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氷像のバジリスク  作者: 栗木下


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第150話「晶の精神世界-5」

『全く貴様と言う者は……』

 イースを召喚したら、その直後に尻尾で打ち据えられた上に説教が始まった。

 どうにも俺がイースを召喚すると言うのは少女にとっては予想の範疇内であり、奉納の舞の以前からイースは俺の召喚に備えて準備をしていたと言う。


『にも関わらずだ!貴様と来たら結局今の今まで我を召喚することも無く、無駄に時間を消費するような修行方法を積みおって、その間一体我がどういう気持ちで待機し続けたと思っているのだ!!』

「何と言うか、その……」

『ああん!?』

「すみませんでした」

『ふん』

 やがて怒気と覇気と共に行われる説教が一段落したところで俺はイースに向かって頭を下げる。

 考えようによっては随分と長い間待ちぼうけを喰らわせていたことになるわけだしなぁ……イースが怒るのもしょうがない。


「さて、そろそろ漫才は終わりにしてもらっていいか?前にも言った通り、時間は有限なのだからな。何時までも付き合っている暇は無い」

「漫才って……うおっ!?」

『む……分かった』

 と、ここで呆れた様な声を少女が上げ、俺は反論しようとするがその前にイースが俺の頭の上に乗って来る。

 そしてその直後に尖塔をいくつか挟んだ先から感じたのは、今の俺の敵である雪像の気配と言う名の闘気であり殺気だった。


「イース」

『分かっている』

 俺はイースに心の中で俺がやりたい事を告げると同時に、白湧騎と黒凍姫を召喚し、直ぐにでも来るであろう相手に備えて構える。


「では再開と行こうか」

 少女の言葉と共に気配が動き出す。

 何処から来るかは分からない。

 分からないが……やるべき事はもう決まっている。


「『我は氷鱗の巫女アキラ・ホワイトアイス。我が血よ。凍てつく九つの礫となりて我が敵を討て。巫術・クレンヒヒノヤ!』」

『我は氷蜥蜴のイース。大地に眠りし大水よ。我が声が聞こえるならば、我が呼びかけに応じよ』

 俺は白湧騎を走らせ始めると同時に全方位に向けて黒凍姫の礫と氷の矢を発射し始め、イースは俺の背後を警戒しつつも自身の詠唱を始める。


「ヴオオォォ!」

「来た!」

『我が望むは主喰らう氷牙、王権砕く氷狼、千里駆け抜ける氷塵』

 やがて無数の礫と矢をまるですり抜けるかの様に、全身が毛皮のようになった雪像が現れ、俺もイースもそちらに目を向ける。

 俺は黒凍姫の銃口を向けると、その引き金を全力で引くことによって弾幕の密度を上げる。

 勿論、こんな攻撃程度では足止めにならない事は分かっている。


「『我は氷鱗の巫女アキラ・ホワイトアイス。吹けよ北風、凍てつく風。巫術・ノスフウフキ!』」

『今こそ怨を晴らす時。さあ、我らが怨敵を……』

「ヴオッ……」

 だが、この雪像はこちらの攻撃を可能な限り回避しようとする。

 だから、弾幕を張れば相手がこちらに攻撃を仕掛けようとする際に何処から来るかを制限する事が出来、結果として俺から発せられた突風によって雪像は足場の無い空中へと吹き飛ばされる。

 こうなってしまえば、こちらから足場を与えない限りは幾ら奴でも何も出来ない。


 ……。余談ではあるが、前に同じような状況に追い込んだ時に黒凍姫とクレンヒヒノヤで追撃を仕掛けたら、クレンヒヒノヤを足場代わりにされて返り討ちに有った事が有ったりする。

 本当に元にした相手は人間なんだろうか……?

