの塔』への出入りが出来なくなってしまう。

 それでは、先程の対応の速さへの説明がつかなくなってしまう。

 そう考えていくと答えはほぼ一つしかない。


「『祈りの塔』に入るためには、それ専用の道か、それに準ずるものが有ると言う事か……」

「そう考えるしかないと思います」

 俺の考えに風見さんが同意を示してくれる。

 しかしそうなるとその道は何処に……?


「アキラお姉様。ここから去っていったノーフェたちの一部が鏡石の中に入っていってます。これは恐らくですけど……」

「なるほどそう言う事か……」

 そう新たに疑問に湧いたところでソラさんが俺に報告を上げ、俺は『祈りの塔』への道がどこに在るかを理解する。

 『祈りの塔』への道は……


「『迷宮』の中か」


 『軍』が直接治めている可能性すらある『迷宮』の中にある。

トキさんの主人公力が上がってますね

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