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Ⅴ.響く遺跡の音

 森を抜けたアルトたちは、開けた丘の上に立っていた。眼下には広大な平原が広がり、その中央には小さな町が見える。煙突から上がる薄い煙が、ここが人々の暮らしの場であることを伝えていた。


「フェルナ、次の目的地はあの町か?」


 アルトが尋ねると、フェルナは淡々と答えた。


「はい。町に到着後、次の手がかりを検索します」

「お前のその“検索”ってのは、どうやってるんだ?」

「それは秘匿事項です」


 アルトはまたしても納得のいかない顔をしたが、リリスが肩をすくめて笑った。


「まぁまぁ、役に立つんだからいいじゃない。それにしても、こういう時ってだいたい何かしら問題が起きるのよね」

「勘弁してくれよ」


 アルトがため息をついたその瞬間、遠くの町からかすかな鐘の音が聞こえた。それは穏やかであるべきはずの鐘の音ではなく、緊急事態を知らせるような、耳障りな響きだった。


 町に到着すると、雰囲気はさらに緊迫していた。住民たちは急いで家に閉じこもり、窓をしっかりと閉ざしている。通りに立っていた若い衛兵が、アルトたちを見つけて駆け寄ってきた。


「おい、あんたたち、旅人か?」

「そうだけど、何かあったのか?」


 アルトが尋ねると、衛兵は焦った様子で説明を始めた。


「町の近くにある古い遺跡から、突然奇妙な音が聞こえ始めたんだ。それと同時に、町の井戸が枯れ始めてる。このままだと水が尽きてしまう」

「遺跡から音が?」


 リリスが興味津々で尋ねた。


「それ、どういう音?」

「なんて言えばいいのか……機械のような、でもどこか生き物みたいな、不気味な音だ」


その言葉を聞いた瞬間、フェルナが鋭い声で言った。


「確認します。遺跡はこのエリアの重要なシステムポイントである可能性があります」

「また出たよ、システムポイントとか意味わからんことを……」


 アルトが呆れると、リリスが笑いながら衛兵に言った。


「ねぇ、その遺跡、私たちが見に行ってもいい?」

「本気か? あそこは危険だぞ」


 衛兵が驚いた様子で言う。


「危険だからこそ、行く価値があるのよ」


 ライムが重い声で言った。


「どのみち、この町で井戸が枯れるのを黙って見てるわけにはいかないだろう。行こう」


 こうして、アルトたちは遺跡へ向かうことを決めた。


 遺跡は町の外れ、崖の下に広がっていた。石造りのアーチや巨大な柱が古代の壮麗さを物語っているが、その中には明らかに異質なもの――鋼鉄製のパネルや光を放つ奇妙な装置が混ざっていた。


「これ、完全に魔法の遺跡じゃないな」


 ライムが呟くと、リリスも頷いた。


「機械と魔法が混ざってるみたい……でも、どこか見覚えがあるような」

「ここはシステム管理エリアです」


 フェルナが淡々と言った。


「不正アクセスが原因でエラーが発生しています」

「……もう少しわかるように説明しろよ!」


 アルトが叫ぶが、フェルナはすでに奥へ進んでいる。


 遺跡の中心にたどり着くと、そこには巨大な装置が鎮座していた。それは球体の形をしており、無数のパネルがその表面に光を放ちながら浮遊している。


「これ、何だ?」


 アルトが呆然とつぶやくと、装置が突然動き出し、低い音声を発した。


「侵入者を確認。排除を開始します」


「ちょ、待て! 話を聞け!」


 アルトが叫んだが、装置から無数の光弾が放たれ、彼らに襲いかかる。


 ライムとリリスが奮闘する中、アルトはフェルナに向かって叫んだ。


「お前、なんとかできないのか!?」


 フェルナは短く答えた。


「対処可能です。ただし、リスクがあります」

「リスクなんて構わない! やれ!」


フェルナが装置に向かって飛び込むと、その光が装置全体を包み込んだ。光の中で装置が停止し、遺跡全体が静寂に包まれた。


「これで解決しました」


フェルナが静かに言ったが、その声にはどこか疲れが感じられた。


「お前、本当に何者なんだ……?」


 アルトが問いかけると、フェルナは少し間を置いて答えた。


「導き手であり、それ以上でもそれ以下でもありません」


 その言葉にアルトはまた新たな疑念を抱えながらも、フェルナを見つめていた。遺跡の装置が停止したことで、町の井戸が元に戻ることを祈りつつ、彼らはその場を後にした。

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