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竜に花を  作者: 沖津 奏
13/18

13 シュヴェールの竜騎士 2

 北西駐屯地に帰ると、ローガンはただちにノアに報告をした。

 ノアはあまり驚かなかった。聞けば、ルカたちが偵察に出た後、王都から使者が来たらしい。

 現在、王都にはシュヴェールからの使者が来ている。リーデン王国に蔓延する厄災を足がかりに、保護という名目でリーデン王国を吸収しようとしているようだ。王国はこれを拒否している。すでに将軍率いる大隊が王都を出発し、国境を守る北西駐屯地へ向かっているという。じきにここも軍備を固め、緊張が高まるだろう。

 七日もすれば、そこはシュヴェール領ザウリークに負けない大所帯となった。仮設のテントばかりだが、にぎわいがある。もはや、両国の国境に緊張を隠す必要はなくなった。

 偵察隊からも、ザウリークに軍が続々と集まっていると情報が入った。



 その後しばらくして、あっけなく開戦の火蓋は切って落とされた。

 北西駐屯地からさらに北の、国境付近で両軍が衝突したという。

 そらからというもの、戦況は日に日に悪化していた。変わらず変異動物にも対応しなければならない。そんな中、竜騎士団にも出動の命令がおりた。

 国境にある森には、一箇所だけ開けた所がある。両国にかかる場所で、その半分以上はリーデンの領土だ。国境線上には、目印の標石がある。

 原因はよく分かっていないのだが、そこはぽっかりと木が生えていない。そこに、シュヴェール王国の竜騎士団が陣取っているというのだ。つまり、シュヴェールはすでに少しだけだが、陣をこちらに広げたということだ。

 リーデン国王は領土拡大は望んでいなかった。シュヴェール竜騎士団を押し戻し、国境線を戻せというのが命令だった。

 しかも、なんのあてつけか、軍部からは竜騎士団の監査役兼指揮官として、名前を聞いたこともない初老の武官があてがわれた。ブランドン大佐といい、本人はその名声が末端まで届いていないことが不愉快らしかった。


「そんな簡単に行かないよねぇ。」


 ノアが森の様子をうかがいながら言う。

 命令が出てから、数日経っている。ブランドン大佐により、ノアはお飾りも同然の騎士団長になってしまった。作戦の計画は、全てブランドン大佐が行っている。竜種の特性が、ただ人に分かるはずもない。牛種と同様の力任せの突撃作戦を敢行し、先日も大敗したばかりだ。幸い、竜種の者は個人の特性が大いに強い。おかげで、誰も失っていない。


「あんなじじい、後ろからやっちゃえばいいんじゃないの?戦死扱いになるんだからさ。」


 ぶつぶつと呟くのは、ベルーチェだ。やめないか、とローガンが諭す。

 彼女だけでなく、不満を抱く者がほとんどだ。それを団長のノアが抑えていた。

 彼らはブランドン大佐の指揮のもと、敵の竜騎士団を急襲し、空き地を取り戻そうとしていた。遠くでは、野戦砲の音が聞こえる。

 シュヴェールに近づくほどに、雪が深くなる。雪道は、シュヴェール軍の方が慣れている。

 しかも、シュヴェール竜騎士団には、雪の力を持つ竜種がいるとルカは聞いた。おそらく、以前会ったネージュという白髪の女性だ。雪の上を、まるで滑るかのように走っていた。あんなのに包囲されたら、ひとたまりもない。

 一団が少しずつ歩いていると、ふいに前方から、バキバキと梢の折れる音がした。一気に近づいてくる。


「また会えた!」


 そう笑いながら、白髪の竜騎士、ネージュが飛び出してきた。

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