 まあ、それはさておいてだ。


『果てまで追いかけて貪り飲み込め!フロスェンリルズノソシヤク!!』

「!?」

 イースの詠唱が完了すると同時にフロスェンリルズノキバと同じ氷の刃が出現する。

 だが、その現れ方はフロスェンリルズノキバの逆。

 俺を中心とするのでなく、攻撃の目標である雪像を取り囲む様に、氷の刃が雪像に向くように、地面も壁も関係なく土台と成り得るあらゆる場所から現れて雪像に向かって行く。

 そして雪像は驚いたような表情を浮かべたまま、氷の刃によって作られた球体に飲まれていく。


「『我は氷鱗の巫女アキラ・ホワイトアイス』」

『我は氷蜥蜴のイース』

 で、雪像は氷の刃に飲まれたが、俺もイースも当然のように新たな詠唱を始める。

 どうしてか?決まってる。

 この程度で死ぬような甘い相手でない事を俺は知っているし、イースも俺の知識から理解しているからだ。

 と言うわけで……


「ヴオオォォ……」

「『我が血よ。幾重にも重なり、紡ぎ、織られて陣と成れ。陣よりいずるは九十九連なる氷の弾丸。降れ、そして我が陣を我が敵の血で染めよ。巫術・ツクモヘイルノジン』」

『我が血よ。幾重にも重なり、紡ぎ、織られて陣と成れ。陣よりいずるは九十九連なる氷の弾丸。降れ、そして我が陣を我が敵の血で染めよ。巫術・ツクモヘイルノジン』

「オオォォン!?」

 俺もイースも同じ詠唱を行って、同じ巫術を発動。

 俺たちの予想通りに氷の刃の球体から大した傷も負わずに脱出してきた雪像に向けて、上下左右あらゆる方向からツクモヘイルノジンによって発生した氷の弾丸が発射される。

 だがこれでもフロスェンリルズノソシヤクよりかはマシな時間稼ぎにしかならないだろう。


「『我は氷鱗の巫女アキラ・ホワイトアイス。大地覆いし白き平原とそこに住まいて眠りし民衆よ。我が声を聴け。我が舞踏を見ろ』」

『我は氷蜥蜴のイース。天空に広がり、青き空覆う黒雲の上に住まうは大地睥睨する傲慢なる者たち。奴らは驕り、気ままに蠢く』

「グブヴアァ……オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛!!」

 現に雪像は低い咆哮と共にどう考えても人間離れした動きでほぼ全ての弾丸を弾き飛ばしていき、中には弾き飛ばされた結果としてこちらに向かって来たために、俺は詠唱を行いながら黒凍姫と白湧騎を操って迎撃と回避を行う羽目になる。

 しかし、おかげで時間は十分に稼げた。


「グ……」

「『時間停止』」

 雪像が地面に着地する直前で俺とイースは一緒に時間停止能力を発動する。

 どうにもここが精神世界であるおかげなのか、イースにも時間停止能力の使い方が何となく分かったらしい。


「『我がこの身にて告げるは世界が変わる時!革命の時!民草はその手に命刈り取る刃をもって、己らを踏み虐げる者へと向けて鬨の声を上げる!さあ、我が扇が指し示すものを汝らが下に追いやるがいい!巫術・レジスノウズウエイブ』」

『黒雲降らすは槍が如き雹、剣が如き霰。黒雲撒くは壁が如き霧、悪夢が如き風。黒雲は与える。槍受けしものに痛みを、剣受けしものに流血を、霧に覆われしものに混乱を、悪夢見しものに絶望を、それが奴らが望みであるために。巫術・ザフィヘイルノクロクモ』

 そしてお互いの詠唱完了と共に時間停止能力を解除。

 同時に巫術が発動し……


「ヴオッ!?」

 この精神世界に存在する全てを飲み込むように雪原が津波を起こし始め、それを悪化させる様に空から氷が降り注ぐと共に薄気味悪い風が吹き荒れ始める。


「ヴ……」

 そして、雪像は抵抗する暇も無く雪と風に飲み込まれていく。

 そう、こうしてしまえばどれほど速かろうが、どれだけこちらの攻撃を先読みしようが関係ない。

 逃げ場など無い世界全域を対象にした攻撃。

 これが俺の答えである。

 まあ、現実で同じことを出来るかと言われたら多分無理なんだろうけど。

 周囲の環境に大きく依存している巫術だし。


「これでいいのか!?」

 俺はどこかで見ているであろう少女に向けて声を発する。

 するとすぐに答えは帰って来た。


「ああ問題は無い。これで雪像との訓練はじゅ……」

「【ボウショクノキヨウオウパラサゼブブ】」

 だが、俺とイースがその言葉を最後まで聞くことは無かった。


「なっ……!?」

『がっ……!?』

「あっ」

 雪の中から無数に分かれた黒い何かが現れ、俺もイースもバラバラになるまで切り刻まれてしまったがために。

 そして時間切れなのか、意識が薄れて精神世界から現実世界へと引き戻されていく感覚を覚える中で俺は聞いた。


「あー、すまん。間違ってこの訓練プログラムを組んだ時点での奴を参照してしまっていたようだ。そりゃあ桁違いに強いはずだな。ハッハッハ」


 と言う割と本気で怒りを覚える発言を。

 明日会ったら覚えていろよ……。

お母様の想定:HASO本編終了時のデータ

実際:最新verの一つ手前


そりゃあ、強いはずですよ


11/22誤字訂正

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[一言] これでまだ神になってないのか……(HASOラジ見てきた)
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