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氷像のバジリスク  作者: 栗木下


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第118話「ウズメ神社-2」

「…………」

『……』

 ウズメ神社に入った俺とイースは、お世話になる側の礼儀としてとりあえず賽銭を入れ、拝礼を行っておく。

 えーと、ベイタの奴が昔言っていたのだと、賽銭はその神社を管理している巫女や神主の為に、拝礼はその神社で祀られている神様の為にやる物らしいな。

 まあ、神社は神社で色んなものを維持するだけでもお金はかかるだろうし、イースの側から流れ込んでる知識に依れば一切の信仰をされなくなった神は死ぬらしいから、何かをしてもらうための対価を払うぐらいは世話になる側がするべきだよな。


「ん?」

『ふむ』

「アキラ・ホワイトアイス様ですね」

「お話は伺っております」

 と、拝礼が終わったところで俺は視線を感じ、そちらの方に振り向く。

 すると、そこには巫女服を着た妙齢の女性と、狩衣を着た四十代ぐらいの鼻が高い男性が立っており、俺が二人を認識した所で二人揃って軽く頭を下げてくる。


「貴方たちは?」

 俺は二人に近づき、正直な所この場と服装からして半ば正体は分かっているが、一応その正体を確かめる為の質問を投げかける。


「私はここウズメ神社の巫女を務めます、渦井ヨーコと申します」

「私はここサルタヒコ神社の神主を務めます、猿井ジュウゾウと申します」

「んん?」

 俺は二人の自己紹介に首をかしげる。

 女性……渦井さんがここに居るのは分かる。

 ここがウズメと言う神を祀るウズメ神社だからだ。

 だが男性の方……猿井さんが、ここをサルタヒコ神社と言う理由が分からない。

 俺の記憶が確かならサルタヒコ神社は隣だったと思うんだが……。


「ああ、すみません。グレイシアンの方であるホワイトアイス様には分かりませんよね」

「これは失礼。私の名乗りのせいで混乱させてしまいましたな」

 と、ここで俺の混乱を察してくれたのか、俺を神社に併設されている巫女や神主の一族が暮らすための住居に案内する傍らで、二人がここの神社について説明をしてくれる。

 その説明によれば、まずここの神社はウズメとサルタヒコ、二柱の神を祀っている神社であり、どちらの神の為に用意された鳥居をくぐったかによってどちらの神社に参拝しているかが変わるそうだ。

 で、どうしてそんな事になっているかと言えば、ウズメとサルタヒコ、この二柱が夫婦神だからであり、実は夫婦円満祈願用に作られた第三の入り口もあるそうだ。

 ちなみにその関係でこの神社の巫女と神主を務める一族も、長い歴史の中で何度か婚姻を交わしており、事実渦井さんと猿井さんの二人も兄妹同然に育てられたのだとか。

 ……。

 俺、本当はジャポテラス人なのに全く知らなかったわ……。


「さてと、それでホワイトアイス様。本日来ていただいた理由については?」

「分かっています。奉納の舞で、俺と一緒に踊る補佐役を選ぶためですよね」

「その通りです。既にご存知とは思いますが、奉納の舞は複雑な儀式ですので、単純に技量が高いだけでなく、ホワイトアイス様との相性と言うのも重要になってきます。過去には相性が悪いのに実力があるからと無理やり組ませたところ、大失敗した例もあるそうですから、くれぐれも選定はご慎重にお願いします」

「それと、既に候補となる巫女たちは集めておりますが、まずホワイトアイス様にはこちらで特別に用意した部屋で、候補生たちには気づかれずにありのままの姿を見てもらいます。そして、その後に候補生たちの前に出て、改めてその姿を見てもらいます。こう言っては何ですが、ホワイトアイス様の目が有るところと無いところでは、全く違う表情を見せる巫女が居ないとも限りませんので」

「何と言うか……」

『補佐役を選ぶのも大変なのだな……』

 渦井さんと猿井さんの説明に思わず俺は頬を引き攣らせる。

 しかし相性かぁ……相性が少々悪い程度ならば、今の俺とイースの力を持ってすればゴリ押せるかもしれないが、流石に相性が最悪だとどうしようもないよなぁ……うん。

 きちんと考えて選ぼう。

 と言うかそう考えると、むしろ問題なのは最初から最後までしっかりと猫を被り続ける巫女の方な気もするが……。


「ご安心を。最初から最後まで猫を被れるような者なら、きちんと自らを御して補佐役としての仕事を十全にこなしてくれますから。むしろ相性だけいい人間よりも安心出来るくらいです」

「そもそもとして、この場に呼ばれている時点でウズメ様とヨーコの御眼鏡にかなった巫女たちです。実力については猿井と渦井の両家で太鼓判を押せます」

 そう考えた俺が二人に質問をしたところ、以上の様な心強い返事が二人から返って来た。

 まあ、ここまで言うのなら大丈夫なんだろう。

 奉納の舞の補佐役としては。


「では、この中にどうぞ」

「そちらの窓から、候補生たちの様子を覗き見ることが出来ます」

「分かりました」

 やがて建物中でも奥まった場所にある小部屋に辿り着き、俺は部屋の中に置かれている椅子に腰かけ、正面にある窓を見る。

 窓の向こうでは今日の為に集められた候補生たちが思い思いに自己練習を積んでいたり、他の巫女と話をしていたりしている。

 ふむ、候補生たちの様子から察するに、どうやら本当にこちらの姿は見えていないらしい。

 一体どういう仕掛け何だか……と言うか元男である身としては、何かイケナイものを覗いている気がしてしょうがないんだが……。

 まあ、これも仕事と割り切っておくとして。


「これは三理マコトの仕事だと思うか?」

『有り難いのは確かだ』

 俺は椅子の横にさりげなく置かれていた、今日集められた巫女たちの戦闘能力も含めた諜報班印の資料に軽く目を通す。

 ちなみに資料が本物なのは確認済みである。


「さて、補佐役としてもそうだが、最低限自分の身だけでも守れる子を選ばないとな」

『そうだな。相手次第ではあるが、当日そこまでの余裕が我とアキラに有るとは限らない』

 そして、目を通し終わったところで俺は補佐役として相性が良さそうな子よりも、まずは自分の身を守れるだけの力を持っていそうな子を選び出そうと観察を始めた。

本作ではアメノウズメ様とサルタヒコ様は夫婦神の扱いとなっております。

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