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氷像のバジリスク  作者: 栗木下


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第162話「グレイシアン-3」

「アキラさん」

「ん。次はお前が相手って事で良いのか?(イース)」

『分かった。我は氷蜥蜴のイース……』

 トキさんが周囲に一度目配せをしてから俺に視線を向け、その意を察した俺は目の前の道の真ん中に立っている『マリス』に黒凍姫の銃口を向けると同時に、心の中でイースに対して静かに詠唱をするように頼む。


「否」

 先程聞いた声と同じ声で『マリス』から返答がある。

 ただし、正面に一人で立っている『マリス』からでは無く、俺たちの右手側から。

 そしてそこには、正面に立っている『マリス』と手に持っている武器以外は全てが同じ『マリス』が立っていた。


「「「…………」」」

「私では無く」「私たちだ」

 俺たちがその光景に対して黙っていると、同じ声が俺たちの左手側と背後から響いてくる。

 当然、声の主は手に持った武器以外は正面に居るのと一切が同じ『マリス』だった。


「名前を聞いても?」

 トキさんたちが他の個体に対して注意を払う中、俺は時間稼ぎも含めて正面の『マリス』に向かって問いを投げかける。

 コイツらの特性から考えるに、どの個体に向けて質問を放っても問題は無いだろうしな。


「名乗る必要性は無い」「だが」「貴様等がそうであるように」「私たちにも」「貴様等を」「惹き付けておく」「必要がある」

「おいおい……」

 だが、そこまでこの『マリス』の数は多く無いと思っていた俺の予想を目の前の『マリス』は裏切り、一言ごとに声の出所が増え、それ以上の速さで『マリス』の数も増えていく。

 おまけにその言動から察するに、俺たちが陽動である事か、イースが詠唱の準備を始めている事のどちらか、またはその両方が既にばれているらしい。


「故に」「名乗らせてもらおう」「私たちの名は」「『仮面(マスク)』のノーフェ」「私たちは」「半端な出来であり」「個の力は劣り」「個々の能力こそ獲得できなかったが」「代わりに集う事と」「他者の姿と行動を」「真似る事を覚えたもの」

「まさか、これほどの数とは……」

「何処にこれだけの数が……」

「ははは、どうしよっか……」

 ノーフェと名乗った『マリス』の数の増加は止まらない。

 気が付けば前後左右の道はノーフェたちで埋め尽くされており、周囲の崩れかけの建物上にも弓や弩を持ったノーフェたちの姿が見えていた。


「私たちは」「半端な個を持っている」「故に」「一人が死んでも」「私たちの活動には」「支障を来たさず」「私たちすべてに」「一様な影響を」「与える事も出来ない」

「さ、流石にこの数で来られたら……」

「これは拙いですね……」

 俺たちの周囲を取り囲むノーフェたちの数は少なく見積もっても確実に百人以上は集まっており、見えない位置に居るものまで含めれば、その数は千を超えるかもしれない。

 おまけにノーフェたちの外見が仮面と武器を除けば一切の特徴が無く、人と言うものを構成するために最低限必要な要素だけを集めたものであるため、気が付けばまるで一体の巨大な生物の体内に取り込まれているかのように周囲の空気は変質を遂げていた。


「(イース、出来れば早めに頼む……)」

『数多の艱難辛苦を乗り越えて……』

 徐々に周囲から感じる威圧感が大きくなるこの状況に俺は内心で冷や汗をかきながら、イースを急かす。

 確かにノーフェ自身の能力は他の『マリス』たちに比べれば一段劣り、その能力が変身能力なのも有って、恐らくは直接的な戦闘では無く、諜報を主体として活動していたのだろう。

 だが、それはあくまでも個としての能力であり、他の『マリス』と比べた場合でしかない。

 弱いと言っても俺の氷化能力が通用しない事から分かるように、ただ図体が大きいだけのモンスターよりは明らかに強いし、この数の利を生かされたのならば……流石にどうしようもない。

 ほぼ一方的に押し潰されるだけだ。


「故に」「私たちは」「こうも呼ばれる」

「止むを得ませんね……」

「全員構えてくださいな……」

 明らかにノーフェたちの放つ気配が変わり、今までの場を引き延ばそうとするものから好戦的なものに変わる。

 恐らくは俺たちを倒すのに十分な数が集まったのだろう。

 その空気の変化に合わせて、ほんの僅かでもいいから抵抗をするために俺たちもいつでも動ける様に体勢を整える。


「「「『百万仮面(ミリオンマスク)のノーフェ』と!!」」」

『……告げよ!巫術・シローズノグラドシロ!』

「来た!」

 そして、全てのノーフェが同じ言葉を叫びながら動き出した時。

 イースの詠唱が完了し、俺は手に持った黒凍姫を足元の雪に向かって叩きつける。


「「「なに!?」」」

「「「くっ!?」」」

「「「おのれ!?」」」

 その瞬間、俺たちとノーフェたちの足元から無数の壁と茨と尖塔が湧き出し始め、何体かのノーフェと周囲の建物をその動きに巻き込んで破壊しながらシローズノグラドシロが出現する。

 表情を察する事は出来ないが、隔離される前に聞こえたその声からして流石のノーフェたちにもこれは予想外だったらしい。


「ふぅ……間一髪だな……」

『何とか間に合って何よりだ』

「ひううぅぅ……」

「助かりました……」

「良かったぁ……」

 で、発動が完了した時。

 俺たちはシローズノグラドシロを発動した場所から少し離れた点に移動していた。

 これは発動の際に少々イースが細工をしていたおかげであり、通常の物よりも壁の強度も上げてあるので、これでノーフェたちが人海戦術でシローズノグラドシロを破壊するにしろ、探索するにしろ、多少は見つかるまでの時間も稼げるだろう。


「で、これからどうしますか?流石にあの数の『マリス』相手の陽動は無理ですよ?」

「うん。俺もそう思う。だから姿を現しての陽動はこれで終わりにして、第二作戦に移行する」

『第二作戦か。となれば向かう先はもう決まっているな』

「当初の予定とは違いますが、そうする他ありませんわね」

「他のグループの方々にはちょっと申し訳ないですけどね……」

「了解。なら、ノーフェたちに見つからないように道を探すね」

「私もお手伝いします。姿を隠しても、空気は動いていますから」

 ただ所詮は時間稼ぎでしかないため、俺たちは事前に俺たちだけでやる事を決めていたもう一つの作戦……つまりはここグレイシアンに存在しているであろうイースの本来の力を見つけ出すための行動に移行する事にする。

 尤も、その第二作戦でも陽動になるような行動自体はするので、一応『グレイシアン攻略作戦』の一環であると言う建前自体は有効になるはずであるが。


「じゃ、行動開始!」

「「「了解!!」」」

 そして俺たちは、まずはイースの力を封じた神であるヒムロノユミルがよく居た場所であり、同時にグレイシアンを取り巻く『迷宮』のような空気の中心点でもあるその場所に向かって駆け出した。

ノーフェの能力が明らかになりました。

簡単に言ってしまえば変身能力持ちの群体生物ですね。


12/03誤字訂正

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