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第5話:休日の過ごし方

 雲ひとつない快晴の午後、ラフローグの街並みには柔らかな活気が満ちていた。

 本日は、騎士団長としての職務を離れた完全な非番。エーデルワイスは、見慣れた白銀の鎧を脱ぎ捨て、軽やかな私服に身を包んで石畳の通りを歩いていた。腰に帯びた長剣もなく、その佇まいは峻烈な指揮官というより、どこか気品ある一人の淑女としての落ち着きを漂わせている。


 彼女が選んだ装いは、白を基調とした清潔感のあるスタイルだった。

 身体のラインを優雅に描きつつも、機能性を損なわない洗練された仕立て。装飾を排した上着は、細身のベルトで腰元を引き締め、控えめながらも上質な生地が彼女の隠しきれない品格を物語っている。歩くたびに静かに揺れる薄手の外套と、あえて無造作にまとめられた髪が、日常の等身大の彼女を映し出していた。


「……たまには、こういう歩き方も悪くないな」


 すれ違う市民の多くは、この麗人が街を守護する騎士団長であるとは気づかないだろう。しかし、凛とした背筋と澄んだ瞳が放つ存在感までは隠せず、多くの者が無意識に視線を送っては、その美しさに目を奪われていた。


 エーデルワイスは賑わう通りを眺めながら、以前から密かに気になっていた店へと足を向ける。

 街の角にある、評判のハンバーガーショップ。戦場や執務室での緊張を忘れ、一人の住人として気ままな昼下がりを過ごすには、うってつけの場所だと思えた。


 目的の店に到着し、メニューを広げたエーデルワイスは、思わず小さく目を見張った。

 そこに描かれていたハンバーガーは、幾層もの具材が積み重なり、まるで堅牢な塔のごとき威容を誇っていたのだ。肉の厚み、溢れんばかりの野菜、そして独創的なソースの数々。組み合わせを考え出すと、戦術を練るよりも深い思考の迷宮に迷い込みそうになる。


「……店長、おすすめを頼む」


 熟考の末、彼女は最も確実な選択肢を選んだ。セットの飲み物は、少しだけ背伸びをした「大人」の余裕を見せようとコーヒーを選択。しかし、ブラックの苦味は少々苦手であることを自覚している彼女は、忘れずにシュガーを二つ添えるよう付け加えた。


 注文から十分ほどして、運ばれてきた実物を前に、エーデルワイスは一瞬、戦いでも挑むかのように硬直した。

 目の前の「塔」は想像以上の迫力だ。これにそのまま被りつけというのであれば、もはや顎の関節を外す覚悟が必要ではないか。内心でそんな戦慄を覚えた彼女だったが、トレイの端に添えられた銀色のカトラリーを見て、安堵の吐息を漏らした。


「なるほど。攻略法はナイフとフォーク、というわけか」


 外のテラス席に腰を下ろし、彼女は慎重にナイフを入れ始めた。

 騎士らしい正確な手つきで、高く積まれた具材を丁寧に切り分けていく。一切れずつ上品に口へと運び、甘いコーヒーで喉を潤す。


 喧騒の中に身を置きながらも、自分のリズムで刻む時間。

 エーデルワイスは柔らかな日差しを浴びながら、誰に邪魔されることもない、優雅で平穏な昼食のひとときを心ゆくまで楽しんだ。

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