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竜に花を  作者: 沖津 奏
14/18

14 シュヴェールの竜騎士 3

 雪が舞い上がり、また落ちる。ネージュはとても嬉しそうだった。


「会いたかったよ。君だろ、サイラス王子が探してるやつって。」


 まっすぐにルカを見つめる。

 サイラスが、僕をーー。ルカは歯を食いしばった。サイラスは僕を倒すつもりだ。僕が倒れるまで、この争いは止められない。


「悪いが、この子を渡すわけにはいかないよ。竜騎士団の仲間だからね。」


 ルカの横に並び立ち、ノアが言う。でもさぁ、とネージュが続ける。


「そいつ、厄災の黒竜なんでしょ?そのせいで、あんたらの国は困ってんじゃん。どうして庇うわけ?」


 ネージュが腰の剣を抜く。


「ルカのせいじゃあないと思ってるからだよ。厄災は、きっと人為的に作られたものだ。心あたりはないかな?」


 なーんだ、とネージュはつまらなそうにした。


「団長ー、リーデンのやつらにバレちゃってるよぉ。」


 やはり、シュヴェール王国の仕業だった。

 彼女が話しかける先には、赤毛の男がいた。深い雪の中を歩き辛そうにしている。エトワールという、シュヴェール竜騎士団長だ。

 ほかにも、シュヴェール竜騎士団の騎士たちが追いついてきた。


「たった今、お前がバラしたんだ、ネージュ。くびり殺すぞ。」


 えぇ、とネージュが言う。不服そうだ。


「どういうことか、教えてほしい。なぜ、我が国に害をなす。」


 ノアが、剣の切先をエトワールの眉間に向けて尋ねる。

 詳しくは知らない、とエトワールは答えた。


「神官どもがやっていることだ。」


 悪く思うな、と呟くと同時に、エトワールはノアに斬りかかった。ノアがそれを受け止めるが、力の差がありすぎる。雪の中は吹っ飛んでいった。

 それを皮切りに、両国の竜騎士団がぶつかり合う。


「ルカ、こっちだ!」


 エリックに腕を引っ張られ、ルカは茂みに連れ込まれた。


「エリック、僕たちもやらないと!皆戦ってる!」


 ばか言うな、とエリックは小声で叱った。


「俺たちみたいなの、一撃でやられちゃうぞ。俺は治癒しかないんだ。誰か怪我したら、お前がここまで連れてくるんだよ。」


 彼の言う通りだった。それは、およそ人の戦い方ではなかった。他の獣では、こんな戦い方はできないだろう。

 ネージュという騎士は雪の力を使うらしい。雪を固めた凍てつく剣を作り出し、ローガンに差し向けた。ローガンは己の前に水の壁を生み出し、それを受け止めた。

 ベルーチェは雷撃を落としていく。ノアは剣に炎をまとわせ、雪を溶かしながら戦っていた。

 一番激しく争っていたのが、ノアだった。騎士団長の首を狙い、猛攻撃をくらっている。

 とてもこの中に入れない。ルカはそう思った。負傷者を助けにいくことすら危うい。


 雪に足をとられて、ノアが体勢を崩した。ノアと対峙するのは、シュヴェール竜騎士団長のエトワールだ。隙を見逃さず、ノアの左肩に剣を突き立てた。ノアが歯を食いしばり、剣にまとわせた炎をさらに燃やした。エトワールは表情を崩さない。


「悪いな。私に炎は効かない。」


 低い声でエトワールは言った。

 みたいだな、とノアは笑いながら言う。余裕を見せようとしているが、痛みに顔が歪む。

 エトワールが剣を抜くと、ノアは雪の上に倒れ伏した。


「ノア!」


 離れたところから、ローガンが叫ぶ。駆け寄ろうとするが、間に合わない。エトワールが剣を構え、飛び掛かろうとしていた。

 その時、大地を揺るがす咆哮とともに、黒い翼がノアを守った。シュヴェール竜騎士団がノアから離れる。


「厄災の黒竜!」


 誰かが叫んだ。

 黒竜が吠えている。鋼のような黒い鱗がノアを守る。


「引け!」


 シュヴェール竜騎士団が一斉に後退する。団長どうして、とネージュが尋ねる。


「あれは我らでは相手できん!力で敵うものではない!」


 彼は直感でそう思った。長年の竜騎士としての直感だ。それを否定すべきでないのも、経験で知っている。

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