柔らかなカーディガンに、暖かな優しさを込めて
窓から入ってきたすんだ秋の風に顔を上げると、斜め前の彼が思い切り机に突っ伏して寝ているのが目に入った。
(もうちょっと上手く寝なよ……)
苦笑して、数式を解く作業に戻る。
空の青は薄く、夏の匂いはもう払拭されて、肌に纏わり付くような夏の空気の名残はもう、ない。
頬にあたる風は軽やかで優しく、そして少し冷たくなった。
腰に巻いたカーディガンを羽織る。
彼の机の横に掛けられた開けっ放しの鞄の中に、丸まったカーディガンを見つけて、
(もし、)
ふと思う。
もし、チャイムが鳴っても彼が起きなかったら。
あのカーディガンをかけてあげよう。
これからは冷たい季節になるのだから。
暖かさが素敵な、季節になるのだから。
カーディガンの柔らかい暖かさを感じながら、時計の針を見上げた。
最近はすっかり秋の空気です。
暑さ寒さも彼岸まで。
冬が好きな蟹光線としては、冷たい空気が幸せです。
ごはんもおいしくなりますね。
窓から入ってくる秋の風と、前に座る後輩クンの背中をお供に書きました。
後輩クンが羽織っていたのは黒いシャツでした。
小説(かなり短いけど笑)を最後まで書き上げたのはこれが初めてです。
嬉しい。