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手慣れた殺し方

血管が浮いた無骨な首筋に切っ先を剥け、滑らすように引けば赤黒い液体が噴き出した。

血が唯一美しいと思える瞬間。

しかし、その美しさは瞬く間に消えていく。


心を高揚させる色を失ったものには興味はなく、銃を構えるターゲットを仕留めるために廃墟と化した倉庫に積み上げられている荷物の陰に素早く体を隠した。

ナイフに付着した血を丹念に拭い、威嚇のために持っている小型の拳銃を2・3発程打てば、向こうも様子を伺うように銃の応酬が一時的に止んだ。


一時の静寂が訪る。


粉塵が視界を阻む中、ターゲットの死角を移動しながら後ろへ回り込む。


後ろががら空きだ。


血塗られた手でまた一人手にかける。

急所を切り裂くと、死んだ魚のように虚ろな目をしながらパクパクと口を動かしていたが、やがて深い死の谷間へと堕ちていった。


詰めていた息を吐いて立ち上がると、後ろから耳をつんざく悲鳴が上がった。

反射的に振り向くと月明かりを背に受けて、恐怖に染まった顔でこちらを見る女がいた。


一般人だ。


それに気をとられていると、物影に潜んでいたターゲットが銃を乱射する。

甲高い悲鳴が廃れた倉庫の中を木霊こだました。


馬鹿みたいに乱射される弾丸の方向でターゲットの位置の目星をつけ、気配を殺して近づく。

正気を失いかけているターゲットを仕留めるのはたいして難しくはなかった。


再び静寂に包まれる。

この場に立っているのはもはや俺だけだった。


女は自分が流す血だまりの中に倒れていた。

このまま放っておけばやがて死ぬだろう。


「し……に、たく、ない。……死にたくない、よ。誰……か、たすけて」


最後の力を振り絞るかのようにか細い声で女が繰り返す。

それがうっとおしくて止めを刺そうと振り返ると、女は既に意識を失った後だった。


そこら辺で転がっている奴らの仲間とは到底考えられない。

となると、やはり一般人だろう。


もしかしたら、騒ぎを聞き付けて興味本意に除きにきただけかもしれない。


なんにせよ、運が悪い女だ。


女の頬についた血を拭うと、余計に血が広がってますますひどくなった。

そうこうしている間にも血だまりは広がり、俺の靴を侵していく。

このまま放っておけば確実に息絶えるだろう。


先程は気が立っていたため殺そうとしたが、一般人を死なすのは契約違反に値するかもしれない。

俺は念のために携帯を取り出して依頼人に確認することにした。


「柊だ」

「依頼完了の報告か?」

「いや……少し指示を仰ぎたい」

「ほう、"ジャック・ザ・リッパー"からそのような連絡がくるのは初めてだな」

「その呼び名は止めろ、不愉快だ。……一般人の女が依頼遂行中に紛れ込んできた。死にかけているんだが、どうする」

「放っておけ、どうせヤクザの抗争に巻き込まれたとして処理されるだろう」

「わかった。だが、警察の正義にはへどが出るな」


苛立ちを煽るような笑い声が聞こえ、一方的に電話を切った。


女を連れて帰ったのは気まぐれとしか言いようがなかった。

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