ep6-2 王女はズルい
スモールレイク国の王城では大きなため息に
包まれていた。
意図せず影武者にされてしまったノアは
毎日の地獄の様な特訓に深いため息を
ついていた。
本人は頑張っているようではあったが
ヘイズの期待値には遠く及んでいなかった。
「あ〜!もう無理!」
ヘイズは頸を振って、
「まだ、何も出来ていませんよ!
謁見は3日後なんですから、口調と
歩き方だけでもマスターすること。」
と、言って厳しい目で睨みつけた。
なにも進展しないまま、3日が経過した。
ヘイズは青ざめた顔で謁見の間にいた。
ニヤけた顔でブラットが入ってきた。
「これは、ヘイズどの王女の具合いは
どうですか?」
「ま、大したことはないのですが、
大事を取って休養していただいたが、
もう万全です。これからこちらに来られる。」
ブラットは、静かに膝を着き、頭を下げ、
王女を来るのを待つ姿勢を取った。
ノアは大きなため息をついて、
謁見の間に入って行った。
「ブ、ブラットか。暫くだったな、
元気でおったか。」
ブラットは、更に低く頭を下げ
「勿体ない御言葉。与えられた職務に
邁進しております。」
「今日は何用じゃ。」
「恐れながら、再び本国に戻してもらうこと
は可能かお伺いに参りました。」
ブラットは、ビクビク震えながら言った。
ノアは、ヘイズの顔色をうかがいながら、
「うむ。検討しておこう。」
「あ、ありがとうございます。」
「では、部屋に戻る。」
そう言って影武者王女は、謁見の間を去った。
ブラットはふう、と息を吐いて、
「寿命が縮ました。でも、今日は
お優しかったですな、何かいいことあったの
ですか?」
ヘイズが苦笑いで、応えた。
「いや、特に心当たりはないですが…。」
こっちの方が何百倍寿命が縮んだよ…
全く、勝手に約束するし、さっそく王女に
お伺いしないとな。
ヘイズはノアのいる王女の部屋まで行き、
ノアに声を掛けた。
「とりあえず、上手く行ったな。」
ノアは大きなため息をついて、
「これ、いつまで続くんですか?」
「王女が帰られるまでだ。」
「いつ?」
「こっちが聞きたい。」
ヘイズは、ノアと言い合いながら通信機で
王女を呼出した。
『なんだ。』
「ノアがブラット殿に本国に戻ることを
検討すると言いましたが如何致しましょう?」
『は?寝ぼけるな旧ブラックナイト国の
復興は終わったのか?
であればだ、その様な発言をするなら
分かるが…
それだとしても却下だ。
今度その様な寝言を言ったら貴族格剥奪
だと言っておけ、脅しではないともな。』
「はっ。」
『ノアはそこにいるか。』
ノアは嫌そうに、受信機を取った。
「はい。」
『七大貴族の要望は全て却下しろ、
奴らはぬるま湯に浸かっておるから、
厳しくしないと国が滅びる。』
ノアは頸を激しく振って抗議した。
「嫌です!お願いされてるのになんで
何もしないで断るんですか、
意味が分かりません。」
『奴らは私の言う通り動けばいいのだ。
それ以外は認めない。』
「だったら、自分でやって下さい、
私は嫌です!」
『私は…やることがあるんだ。』
「なんですか?国のこと以上にやる
ことってなんですか?」
…。
『ヘイズ!』
「あ〜。なんとかは馬に蹴られて⋯
ということです。」
⋯!!
「王女様!それはズルい、ズル過ぎます。」
『ヘイズ、誰がバラせと言った、あとで
覚えておけよ!』
「王女様ばっかり、ズルいです。」
『あ〜、分かった、分かった。お前も
好きにしろ、あとはヘイズになんとか
してもらえ。』
十六夜(王女)は、通信機を切った。




