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第13話:膝枕

 フリークス魔法学院へ赴く用事が生じたため、エーデルワイスはシャルロットに声をかけた。

 彼女はかつてこの学院の生徒であった。案内役として最適だと判断したのだ。

 騎士団長の証明書を提示し、二人は学院の敷地へ足を踏み入れる。

 整然と並ぶ校舎と、静謐な空気。学術の香りが漂っていた。


 シャルロットの先導で図書室へ向かう。


 目的は、漂流者に関する文献の調査だ。


 本棚を丹念に探し、シャルロットは数冊を抜き取る。

 丁重な動作で、エーデルワイスへと静かに差し出した。


「こちらが、団長の求めている内容に近いかと存じます」


 表紙にはエメロード教に関する記述。


 本を手にとりページをめくると、漂流者との関わり、加護の特性、さらには彼らの行動原理まで、詳細に記されていた。


 二時間ほどかけて必要な情報を収集し、エーデルワイスは本を閉じる。


「助かった」


 短く礼を述べ、二人で図書室を後にした。

 校舎内の一角に、来客用と思しき上質なソファが置かれていた。


 エーデルワイスは一息つくように腰を下ろす。


 すると、隣に座ったシャルロットが自然な動作で距離を詰めてきた。


「団長。お疲れのようですので、膝枕をして差し上げます」


 静かな声音でそう告げると、彼女はエーデルワイスをそっと抱き寄せる。

 次の瞬間、小さな耳かき棒が宙に浮かび、魔法の力でゆっくりと動き始めた。


 重力と魔力の微細な制御による、自動耳かきである。


 繊細な動きは絶妙で、痛みも違和感もない。


 エーデルワイスは抵抗することもなく身を預け、やがて安心しきった表情で目を閉じる。


 静かな寝息が聞こえ始めた。


 その光景を目撃した一人の少女が、顔を真っ赤にして駆け寄る。


「な、なんて破廉恥な光景ですか! 風紀委員として、このような校内の風紀違反は見過ごせません!」


 シャルロットは淡々と答える。


「重力制御魔法の実践演習です」

「じゅ、重力制御ですか? あれは極めて難度の高い魔法だと聞いておりますが……」

「ええ。非常に高度な制御が求められます」


 風紀委員は一瞬たじろぎ、真剣な表情に変わった。


「そ、それが学術的な実践であるならば……仕方ありませんね」


 納得した様子で去っていく。


 ソファの上では、エーデルワイスがすやすやと眠り続けていた。

 シャルロットの魔法は、微塵の乱れもなく続いている。


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