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第2話:風紀違反

 ラフローグ守護騎士団の頂点に君臨するのは、騎士団長のエーデルワイスである。その圧倒的な実力と気高き精神を支える補佐役として、副団長の座に就いているのがシャルロットと龍武ロンウーの二人だった。


 二人は共に、鍛え抜かれたしなやかな四肢を持つ長身の美女であり、街の住人たちにとっては憧れを具現化したような存在だ。しかし、そんな彼女たちが何よりも情熱を注いでいるのは、職務以上に、主君であるエーデルワイスその人であった。彼女の隣という特等席を巡り、日々静かな、時に苛烈な火花を散らしていることは、騎士団内ではもはや語るまでもない公然の事実となっている。


 秋の柔らかな陽光が降り注ぐ午後、三人は街の中央広場にそびえ立つ巨大な女神像の前で、束の間の休息を取っていた。任務の合間に訪れた、穏やかな静寂の時間である。


「団長。今日は、お口に合うようにお弁当を作ってまいりました」


 鈴の鳴るような穏やかな声で切り出したのは、シャルロットだった。

 彼女は常に物腰が柔らかく、一挙手一投足に品位が漂っている。慎ましやかな大和撫子を思わせるその佇まいは、一見すると献身的に上司を支える忠実な部下そのものだ。


 だが、その完璧な淑女の装いには、一点だけ奇妙な違和感があった。

 彼女の身に着けている騎士服は、およそ公務中とは思えないほどに乱れている。外套はだらしなく肩から滑り落ち、胸元や腰回りの合わせも緩い。本来ならば厳格に整えられているはずの装束が、意図的な隙を作るように肌を無防備にさらしていた。


 隣に座るエーデルワイスは、その様子をしばらく黙って眺めていたが、ついに怪訝そうに眉をひそめて問いかけた。


「……シャルロット。なぜ今日は、そのように服を着崩しているんだ? 騎士としての矜持に関わるぞ」


 団長の真っ直ぐな視線を受けても、シャルロットは微塵も動じない。お淑やかな微笑みを崩さぬまま、吸い寄せられるようにエーデルワイスの隣へと距離を詰めた。

 そして、戸惑う主君の体に細い腕を回し、しなだれかかるようにそっと抱きしめる。


 密着した体温と共に、微かな香油の匂いがエーデルワイスの鼻腔をくすぐった。シャルロットは耳元に顔を寄せ、吐息を混ぜた静かな囁き声で言葉を紡ぐ。


「団長……こうして抱き寄せられたとき、少しばかり衣類が乱れている方が、貴女様も高揚なさいませんか?」


 その声色はどこまでも理性的で、落ち着いている。しかし、瞳の奥に宿る熱量と計算尽くの問いかけには、隠しきれない濃密な情愛が込められていた。

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